その男、55歳。
中小企業の社長だった。
故郷に、長年付き添う妻を置いて、
東京で雇われる社長をしている。
とても知的で、話が上手な人だった。
母は多分、その男を好いていた。
だから、
私にその男に会って欲しかったようだ。
その男は、私に興味を持ち、
また次も、また次もと誘うのだった。
しかし、
その男から性的対象に見られているようにはどうしても思えなかった。
ウチの母のことも、
女としての付き合いをしているように見えなかった。
私もだいぶ警戒心が解かれ、
あの社長なら食事しても良いと思っていた。
社長はいつも、
私の大学生活や彼氏話を聞いて微笑んでいた。
そしてある日、
社長から言われた。
カホちゃん、就職はどうするつもりだい?
もうすぐ4年生の私は、
既に行きたい業種があって、
方向性は決まっていた。
年寄りのお節介だと思って聞いてくれるかい?
ボクに、就職の世話にさせてくれないかい?
どういうことが分からずキョトンとしてしまった。