奥さんはとても真剣な顔で、
まっすぐ私に向き合って言った。
私はあなたのお父さんを一生許すことないの。
あなたのお母さんのことも…今はどうでもいいの。
でも、今でもあの人たちのことを考えると腹が立つんだよ。
だってあんまりに無責任なんだよ。
犠牲という言葉を使うとあなたを傷つけるような気がして言いたくないけど……
(考えてるのか少し間があった)
………あなたは、
勝手な大人たちに振り回されて育ったけど、
なんにも悪いことしてない。
でも、関係ない大人たちまで中傷するようなことを言う時があるかもしれない。
その時はね、
あなたはあなた!親は関係ないの。
自分の人生を正々堂々生きていきなさいね。
私には奥さんが菩薩に見えた。
私は子供だったけど、
自分の親が、この人をひどく傷つけたことぐらい分かってる。
でもこの人は、言葉を選びながら私を応援した。
私はこの言葉をきっと忘れない。
この優しい気持ちを忘れない。
大人になったら、絶対に不倫するような人生は送らない。
母と同じことは絶対にしない。
その時強く思った。
大人になった私には不倫の誘いが何度もあった。
しかし、私はあの時から不倫を軽蔑している。
誘ってくる男が、あほらしく見える。
浅はかな男だなと思うと、魅力も一気に失せる。
不倫は当事者以外の人生を大きく狂わせる。
小さいながら、私は知っていたから。