経験と記憶とは、人にとってなによりも勝る重要なものである。

 身をもって知る、その眼に焼きつける、心に刻む。

たとえ忘れようともその身に刻まれた経験は失われることはない。

 ましてや「経験した」という事実は、
その者が死するまで、或いは死した後すらも残り続けるのだ。


 だからこそ……







その「経験」を得損ねた代償は、何よりも大きい。


たとえそれが、本人の与り知らぬものが原因だったとしても、だ。



 そして残るのは記憶でも、ましてや経験でもない。


 どこまでも続く後悔のみである。