
3
中学二年生、夏。
その頃の僕は、恐らく世間の目から見ても比較的良い子だと思われていた。勉強、特に数学に秀で、神童だとか、ジョン・フォン・ノイマンの生まれ変わりだとか、具体的に言えばゆくゆくは地元一番の進学校である直江津高校にも合格出来るのではないかという期待を、一身に背負っていた。いざ入学こそしたものの、そこで先天性の貯金を使い果たし、後天性の積み重ねすら太刀打ち出来ず、万策尽きて落ち零れ、劣等生としてやさぐれるなどとは露ほども考えなかった程に、純粋な少年時代だった。
ただ、こういった中学に於ける青少年の嗜みとして、所謂「厨二病」や「反抗期」にも若干浸食されてはいた。僕の場合は、やたらに友人や家族と距離を取ろうとしていた記憶がある。勉強ばかりしていたのも、一つには親や教師などの期待に応える反面、余計な小言を言われず、勉強を楯に自らの絶対領域みたいな心の壁を形成したかったせいかもしれない。十四歳だし。もっとも、高校に入ってからは寧ろその傾向が悪化したような一面もあるのだが……。
ただ、一応断っておくと人外に関わったりだとか、特殊能力が使えるだとか後々のトラウマになるような極端さは無かった。鑑みると、幻想世界の住人みたいな妄想とはあまり縁の無かった僕が、「怪異」と望まない蜜月を過ごしているのは、。聊か皮肉ではある。
八月十五日。
お盆。
日本国民が総力を挙げて、日頃大抵はないがしろにしている先祖を祭り上げる日。
母の日とは違って世界各国というスケールでは、恐らく無い。あるとしたらせいぜい中国かインド辺りだろうし、インドでは仏教が廃れてヒンドゥー教が主流になっているはずだ。では、中国は……となるが、お盆は日本独自の行事だと、何処かで小耳に挟んだ。
全国では帰省ラッシュが終わり、既にUターンラッシュのスタートラインにクラウチング的な体勢を取っている時期。家族も皆出払ってしまった中、僕だけは祖父母の家ではなく、自らの生家に居た。勉強があるから、と両親には建前を語ったのだが、当然ながらその発言には本音がある。お盆なる、正月と並ぶらしい癖に、何処か辛気くさい年中行事の為に、暑くて混み合っている中をわざわざ往復するという行為が、当時の僕にとっては如何にも無意味に思えた。
また、一度でいいから妹も親も居ない環境で悠々自適に暮らしてみたかったのだ。何ヶ月、何年も、であれば中学二年生の僕はたちどころに進退窮まっただろうが、三日四日ならばどうという事もない。
僕の意図を知ってか知らずか、両親はこの申し出を快諾した。
但し、これには一つの条件を提示された。
墓掃除である。祖父母の元にある代々の墓とは別に、便宜の良さからと近所の寺院に墓地を購入したのだ。墓地、と言っても誰も入っていない。
「阿良々木家先祖代々之墓」と上手いのか下手なのか判然としない文字で記してあるだけの石碑に過ぎない。よく考えると、墓石の下には何も存在していないのだから文句としても不適当で、要するに石碑としても存在意義が疑われるレベルの代物だった。
しかしながら、存在すると言う事は何らかの価値を有するし、その価値に付随した意識も向けられる。墓の下に何もなくとも、それは墓石であり、墓地となる。
従って、人はお盆くらいには掃除しなければ、と思ってしまう。奇妙な話だ。
とはいえ、わざわざこちらの言い分を認めてくれる為の提案なのだから、余計な事を言う必要もない。だから僕は、それを二つ返事で請け負ったのだった。
墓と言っても、しばらくは墓参りをする予定もないので掃除をやろうがやるまいが、誰も気にしない。両親にしたってやったかどうかを聞くだけで、確認まではしないだろう。よって別にやらなくても構わない。けれど、約束だからと行ってしまう辺り、中学生の僕は純粋というかお人好しというか。一つ、フォローという名の自己弁護をしておくと、適当な理由をでっち上げて行かなかった後ろめたさは、少なからず関係していた気がする。
そんな訳で、甲斐甲斐しく墓地を掃除し、草を抜き、周囲に掃き散らかした。その分は、まぁ他の人がやってくれるだろう。思ったより時間が掛かって、早めに昼食を取って始めたにもかかわらず、気付いた時には午後の黄ばんだ日差しが傾きかけていた。ただ、未だに熱気は衰えていなかった。
加えて始めた頃は墓参の人々もちらほらと見かけたのだが、いつの間にか殆ど人気が無くなっていた。
大体は綺麗になったので、自販機でジュースでも買ってから帰ろうと踵を返した時、やや離れたところに一人の女性が佇んでいた。彼女も、墓参り……だろうか。
それにしては家族の姿も見えず(僕も一人だが、これは例外と考えるべきだろう)本当にただ独りきりで、顔を覆っていた。泣いているように見えた。
彼女の正面には真新しい位牌と塔婆が、墓石の前後を挟むように置いてあった。
女性が、顔を上げる。
僕は、思わず息を呑んだ。
分量にしてコップ三杯くらい。
美しい人だった。
今でこそ戦場ヶ原の女性らしい感じ(少なくとも外見は)だとか、八九寺の可愛らしさとか、神原の溌剌さなど、女性の魅力をある程度理解しつつある僕だが、当時のまだ下の毛が生えそろうか否かという瀬戸際だった僕にとって、その女性の容姿は衝撃と言っても過言ではなかった。反則、と言い換えてもいい。何しろ、僕の周りにいる女性と言ったら母親と妹二人が中心だ。クラスメイトの女子にしたって、それこそ妹に毛が生えた……というとやや誤解を招くかもしれないが、女の子女の子していて小学生の子供と大差ない。だから、目の前の女性が一際強烈な印象を与えたとしても、驚くべきではないだろう。
いや、今の僕でも、やはり彼女の姿を初めて見たならばある種の感慨を禁じ得なかったに違いない。たおやか、というよりも艶やか、と表現するのが正しいだろうか。顔の造作も純和風、と言った感じで派手ではないのだが、大きな目と、絶妙な高さの鼻、そして白い肌に映える赤い唇は艶めかしくさえあった。
喪服ではないけれど、黒を基調として、蓮の花をさり気なく散りばめた和服と、鴉の濡れ羽色と称するに相応しい黒髪を結い上げた彼女は、白い肌と強い日差しとの対比によって一層自らの影を濃くして、妖しい魅力を醸し出しており、僕の視線を縫い止めるのに充分だった。
軽いカルチャーショックを受けて彫像みたいに固まった僕は、不躾にもその女性を合資し続けてしまった。それに気付いたのか、彼女もこちらを振り向いて、手で目元を拭い、
「こんにちは」
と、やや赤い目を細めて、微笑んだのだった。
「こ………………ここここここここん」
僕の舌は硬直の影響を受けて、日頃のような滑らかさを失っていた。
不思議そうな目で見られる。やばい、このままでは不審者だ。
「こん……コングラッチュレーション?」
違う、普通に挨拶したかっただけだ。ていうか他人に「こんにちは」と言って「コングラッチュレーション」と返すヤツは居ないと思う。外国人でも。
「こん、にち、は」
まだゲル状辺りではあるものの、多少は舌が動くようになってきた。
歯医者の麻酔後みたいだ。
「良いお天気ね~。こんなに天気がいいと、熱中症で昏倒した挙げ句、誰も助けに来てくれなくて、墓参りの筈が墓守まで直行した上、最終的には即身仏まで進化しちゃうかもしれないわね~」
「………………」
これに答えられなかったのは、別に舌がどうとか、そういうレベルではない。初対面の人にどんな無茶振りをしてくるんだこの人は。そもそも即身仏って進化の上に成り立つのか? ちら、と相手を観る見ると、小首を傾げて微笑んだままだった。
「そ……そうですね」
同意しちゃった。空気に耐えきれず冷静さを欠いているとは言え、これはない。
しかし、まぁ相手が振ってきた話なんだから最も無難な返答ではある、と思う。
「よかったぁ、賛同してくれて。私、初対面の何気ない挨拶でもよく引かれちゃうの。同じ人が居てくれて、嬉しいわぁ」
と、彼女は咲みを浮かべた。最初の微笑みより、一段と嬉しそうな。
笑みではなく、咲み。花が咲くのと同義の、その字が当て嵌まるのに相応しい表情だった。それは向日葵のように、健全すぎてギラギラしたようなものではなく、言うなれば牡丹や椿のような抑え気味の、何処か陰のある華々しさをごく自然に、身に付けていた。ただ、そう感じたのは、僕が最初に彼女の悲しそうな姿を見てしまったからかもしれなかった。
「君は、なんてお名前?」
キミ、なんて呼ばれ方は子供扱いされたみたいで、大人ぶりたい時分の僕としては、やや不本意ではあったが、普通に答えた。
「阿良々木暦です」
「あら、あらぎこ よみ?」
どうしたらそうなるんだろう。
「あららぎ、こよみ、です」
「アララ・ギコヨ・ミ?」
「…………………………」
「……難しい名前なのね~、外国人みたい」
難しいんだろうか?
変わっているとは言われるが、一度教えたのに読めないほどでは無いと思うんだけど………。
この数年後に逢った少女、八九寺にはよく噛まれるけどが、あれはまぁ、スキンシップの一環だ。
彼女は瀬古口出雲と名乗った。
春先に主人を亡くし、初盆として訪れたのだそうだ。僕が何を聞いた結果だったらさぞ雰囲気を悪くしたろうが、彼女は自らそう語った。
「でも、泣いてばかりいる訳にはいかないものね。悲しいのは私だけじゃないし、頑張らなきゃ……とはいっても、思い出すと、涙は出ちゃうけどね」
そう言うと、出雲さんは口を手で押さえた。また感情が高ぶったのだろう。僕は何となく気まずくなって、辺りを少し見回した。
「アララくんは……まさか御家族みんなで旅行して事故で亡くなられたのに、仲間外れにされて、たった独りの生き残りに……?」
「違いますよ! 何ですかその妙にリアルなシチュエーションは!」
お、僕も調子が出てきたみたいだ。
でも実際、微妙に的を射ている部分もあるのでちょっと怖い……。
「あら、それなら良かったわぁ」
と、心底ホッとした声を出す。喋る様子からも推察は出来るが、全く悪気はないらしい。
「もしかしたら、遺産狙いで事故に見せ掛けて家族を皆殺しにして保険金をせしめようとする恐ろしい子なんじゃないかと……」
「だから、なんなんですかその無駄な想像力は!」
悪気……無いよな?
無いと思いたい。
「だって左目隠れてるし、アンテナまで生えているんだもの。墓場で生まれ落ちた幽霊族の生き残りかと」
「鬼太郎は保険金殺人しません!」
貸本時代はかなりアングラだったが保険金殺人はやってないはず。
ていうか、僕はそもそも鬼太郎じゃない。
「イバラギ君は、ツッコミのセンスがあるわね」
何県民なんだ僕は。ついでに言うとイバラキ、なんだけど。
そんな僕の思いを知ってか知らずか、彼女はまた笑った。よく笑う人だ。そういう彼女が涙する、身内の死というのはやはり相当に辛い事なのだろう。まだ祖父母すら健在な当時の僕には難しい感覚だった。
「そのツッコミセンスを生かして弁士にでもなったらどうかしら?」
弁士……って無声映画のですよね? 僕、映画にツッコミすんの!?
どちらかと言えば、貴方のボケの方が圧倒的だと思います…………。
漸く、そんな取り留めもない会話をしていたが、日差しは未だに強く、真夏の太陽はじりじりと素肌を灼いてくる。出雲さんの顔や首筋にも、うっすらと汗が滲んでいた。
このままでは、冗談じゃなく墓参りだけじで済まず墓の中へ直行しかねない。
やや、名残惜しさを感じつつも切り上げる事にした。
「じゃあ、これで」
「そうね……」
そう言った出雲さんの顔が少し寂びそうに見えたのは、僕の気のせいだったのかも知れない。もしくは僕自身の内面を彼女に投影してしまったのだろうか。
踵を返し、出口に向かう階段の方へ歩き出した出雲さんは。
自分の足に躓いて、
「あら?」
二・三歩蹌踉めき、生け垣の枝に袖を引っかけ、
「あらあら?」
更に体勢を崩し、最後は石畳の皆無に等しいほど細い隙間へ、針の穴を通すほどの正確さで草履の先を侵入させ、
「あらあらあら?」
見事、階段を転げ落ちた。
「あらあらあらあらあらあらあらぎく~~~~~~ん」
もはや名前の名残すら存在しなかったが、流石に訂正している程、呑気な事態では無かった。
「大丈夫ですか!」
階段を駆け下りて、倒れたままの出雲さんを抱き起こす。頭にめぼしい傷は無いみたいだが……
「中丈夫ってところかしら~」
確かに問題ないか……と視線を下にやると。
左足が真っ赤に腫れ上がっていた。
「ちょ……全然大丈夫でも中丈夫でも小丈夫ですらありませんよ!、足まずいですって!」
これは……折れているかもしれない。
「ん~? でも首の骨じゃないから平気平気。」
比べる基準がおかしい。
「それに、唾でもつけてれば治るわ」
「擦り傷と一緒にしないで下さい!」
「でも、前に転んで腕折った時は、唾と包帯で完治したわよ~」
ほら、と腕をまくってみせる。白皙の肌は、確かに綺麗なものだった。
でも、それただの偶然……というか、骨折治療に唾と包帯ってメチャメチャ不衛生だよな。
「ダメです。ちゃんと繋げないと変に固まったりするし、病気にもなるんですから」
「そうなの?」
この人は……どうやって生存競争を生きてきたのかが疑問視される。
「ほら」
僕はしゃがんで、背中を向ける。自力では到底歩けまい。
「有り難う、アバラギ君は優しいのね」
骨みたいだ。振り向かないで良かった。きっと、僕の顔はこれから訪れる夕焼けみたいになっているだろう。
出雲さんがおぶさり、柔らかい感触が僕の背中に当たった。
これは……予想していなかったとは言わないが、予想以上の大物だった。着物越しにでもその圧倒的な存在感が伝わってくる。僕の顔の血流が、より一層激しさを増すのが分かる。
これが伝説の、着やせするタイプってヤツか……。
思春期ビギナーの僕に、これは辛い。四回戦ボクサーが、世界タイトルマッチに挑むみたいなもんだ。
更に嬉しくも困った事に、出雲さんは躊躇いもなく身体を密着させてくる為、触感だけではなく、その方向まで用いて僕のリビドーを責め立てる。これは狡い。卑怯者と言っても過言ではない。二次成長が終わるかどうかの微妙な年頃に、こんなラスボスを差し向けるなんて。
RPGだったら即刻教会行きだ。この時、僕の財布には殆ど現金が存在していなかったので、金が半分になっても教会へワープ出来た方が僥倖と言えたかもしれない。
問題は、この感触と戦い続けつつも歩かなければならないという事だ。
加えて炎天下と出雲さんの暖かさと自らの生理現象から来る体温の上昇で、僕の赤さと発汗量は通常の三倍くらいになっていた。
いや、流石にそこまでいったら死んでいるだろうが、それくらいの気分だったと言う事だ。
「このまま二人とも倒れて、気温のせいで腐敗が早まっちゃったら、ドロドロに溶け合って、どっちがどっちか分からなくなっちゃいそうだわ~」
この人はのんびりした口調でサラッと怖い事を言う。そして何処かしらロマンチックさと、官能的なニオイを伴っている。少なくとも男入門の僕には、そう思えた。
色々ツッコミたい部分はあるのだが、それは後回しだ。口数を増やせば、せれだけ体力も減るし、余裕もなくなってしまうだろう。
幸い、五分くらいするとバス停があった。
丁度いいタイミングで総合病院へのバスが来たので、やや奇異な目で見られつつも、渡りに船とばかりに乗った。そんなに長い距離ではないから、僕の財布でも大丈夫だろう。
と、思ったら出雲さんが出してくれた。僕は固辞したが、どうしてもと言うので、結局好意に甘える事にした。よく考えれば出雲さんにとっては小銭だろうし、恐らく多少の後ろめたさがあるに違いない。
病院に到着し、外科はお盆休みなので救急で診て貰った。どうやら捻挫だけで骨折の心配は無いようで、頭の方も問題無さそうだった。
全部が終わった時には、もう日が落ちかかって、辺りは暗くなり始めていた。
松葉杖を使えば問題ないし、無くても飛び跳ねるような形ならば歩ける程度の怪我ではあるようだったが、堕ちた状況も目撃してしまった僕としては、少なくとも駅まで送っていかなければ安心出来ない。
「ごめんね……迷惑かけちゃって……」
出雲さんは、やや俯き加減に言う。
「いえ、そんな」
「色気を良い事に人を奴隷のようにこき使うような女だと思ったでしょ?」
「だから何でそんなに具体的なんですか?」
自覚はあるらしい、色香の。
でもまぁ、人妻というか未亡人なのだから自らの魅力には、ある程度自覚的でも不思議ではない。
「人妻って、響きがえっちいわよね」
あれ? 今、口に出して無かったよね?
「おまんじゅうも、聞きようによってはえっちいわぁ」
そんなツッコミにくいボケを振られても困るんですけど……。
「妻、だと一般名詞として二人称や三人称でも用いられるけど人妻、とか団地妻ってなると本当にえっちいわぁ、不思議よね~」
だからツッコミにくいって!
楽しい会話は嫌いじゃない。でも、年上だからなのか、やりにくぞこの人……何というか一方通行だ。
「そうそう、手慰みっていうのも何だかアレよねぇ、アレ」
「何の話をしてるんですかっ!」
ついでに言うと、指示代名詞の使い方が明らかに年輩用だ。名乗った時に三十路前だとも言っていたんだけど、天然ボケのせいか受ける印象がぶれる。
「あら? 分かり難かったかしら? 平たく言うと○ナニーの話を……」
「平たく言い過ぎですっ!」
妙齢の女性なんだから、あまりに直裁的な下ネタはやめて欲しいんだけど……。
そんなやり取りをしている内に、何とか駅にたどり着く事が出来た。彼女の家は、数駅離れたところらしい。
「今日は、本当に有り難うね」
「いえ、成り行きでしたから」
と、頭を掻く。何となく照れ臭かったからだ。
ふわり、と手が巻き付いて、再びあの柔らかい感触が僕を包む、今度は、正面から。
「あ、あの……」
「嬉しかったわ、阿良々木君」
僕は待たしても硬直してしまった。人目が気になるどころの騒ぎじゃないが、どうやら多くの人姉弟か何かだと了解したらしく、あまり大仰なリアクションは魅せなかった。
「じゃあ……ね」
「は、はい。お元気で」
振り返り振り返り(ついでに何回も人にぶつかり)、改札を通って人混みに消えてしまった姿を、僕は今でも思い出す事が出来る。