つばさ「最近……時折、夢を見るんだ」

シロー「夢……っすか」





つばさ「私は舞台の上で歌を歌い、踊っている。鮮やかな衣装を身にまとって、無数のスポットライトを浴びて……まるでアイドルのようにな」

シロー「アイドル、っすか……(うあぁぁ、すっげぇ見てみたい……! ぜってぇ似合ってる!)」

つばさ「……ふふっ、私には似合わないかな?」

シロー「えっ? いやっ、そんなことはないっす! 絶対に!





つばさ「数えきれない観衆、色艶やかなステージ、体が自然とステップを踏み、舞い踊る……隣には、会ったこともないはずの桃色の髪の少女が、ともに歌い踊っている。

 緊張も恐れもなく、ただひたすらに胸が高鳴る……夢のような舞台なんだ」

シロー(つばさ先輩が、ライブ……うわぁぁ、すっげぇ見てみてぇ! サイリウムとか振って声援上げてぇ!)





つばさ「だが、その中でふと気づくんだ。いくら観客の中に目を凝らしても、舞台袖に視線を向けても……シロー、キミの姿がどこにもないんだ」

シロー「えっ……でも、さすがにそんな、数えきれないような人の中じゃ、わかんなくても仕方ないんじゃないっすか? それに、舞台裏とか……」

つばさ「いや、確かにわかるんだ。あの場に、キミの姿はない……キミが、いないんだ」

シロー「…………」

つばさ「それに気づいて、思わず足が止まってしまって……一瞬、時間がすべて止まったように感じたときに、目が覚めるんだ。

 ……そして、その夢を見ると、必ずこう思ってしまう」





つばさ「もし、私が剣士ではなく、別の道を歩んでいたら……たとえその道で大成したとしても、キミと出会うことはないのではないか……先輩と呼ばれることはおろか、キミから気付かれることもなく、見向きもされないのではないか、と……」

シロー「…………」

つばさ「可能性の話など、考えたとて程無き事だ……ただ、どうしてもそう思って……不安になってしまうんだ……」

シロー「いや……その、たぶん……いやでも、それは絶対無いと思うっす

 そのライブ会場に、オレがいないハズないっす」





シロー「オレは、つばさ先輩が……アイドルでも、忍者でも、竜を狩る者でも、演歌歌手でも、絶対つばさ先輩のこと見て、憧れて……つばさ先輩の背中、追っかけるはずっす!」

つばさ「、……ふ、ふふっ。なんだ、その例えは……ふふっ」

シロー「う゛っ……な、なんとなくってか、なんてーかその……声からのイメージというか……」





つばさ「いや、いい……ふふっ、何故だろうな。キミがそう言ってくれると、私も不思議と受け入れられる。

 キミがそう言ってくれたからか……心から、安堵した。ありがと」

シロー「えっ、い、いや、なんてーか……ははっ、どうもっす!

つばさ「ふふっ、私にとっては悪い夢だったが……次からは、いい夢になりそうだ」