ある日の夜、チカが帰ってくると、
いつもと違う様子で早くシャワーを浴びたがっていた。
しかしあいにく風呂には誰かが入っていた。
チカ、どうしたの?
チカは、レイプされたと言った。
私はあまりに驚き、警察に行こうと言ったが、
いや、それはやめてほしいというのだ。
姉ちゃん、本当に大丈夫なんだよと言われても、
私は警察へ行くことしか頭になく、
ずっと通報を勧めた。
私の部屋でしばらく休んでると、
チカが話をし出した。
姉ちゃんだから言うけど、
私、性行為は嫌いじゃないの。
だから、お願いされたらできちゃうんだ。
でも、今回は、ちょっと相手の数が多くて…。
さすがに気持ち悪かったんだよ。
だから、レイプというのはちょっと言い過ぎなんだ。
このまま放っておいてくれない?
私は吐き気がした。
まだ中3の子が、こんなことを言っている。
これは、明らかに家庭のせいだ。
家庭のぬくもりがないチカは、
自分の体を大事にできなかった。
私がバイトに明け暮れた時も、
家庭の雰囲気は最悪だった。
中学に上がったチカは、
出来が悪いだとか、
お前みたいなバカは要らんとか、
お父さんから度々折檻のような暴力を受けていた。
その頃のお父さんは、
何かイライラすると、
チカやヒロに当たってるように感じた。
もちろん、私が居る時は、
私が歯向かって彼らを守っていたが、
私がバイトの時は、守ってくれる人がいない。
だから、チカもヒロも、
私のシフトに合わせて家を空けていたのだ。
チカは私がバイトしている時に、
いつも友達の家にいたのだ。
私はどうすれば良いか分からず、
ただチカを抱き寄せた。
チカ、姉ちゃん守ってあげるから、
その人たちと付き合わないようにしよう
と言った。
それぐらいしか思いつかなかった。
チカは、一瞬だけ驚いた顔をしたが、
すぐに目を伏せた。
私を抱き返すこともなく、
いつものように淡々と、
姉ちゃん、私、大丈夫だよ。
姉ちゃんが思うより、
私は全然気にしないんだよ。
やはり私ごときでどうにかできることではない。
私ごときで、チカの冷え切った心を癒やしてあげられない。
チカはウソをつかなくなったはずだけど、
この言葉を信じることって、
やはりできなかった。
でも、それ以上のことをしてあげられなかった。