個人的な人に宛てた応援メッセージです
今は大越先生の言葉を少しずつ書いていきます

・1日10分、たった一人になる時間を持つ


母親と言うものは、いつも何かに追われていて、片時も心も体も休まることがありません。それではいけません。
母親とて人間です。たとえほんの数分でも一人になって自分を縛るあらゆる制約から解き放たれる時間が必要です。


私は、自宅から塾の間の12、3分くらいを、静かに散歩するのを楽しみにしています。こうして、一人になって宇宙と1つになる時間を持つようにしているのです。
誰でも、周囲に人がいると、無意識のうちにサービス精神で顔を作ってしまいます。
それがどんな親しい人間でも、どこかで緊張しており、本当にリラックスできません。だから一人になって、母であることも、妻であることも忘れ、この際、人間であることも忘れる時間を、3分でも5分でもいいので作ってください。


経験されたこともあるかもしれませんが、そういう時に、いいアイデアが生まれることも少なくありません。
それは、一人になると無意識の世界とつながるからなのです。まさに、一人の時間は、神様に見守られて、自分自身が真に解き放たれている時間なのです。


私は講演会の直前には、どんなに忙しくても必ず、「ちょっとごめん」といって短時間ですが一人になります。
そして、10分間、一人でじっと静かな時間を待ちます。そうすると不思議なことに、1時間か2時間分のメッセージが全部自分の頭の中に降りてくるのです。


昔、奈良に住んでいたころ、近鉄奈良駅前の小さな噴水の前で、じっとたたずんでいる岡潔博士を見たことがあります。奈良女子大学の先生で、27歳でフランス語で数学の論文を書き、文化勲章を受けられたという偉大な人物です。


その先生が、噴水の中に立つ行基菩薩に向かって、小石をポンポンと放っておられました。何回も、何回もです。相当長い間そうされていました。新しいアイデアが浮かんでくるのを待っておられたのでしょうね。
幸い、私は先生と面識もあり、そういう性癖を知っていたので変にも思いませんでしたが、そういうことを知らない人から見ると、単なる変な老人に見えたでしょうね。


この偉人にして、放心は必要だったのです。もしかしたら、「放心」あらばこそ、偉人が生まれたのかも知れません。
なにはともあれ、前項で触れたように、「考えるな」とか「忘れなさい」と言われても、凡人である私たちにはすぐに実行できそうにありませんが、「一人になる」ことくらいは、ちょっとした心掛けでできるはずです。家事の合間や、寝起きの時間など、ちょっとした機会を利用して、一人の時間を楽しんでください。
そして、まずはお母さん自身が、解き放たれる時間を持って、しっかりした「自分関係」を取り戻してほしいのです。

「自然に勉強する気になる子の育て方」P70~72より