【11話後に追記】ソ・ラ・ノ・ヲ・ト ラストエピソード前の総括 | リュウセイグン

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長文多し。

ここ を見る限り、ラストエピソードに関する予言は外れたっぽいですね。


今まではそれなりに当たっていたと思うので、忸怩たる思いもあります。


ただし、このパターンだと最初の記事に記した


この予想が外れた場合、ギミックやガジェットは出てくるのにそれを充分に生かせない可能性も増加し、「結局何がやりたいのかサッパリだったね」というような結論になる恐れがあります。

これは何も僕の思い通りに行かないからダメ、というのではなくて砦の状況や小道具&大道具を登場させても物語に絡ませないという行為が創作上如何なものかな……と思うからです。

(中略)

例えば戦車を出しても戦車を使わなければならないような展開が発生しない場合は予想の範籌外です。

しかしそれは逆に「何故戦車を出したの?」という疑問が解消されない為に、お話としては違和感を残す結果になるのです。


これに近くなってしまうような方向かなと、むしろ落胆する気持ちが大きい。
戦車は一応活用されるだろうけど、足というレベルに留まってしまうんじゃないか。
こうなると悪魔は出さない可能性が高い。

で、このあらすじを踏まえて考えてみると……



敵兵発見→救出手当→情報聞き出し→匿ったのが発覚
→国家反逆罪容疑→タケミカヅチで脱出

→ノーマンズランドから両軍展開中の国境へ
→ラッパで休戦呼び掛け→和む→士官激怒→拘束or大ピンチ

→戦車が近付いてくる

「ひかえおろー!ひかえおろー! ここにおわすをどなたと心得る! 畏れ多くも大公様のご息女にして、この度正統ローマにお嫁ぎあそばされる、リオ・アルカディア公女殿下にあらせられるぞ!!!」

→(士官)へへー

リオ「こやつらは無罪!」→やったー→END



こんな感じかな。
地理関係が一部しか分からないのでなんとも言えない所もあるけど。
リオが無罪判定で出てくるのは、結構確実に思える。じゃないといなくなった意味がない

少なくとも、悪魔関連が放置されることは明白のように思われ(戦争関係になると)、今まで匂わせてきた事は一体何だったのかという話にもなってしまう。
あの世界観の中での特殊な設定をなんら生かすことが無いということは、要は作品の独創性自体を薄っぺらくしてしまうもので、釣り針以上の意味が失われるし、その分使った尺も勿体ない。
或いは二期を狙っていたのかもしれないが、あまり期待しない方が良いとは思う。
あと吉野さんはインタビューに「あれは最初から書かないつもりだったんです」みたいな事を言うだろうな。

ともあれ、こういう形になるから

「この作品は何がしたいのかがよく分からない」

と言われてしまう結果になる。

ただ、僕の意見はちょっと違う。

「表現したいものはあるだろうけど描き方が下手」

だ。下手というのも印象論だが、分かり難いというかしっかり対比させないというか。
恐らくではあるが、この作品に通底している物は

「Aかもしれない。でも、人によってはBかもしれない」


というものだと推察できる。Aは基本的に現実や客観、Bは主観や理想を示す物だとかんがえて戴きたい。
これは以前のエントリ でも記したのだけれども、

「誰かが、世界はもう終わりだと言っていました でも私たちは楽しく暮らしています」

「世界は幸せばかりではない──楽しいことばかりでもない──どちらかといえば、暗く、貧しい世界なのかもしれない。でもその在り方は自分ひとつ。綺麗なものも、汚いものも、辛いことも、楽しいことも、受け止めるのは、キミ次第なんだから──」

これが公式のトップ並びにイントロダクションに記されている言葉。
代入すると


A=世界は終わり

かもしれない

でも

人によっては

B=私達は楽しく暮らしています=楽しみを見出せる

かもしれない



後者も同じで



A=暗く貧しい世界

かもしれない

でも

B=受け止めるのはキミ次第=綺麗さを感じられる

かもしれない


こう書くことが出来る。

実のところ、本編のドラマ部分もかなりの割合でそれを想起させる物が組み込まれている。
明確に出てくるのは主に後半だが、視聴者との関係性(メタ的視点)まで考えると、相当多い。

1話は紹介回だから置いておくとして(見直せばあるかも)

2話
A=幽霊は怖い
かもしれない
でも
B=自分のご先祖様だから怖くない
かもしれない

A=幽霊の正体はミミズクだった
かもしれない
でも
B=本当に居た
かもしれない


3話
A=カナタは脳天気
B=劣等感を抱えている

A=リオはしっかりもの
B=慌てん坊

4話
A=タケミカヅチは人殺しの兵器
B=使う人次第・音楽が出るからきっと良い戦車

5話
A=山登りは大変
B=楽しい発見がいっぱいある

6話
A=酒を売るマフィア(フィリシア達)は怖い
B=演技

7話
A=この世に意味はない
B=自分で意味を見いだせる

8話
A=緊急事態
B=おもらし(が本人にとっての緊急事態)

9話
A=英雄じゃない・理想の先輩ではない
B=素敵な人

10話
A=女は男に捨てられた
B=幸せだった


8話などはやや強引だとも思うが(笑)特に後半はそういったテーマが中心になっているのが理解して頂けるかと思う。特に序盤、Bの概念を担うのはカナタである場合が多い。
幽霊は怖くないと言い、タケミカヅチは良い戦車と語り、山登りでも常に楽しみを見出し、マフィアに扮するアイデアを出す。
後半(7話以降)でカナタ自身の見出しが少なくなっていくのは、カナタの性質が伝播していった為だろう。

しかしながら、この全体的な傾向に触れる人はあまり居ない。
というか、見たことがない(一話ごとの感想で触れている人は居た)
最も皮肉なのは、この作品を大変に称賛し、「分かり難い」との批判に対して怒っている人ですら気付いている様子がないことだ。
それだけ見出しにくいのだろう。

本来、こういったテーマ性というのは極端であればあるほど明確化され、突き詰めれば詰めるほど深みを増す。
けれどもソラノヲトは、こういった部分を殆ど日常レベルで完結させてしまう為に明確化がされにくく、尚かつ世界観に繋がることもない。

カナタ・劣等感
クレハ・親の不在
ノエル・機械の用いられ方(不確定)
リオ・姉の死と父親との確執
フィリシア・世界の意味

登場人物に於ける悩みの内、終末論の如き世界観に関わる根本的なテーマ(であろうと思われるもの)に必然的に結びつくのはフィリシアだけだったりする。一応ながらノエルも該当する可能性があるのだが、未だ悩みの根幹が明確に描かれていないので判断しづらい。
またノエルにしても人殺し・兵器運用というレベルの問題であって世界の絶望と自らが見出す希望というレベルからは遠いと思われる。
他の三人については言わずもがな。カナタは日常レベルの悩みだし、クレハやリオも戦争こそ絡んでくるけれども、結局の所は肉親の不在や肉親との不和であり、そう特殊な物ではない。

つまり


「誰かが、世界はもう終わりだと言っていました でも私たちは楽しく暮らしています」


この世界の特殊性と相対する心理が、描かれていない。

世界の終わりを実感させないで描かれる「楽しい暮らし」は、
我々の世界に於ける楽しい暮らしと区別が付かない。


イリア公女の死因も取って付けたような水死だった。
これはリオの子供嫌いという設定にこそ繋がるが、その先がない。
それによってリオは何を思ったか、どう人格に変容をもたらしたかに関わらない。

例えばこの事故がリオを起因とする物だったら、リオは後ろめたさや悔いを持つことになり、セーズへ赴任した理由もより明確化出来る。子供を嫌うのも「自己の投影」という一面を持つ。
暗殺だったならば、政治という物に対する怨嗟やそれを防げなかった父親への怒りがいや増す。
しかし普通の事故死として処理されてしまっては、「子供嫌い」で終わる。

ソラノヲトの困ったところは、こういう部分ではなかろうか。
細かくネタを仕込んだり、伏線を長く引っ張る割には、結果がありきたり……というか着地点が今ひとつドラマ性に欠ける。もっと広く深いレベルで捉えられるテーマを、日常生活で完結させてしまう。
悪魔関連の設定にもその余波が感じられる(悪魔が出ても誉められた作品になったかどうかは疑問だが)

果たしてこういうレベルで延々と展開してきた話が、戦争終結(再開阻止)という広い物語に拡大した時に、説得力が出るだろうか。

正直、僕にはやや疑わしい。


【追記】
第十一話にてノーマンズランドから敵の軍隊が侵入……それ一番アウトなパターン……。
思いっ切り気取られているから(ノーマンズランドを越境する唯一の利点である)奇襲の意味がない。
たとえセーズを占領しても戦略的に何の意味も無い。
そして大軍だから補給線が伸び伸び。
しかもまだ講話中なのに。

と言う訳で、どんどこ墓穴を掘ってる感じです。
コレ考えた奴(作中の作戦含め)は絶対バカだな。
もちろん長征で困難な道を越えて勝利した例もあるにはあるのですが、今回の場合

・奇襲になってない
・攻め込む先が僻地で上手くいっても勝利は局地的な物に留まる、むしろ撃滅される可能性の方が高い。
・ノーマンズランドはかなり広汎な地域なので補給路がとっても長くなる(ノーマンズランドに基地を作ってあるかもしれないが、そこに対するエクスキューズが示されていない以上、そもそも考えていない可能性が高い)
・しかも冬(雪中行軍は他の場合よりも遙かに装備や補給が重要・これも考えてないと思う)

自分達の作る設定と話を、もっとよく考えてくれよ頼むから。
悪魔も思わせぶりだけど絶対詳細判明出来ないだろうからな~。
二期をやるつもり(だった)んだろう多分。