記憶から消し去りたい出来事があった

何度も何度もその一瞬が

その場面が脳裏に焼き付いている

ただただ助けたかった

県道の横断歩道で立ちすくむ子猫を…

信号は赤

上下線の車を無理やり止める

夢中で駈け寄ると車の下に飛び込んだ

ゆっくりとゆっくりと車を誘導した

タイヤの前に座り込む

~ダメだ!~

声にならない声で

空を仰いだ

血の気が引いた

可哀そうと泣きながら送られる女性の視線

~あんたのせいだ~

そう聴こえたような気がする

何も感じなくなった

景色はモノクロだった

記憶から

消し去りたい