『minimal』 を読んだ。
この前に谷川俊太郎さんの詩集を買ったのは『世間知ラズ』 だったが、その『世間知ラズ』以来、10年ぶりの詩集だそうだ。詩文の英訳も併記されている。

あの瑞瑞しい処女作『二十億光年の孤独』から随分遠いところへ来たんだなあ、という思いも、正直ある。

詩から離れたいと思っていた頃があったそうである。
といっても、詩が書けないのではなく、あまりにもイージーに詩を書いてしまう、長年、詩を書き続けてきた詩人の職業病のようなものから離れたかったようだ。
長年反発していた俳句という形式に触れたのも、この病故のようだ。

そんなおり、中国を旅し、自然と出てきたのが、この行脚の短い連句のような詩群である。

冒頭の「襤褸」などは一見、疲れた中年(老年?)詩人の自虐的な嘆息にみえるが、読み返していると、二十億光年の道を延々と歩んできたイノセンスさえ感じる。

この人の詩を読んでいつも不思議に感じる。
人が感動しないように、詩句が突起しないように、言葉を紙に埋め込んでいるかのような、フシギ。

私が鎌倉に行くと必ずといってよいほど立ち寄る東慶寺に、父上、哲学者の谷川徹三の墓がある。
このイノセントな老詩人は墓もくぐり抜け、二十億光年の旅を続けていくような気がしてならない・・・