私の養育は祖父がしてくれた。
叔父たちも手伝ってくれた。
私には幼少期の記憶があまりない。
なぜなら誰にも声をかけてもらうことも、
遊んでもらうこともないから。
壁を見つめていた記憶だけが鮮明に今でも残っている。
大人たちの会話は黙って聞いていたけど、
自分も会話に入れるものとは知らずに生きてきた。
だから幼稚園に入る歳になっても、
私は全く喋られなかった。
会話を全くしなかった。
家にはおもちゃも本もなく、
壁を見つめてるか、
テレビを見ているか、
祖父や叔父の会話を黙って聞いてるか、
何か出されたら食べて、
眠りたかったら眠る。
たまに祖父はお風呂に入れてくれる。
毎日ただそれだけ。
知育なんていうものには全く無縁に育ってきた。
その頃、母親が電話で、
『この子、気持ち悪いぐらい喋らないのよ』
そう話すことが多いなと思った。
でも母親と会話したことがない私は、
ただただ黙って母の動きを見つめていた。
そしてある日、家に来た人が私に声をかけた。
『あー』って言ってごらん?
『あー』
あら、ちゃんと話わかってるわ?
お話、わかる?
私は、話なんて理解できてたよ。
ただ、誰も私に話しかけないから、
自分から話していいかも知らなかっただけだよ。
あれから、私は半年遅れで年中組に入園した。