友樹の言う"あいつ"とは、三年前に付き合い始めた彼女の沢井澪(サワイミオ)のことだ。

 あいつと出合った三年前のあの日は凍えそうな雨の降る夜だった。俺はその頃、今日橋近くのバーでバイトをしていた。バイトの帰り、天王寺駅近くの人気のない街角で弾き語りをする若い男が一人いた。彼の歌う物悲しい恋の歌にあいつは涙を流していたのだ。

 それに気付いた俺は彼女にただ笑ってほしいと思った。それが恋の始まりだったのだろう。そして何を思ったのか、俺はあいつに声を掛けていた。そしてあいつは簡単に俺のあとをついてきたのだ。今考えてもおかしな話だ。あいつは俺をおかしなナンパ師か何かだとは疑わなかったのだろうか?純真なヤツだったのは確かだが、さすがにそのくらいは考えるはずだ。聞いてみたいが、そんな事は今はもう出来やしない。

 最初は二人寄り添って、ぼんやりとではあるがこのまま結婚なんかも考え、いつまでも一緒だと思いながら俺はあいつと付き合っていたのだ。もう次も前も考えられないほど俺はあいつのことを愛していた。

Rain at Night   to be continue **