朝。

朝はよい。

一年の始まりのように・・・



昔、高校を辞めようとしたとき、ある先生と話を。


-ものは、夜書いてはいけないよ。


なぜ、そんな話になったのかは、覚えていない。


-人生は、諧謔ですよ。


-君、カイギャクって字知ってる?


はい、と答えた。


-書ける?


書けないと思ったが、はい、と答えてしまった。


-つまりね、ブラックユーモア。

-人生はカイギャク、ブラックユーモアですよ。


-僕は、先週、自殺するところだったんですよ。

-兄に止められましてね・・・


物理の先生だったが、先生の机の上には、詩や俳句の雑誌があった。

黒板に、チョーク一本で、真っ直ぐ、線が書ける人だった。


これらの話をする一年ほど前。

二年生から、進路によって、クラスが編成されるのだが、僕は、この先生が担任をやっている国立理系コースを選択してしまった。

これは、失敗だった。

1日、8時限くらい授業があるので、退屈に耐える術を身につけなければならなかった。

そんな退屈な時間の中で、試験があった。

上記の先生ではなく、別な先生の化学の試験。

設問の文章がいちいち引っかかるものであったので、答案用紙に、


「つまらない質問は結構だが、つまらなさには、慎ましさが必要だ。」


とだけ書いて、提出した。



数日後、通りがかりに、化学の先生に、傘の柄で、いきなり顔面を殴られた。



話がそれた。


夜にものを書かない、という言葉は、いつもアタマに残っている。

夜にものを考えない、という風に置き換えてみることもある。



さあ、一日の始まり。

朝の思考でスタートを切ろう!



<後日談>

その後、高校に戻った。

戻る前、カイギャク先生から絵葉書が届いた。

ロワン河を描いたシスレーの絵葉書に俳句が添えてあった。


  力こぶ 見せ合う 秋の夕暮れに


お元気だろうか・・・