シロー「ふ~、どうそうだ?」

卯月「あ、ちょっと体軽くなったみたい……ありがとうございます!

シロー「まぁちゃんと休むまでの応急処置みたいなもんだから、あんまムリすんなよ」

未央「何気シローすごくないソレ」





シロー「ザック先輩から教わったヤツだよ。筋トレ後のダウンと疲労回復のためにってさ」

卯月「はい。ちょっと痛かったけど、今はぜんぜん痛くないです」

未央「アタシも後でやってもらおっかな~」

「ね、ねぇ。それはそれでいいんだけどさ……」





シロー「忘れてないって。てか、これでやっと落ち着いて話せるな」

スペクター「ああ……お前達にも改めて、礼を言わせてもらう。

 共に戦ってくれて、ありがとう」

シロー「気にしないでいいって。助けてもらったのはお互いさまだしさ」

スペクター「ふっ……。……全て話すと言ったな……」





スペクター「覚えている限りだが……俺自身に関することは、まったくといっていいほど覚えてはいない。以後の記憶も、先に話した屍霊侯のことで全てだ」

未央なにソレ! ソレちょっとズルいんじゃない!?

「未央、最後までちゃんと聞こ」

スペクター「ただ、明確に覚えていたのはシローという名とお前自身。それと……」





スペクター「また会おうという約束だけだった。いつ交わしたとも、確かに交わしたともわからんというのにな」

シロー「約束……」

スペクター「だがそんな不確かでも、何も覚えていない俺の、唯一の寄る辺でな……

 だからお前に会うことができれば、何かを思い出すかとも思ったのだが……」

未央「ど、ど~だったの?」





スペクター「やはり、なにも思い出せなかった」

シロー「……そうか」

「気になるけど……なんか、ちょっと残念だね」

スペクター「確かに、そう感じる思いもある。だが……」





スペクター「何故だろうな。シロー、お前と共に戦えたことのせいか……

 この俺の魂は今、これまでになく晴れやかだ」

シロー「ははは、ならよかったよ。

 ……本当に、よかった」