夏が何よりも好きだった。

燃えるような暑さすら、自分にとっては夏の魅力だと思っている。


夏は自分の創作の原点でもある。

それは、自分の中の心象風景が夏を描いた物が多いからだ。


鳥居、海の見える駅、向日葵畑、古い停留所


見たこともない風景が、経験した事もない夏の出来事が、

そんな物が私の全てだった。


灯籠流しの夜、藍に咲き誇る花束

「次の夏にも」

海辺に描いた夢


灯籠の亡霊がずっと自分を見ているような

そんな錯覚。

ずっと夏に取り憑かれている。


そうだ、夏の亡霊ではない。

これは灯籠の亡霊の仕業だ。


自分の知らない記憶を植え付け

夏に夢を見させる、


どこにも無いはずの、

もう既に消えてしまった夏の走馬灯を


いつまでも私の目に貼り付けている

それはまるで灯籠流しの様に。



花火の音がした。