良いお年を……と、言われてしまった。
 年内はもう会えないんだ。
 それが寂しい。

 今日は、会っていてもぎこちなかった。
 素直になれなくて、別れたあと、とても寂しくなった。

 ……十二月の頭に彼女が京都に来たと言った。
 もう別れる頃かと思ってたわと、私は言った。

 こんなに嫉妬するとは、自分でも思っていなかった。
 抱えきれなくて、別れたあとに電話をした。
 声を聞いて、少しだけ安心した。
 でも、もう、追いかけるのはやめなければいけないと思った。

 もう、彼からの愛を求めるのはやめなきゃいけないと分かった。
 彼のための特別な場所を私の心に作って、追いかけるのはやめなきゃいけないんだ。

 それは辛いことだけど、諦める恋を確かめるのには慣れている。
 慣れているんだ。

 彼は私のことを好きでいてくれる。
 でも恋人じゃない。
 熱を上げてもいない。
 私が遅れて熱を上げてしまっただけ。
 だから……

 ずっと付き合っていける友達が大事だってこと、何度も自分に言い聞かそう。
 一時の恋人よりも、ずっと大切なんだってこと。
 
 辛いけど……諦める恋を確かめるのは。

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水曜日に、と誘っていたのに、例によってなかなか返事はこなかったんだけど、やっとメールが来た。
携帯のアドレスから、1行だけ。

7時頃に終わると思うけど、また電話します。

うんうん、電話待ってる。
でもメールにレスは返さないからね。

さぁ、忙しくなった。
マニキュア塗り直さなきゃ。
お風呂掃除もしとこうかな……(って、期待しすぎ?)

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Fからメールが来た。

昨夜、〆切から三日遅れでようやく論文が提出できたとのこと。
連絡ないから不安になってたけど、まだ書いてたんだ。なんかホッとした。
でも、すぐに次の論文もあるらしい。
男の人たちは、忙しくなっていく一方だな、ほんとに。
まだテーマが定まらないなんて言っているから、すぐと言っても少し先なのだろうとは思うけど。

またお話し相手にでもなってください、と書いてきたので、すぐに返事を出した。
今週なら水曜日の夜があいてるから、ちょっとだけでも会えないかな、って。
会えるといいな。早く返事こないかな。

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 昨日のお礼メールをBに送ったら、夜になって返事が来た。

 短い時間だったけど、昨日はいろいろ話した。
 Bはクタクタになるまで働いていて、けれどその仕事に意味があると思えずにいる。職場では、出世して社長になることが人生の目標という上司のもと、会社のためになら何だってするという価値観が覆い尽くしているという。
 価値観がまるで違う環境の中で、自分がヘンなんじゃないかとさえ感じてしまう違和感……そういう違和感には、私は慣れ親しんでいる……をBが口にしたので、私は笑いながら言った。
 そういう時は、魔女に魔法をかけられて、ヒキガエルにされちゃった王子様のつもりでいればいいんですよ?
 Bは笑いながら、カエルのままじゃやだなぁ、それって自分じゃ戻れないんだろ?と言った。お姫様がマリを落とすから、それを拾わなきゃいけない、と私が応えると、落ちてくるのが斧だったらやだよ、とおどけて笑っていた。

 もう一つ、Bに話したのは、わがままのこと。Bは男には珍しく、根が利己的でないから、ちゃんとわがままを言わないとバランスが取れないんじゃないか、と私は言った。

 カエルの話しと、わがままのことと、両方ともBはメールの中で触れていた。昨日話したことが、けっこう心に届いていたことが文面から察せられ、嬉しい。
 とても彼を近く感じる……直接会っていたときよりも、もっと。

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 女子校育ちのせいもあり、幼稚園の時に好きだった男の子を除けば、真面目な初恋というのは大学に入ってからだった。結局それがBなわけだ。

 昨日、携帯に着信があって、この番号は多分Bさんだろうなとは思ったものの、手元に彼の携帯番号がなく確認出来なかったし、向こうは超多忙な生活を送っているのも知っていたので、折り返し電話はしなかった。

 今朝方再び電話があり、ようやく……数年ぶりにBの声を聞いた。
 仕事の関係でこちらの街に来るという。お通夜があるそうだ。東京を早めに出れば、お通夜に行く前に、駅のそばでお茶するぐらいは出来る、とのことだった。私はもちろんOKした。

 Bと会うことはすぐにだんなに言った。ただ、彼もBとは親しい友達であり、ずいぶん会っていないので、私と一緒にBと会うつもりで話を聞いていたフシがある。私はそのことに気付かぬふりをして、一人で支度をして、夕方、慌てて家を出た。

  駅でBと再会を果たし、ホテルのカフェで、ほんの1時間半ほど話をした。
 ずいぶん体重が増えたように見えた。
 文字通り連日の接待、宴会、冠婚葬祭で、かなりめちゃくちゃな生活になっているらしい。体への負担と、ストレスのダブルパンチ。
 男の人たちの多くは、年をとるにつれて忙しくなっていく一方だ。どこかでレールから降りてしまわないかぎりは。
 Bは根が利己的でない、男には珍しいタイプの人間だが、人並みに「自分の優秀さ」が好きだったりはする。以前は企画系の部署にいたので、仕事が面白く、やりがいも感じていたようだ。だが2年前に今の部署に移ってからは、意味があるのかに疑問を感じながら働いているらしい。

 私の方は最近どうか、と話を振られたとき、私はすぐにはFのことを切り出せなかった。メールでは既に、Fに恋してしまったことは報告してあったのだが。
 それでも、他の話題からの流れで、何とかFに恋した事情……癌のこと……を説明出来た。私がどんなに必死に祈ったか(Bはプロテスタントだが、洗礼を受けたクリスチャンだ)。

 ほんの短い時間だったし、話し足りないことも、聞き足りないことも沢山あった。だが顔を見て、声を聞いて、何だかとても心が安らいだし、変わらずに繋がっていることを確認出来た気がした。

 駅で別れるとき、初めてじゃないだろうか、私たちは握手をした。いつものハグではなく、不思議な握手。多分、何かの同志としての。Bに恋したときからずいぶんと時間が経ち、私たちはずいぶんと遠くまで来た。もっともっと遠くまで行くのだろう。けれどずっと変わらず、どこかで繋がっていたい。

 ……で、問題のFには今朝メールを送ったが、相変わらず返事は来ない。ばかばかばかぁっ!と心の中で叫んでみる。はぁ~あ。

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「心配ナイ、連絡ヨコセ」
 ……新聞の1行広告のような気分。
 論文の〆切は終わったはずなのに、メールも来ない。
 Fは自分からは連絡してこないつもりだろうか。すぐにまた不安になってしまう、ヨワイ心。

 Fが癌かもしれないと知らせてきたとき、私は物凄く動揺して、必死に祈った。クリスチャンではないけれど、ミッション系の女子校で育ったのでカソリックのお祈りしか知らない。僧侶であるFのために、私はカソリックの祈りを捧げた。夢中でロザリオを繰りながら、私は物凄い勢いで神サマに悪態ついていた。
 もしもFを取り上げるようなことをしたら、私は絶対に許さない……
 もしFを取り上げるようなことがあったら、私は二度と、世界に「美しい」なんて言ってやらない……
 悪態をつき、世界を脅しながら、必死に祈っていた。愚かな祈り。
 でもとりあえず、Fは取り上げられることなく、まだ無事でいてくれる。今もポリープは残っているけれど。

 昨夜、布団の中で、私はあのロザリオを繰りながら祈った。
 ……悪態ついてゴメンナサイ。反省してます。
 ……Fを取り上げないで下さって、ありがとうございます。
 ……意味のないことなど何一つ起こるはずがないって、ホントは分かってたんです。
 ……耐えられない試練は、お与えにならないってことも。
 ……どうか御旨の成りますように。
 ……そしてどうか、Fをお守り下さい。

 Fが東京に戻るとき、このロザリオを渡してみようか……と、ふと思った。
 僧侶に渡すものじゃないし、女子供の信心道具なんて、知識人に渡すものでもない。それでも、あのロザリオは私の愚かさの記念なのだ。神サマに悪態をつきながらFの無事を祈った記念。
 離れてしまうなら、彼に持っていて欲しい。
 持っていてもらうことで、彼に何かを背負わせるつもりなんてない。
 自分の分の重荷は、ちゃんと自分で背負っていくから。

 彼がいずれ東京に戻るという話が出るたびに、胸がズキズキと痛んだけれど、私なりにそれを受け入れる準備だけは、始めておいても早すぎないだろうと思う。

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 Fと私は恋人同士ではない。お互いがフリーなら、「付き合ってる」状態に多少は近いかもしれないが、Fには東京に彼女がいるし、私にはWというだんながいる。
 そのことを抜きにしても、毎日メールやメッセのやりとりをするわけじゃないし、好きだとか会いたいとか、恋人らしい会話は、ほとんど無い。Fが感情を言葉にする人じゃないというのも原因だし、私の方は……ん? 私の方は、けっこう積極的にアプローチしてる気もするな? まぁ、押したり引いたり駆け引きはしているけど。
 とにかく不安定な関係ではある。明確な同意とか、約束は何もない。むしろ関係を固定化しないこと自体が、暗黙の了解であるかのよう。関係の固定化は、互いに役割を押しつけて、互いの存在を「当たり前」のものに変えていく。
 私たちは2人とも、「相手のすべてを知りたい」という欲求が欠けている。むしろ、秘密を許さずに何もかも知りたがることを、嫌悪してもいる。それは心理的なコミュニズムだと思うし、心理的なカニバリズム(人肉嗜食)ですらあると感じる。互いを喰らい合うことのない、どこかしら永遠に見知らぬ者どうしでいたい。
 私たちは、不安を抱え続けることを自ら選んでいるようなものだ。それが、互いの存在を「当たり前」にしないための、代償なのだろうか。

 そういえば、K美からのお世話になりましたメールに、こんなことが書いてあった。
 「もしも私が、ユウとFくんの関係でユウの肩を一歩前に押し出したのだとしたら、同じくらいWさんとの関係でも肩を押せたのなら良かったんだけど」
 やはり、私とWという夫婦を昔から知っている人にとってみれば、その夫婦関係が上手くいかないのは残念なことなのだろう。
 結婚というのは究極的な関係の固定化だ。私たちは世間並みよりはずっと自由な考え方のもとで夫婦をやって来たが、それでも、相手の存在を当たり前と思ってしまうことからは、逃れられなかった。
 K美が何か言ったのか知らないが、Wは以前よりは少し気を遣うようになったようだ。夕食の後片付けに立ち上がるのが、少しだけ早くなった(あくまで少しだけ、だが)。外食しようと誘ってきたりもする。クリスマスの飾り付けをしようと急に言い出して、去年までは私一人でやっていたことを、Wが自分でやった。それから、妙にくっついてくる(これはウザイだけだ)。
 何もかもが、私にとっては今更、という感じだ。私がここまで冷めてしまう前に、そういう努力をして欲しかった。
 そのうち、きちんと言わなければならないのだろうか。もう、恋愛関係やその延長としての愛情関係としては、あなたにはまったく興味がないのだ、ということを。そしてそれは、あなたに「夫」や「恋人」としての、それこそ「役割」を期待するたびに、ずーっと裏切られ続けてきた果てのことなのだ、と。
 実際、次の休日にはどっか遊びに行けるかな?などと期待するのをやめたおかげで、どれほど私は楽になれたことか。一切の期待を捨てることで、やっと解放されたのだ。「妻」という役割が、実際には飯炊き家政婦でしかないことの息苦しい苛立ちから。

 明日は、Fの論文の締め切り日だ。Fから連絡は来るだろうか。いつ会えるだろうか。

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 これまでlivedoor Blogで書いてきた「背中から愛して」ですが、このたびアメーバブログに引っ越して参りました。
 過去記事はすべてインポートしました(トラックバックやコメントは今のところ置いてきたまま……下さった方には申し訳ないのですが)。

 他の恋愛日記と比べてみると、何だか登場人物が多めのような気がします。「彼氏と私の2人の世界♪」という順調な恋愛ではないせいでしょうか。
 長文の投稿が多いので過去記事を読むのは面倒かもしれませんが……出来れば、アーカイヴで最初の方の記事も読んでいただいた方が、お楽しみいただけるかと思います。

 では、今後ともよろしくお願いします。

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 昨日、一ヶ月ぶりにFと会った。

 一昨日から友人のK美が東京から来ていて、彼女がずいぶん前に軽井沢の旅行でFと会ったことがあると言った。K美と私は特に親しいわけではない。みんなで集まる時の呑み仲間で、さっぱりした性格なのでお互い気を遣わないで済むが、相手のことをよく知っているわけではない。もともとはS子さん(Bの元妻)の昔の職場の友人だった。
 今回は2人で喋る時間がたっぷりあったので、BとS子さんの離婚のことを話したり、私がFに熱を上げていることも話した。Fのことを人に話したのは、初めてだった。
 女同士で好き勝手言い合っていると、何となく勢いがついて、気持ちが吹っ切れる感じがした。
 K美と鍋をやろうということになっていたので、ダメもとでFに誘いのメールを出してみることにした。返事は来ないかもしれないと思った。どうとでもなれ、という開き直りの気分だった。K美としたたかに飲んだ後に書いたメールは文章がかなりヘンだったので、朝になって改めてメールを送り直した。
 K美とランチに出かけ、夕方にまた合流する約束をして、一人で帰宅すると、待っていたかのように電話が鳴った。Fからだった。
 声を聞いただけで、胸一杯に幸せになってしまった。それまでの不安や、鬱々とした気分はいっぺんに吹き飛んだ。
 いつも通りの静かな声。遠慮がちな口調。ですます調に、敬語。いつも通りのF。
 Fは、「ほんとに申し訳ないんですけど」K美のことは覚えていないと言った。旅行では初めての人ばかりたくさん会ったのだから、それは無理もないことだった。
 論文の〆切が17日で、〆切を30分過ぎただけで電話がかかってくる厳しさだとFは言った。つまり、いよいよ追い込みの時期なのだ。
 メールの返事が来ればラッキー、くらいにしか思っていなかったので、電話で声が聞けただけで、私はすっかり満足していた。来てくれるとはまったく期待していなかった。だがFは、8時過ぎちゃうかもしれないんですけど、しかも1時間半とか2時間で失礼することになると思うんですけど、それでもいいですか?と言ってきた。顔を出してくれるつもりなのだ。
 私は、無理しないでね、と何度も念を押した。
 その時の電話で、もう一つ、Fは私に聖書の章句のことを尋ねた。論文で引用したい章句があるのだが、正確な文章も、引用元も覚えていないという。しかも彼の聖書はまだ引っ越しの段ボールの中。私にも聞き覚えはあったが、すぐにどこと分かるものではなかった。ネットで検索すると案外分かるかもしれないとアドバイスし、多分マルコ福音書あたりだと思うから、調べてみると約束して電話を切った。数分後、またFから電話があり、検索したらそれらしい章句が分かったという。私は手元の聖書を開き、その部分を読み上げた。Fは、後でコピーさせて下さいと言った。
 夕方、K美と合流して買い物に出たついでに、聖書のコピーをとった。

 K美とダンナと3人で、夕方から飲み始めた。7時前には鍋を火にかけ、Fの分は別に取り分けてとっておいた。
 8時過ぎ、Fは吟醸酒を手土産に現れた。とても嬉しかった。白いタートルネックのニットにドルガバのジーンズ。素敵なF。
「ありがとう……でもFくん、飲んでられるよな状態なの?」と笑いながら聞くと、「分かんない」と言って笑い返してきた。
 私はFの隣に座った。だから彼の顔や姿を、あまり見ていない。隣に存在を感じ、声を聞いているだけで、とても満たされて幸せだった。
 4人で鍋をつつきながら、話に花が咲いた。K美と私がよく喋った。ダンナと3人で会ったときのような妙な違和感は、全くなかった。K美がいてくれて、良かったと思った。距離感がとても自然で、楽しく話をし、リラックス出来た。私はかなりはしゃいでいたはずだ。
 忘れないうちにと、聖書のコピーを渡した。少しでも役に立てるのが嬉しかった。

 Fは意外にも腰を落ち着けてしまい、終電の時間が近付いたとき、私は何度か、「まだ間に合うわよ?」と言ったのだが、帰らなかった。座が盛り上がっていたせいもあるし、息抜きが必要だったのかもしれない。結局12時過ぎにK美が近くのホテルに戻るとき、Fに泊まっていくかと聞いたのだが、明日も仕事だから、と言って、K美と一緒に部屋を出て行った。2人で何か話しただろうか。K美は何か言ったろうか。

 キスもせず、手に触れることさえもなかったけど、とても幸せだった。会えただけですごく嬉しかった。論文の〆切が17日と分かれば、それまで我慢するのなんて平気。
 二人きりで会うよりも、かえって良かったのかもしれないと思う。2人で会えば甘えが出てしまう。恨み言の一つも言ってしまわないとも限らない。二人きりでなかったからこそ、自然な距離感で、Fがそこにいてくれるだけでどれほど幸せかを感じられた。
 本当に、どれほど幸せだったか!

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 相変わらずFから連絡はない。こちらからメールをしたい欲求に、時々かられる。
 それでも、不安を追い払うことにはとりあえず成功している。次に会える時のことだけ考えることにした。
 「会いたかった」「会えてよかった」と、どんな顔をして囁こうか考える。
 片手を伸ばして軽くハグしようかと考える。
 頬を寄せて触れるようなキスをしようかと考える。
 何を着ていこうか考える。
 どの香りをつけていこうか、エッセンシャルオイルのブレンドを考える。
 どんな話をしようか考える。
 あなたに救われた最初の夜の話……あなたがどんなに優しかったか。
 ただの恋愛相手として扱うつもりはない……一時の恋人より、一生の友人の方がずっと大切だということ。
 ……そうして、少し満足したら、もうFのことは考えない。体を動かして、本を読んで、街に出て、ちゃんと「日常」をやる。
 ずっと会えないわけじゃない。きっとまた会える。
 だから、私は私の日常を取り戻して、Fからの連絡を待つ。

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