獣の奏者 エリン 第32話 「大罪」 | リュウセイグン

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こうやってあの炉心ができていくのを見るとな、どんな未来がおまえたちを待っているのだろう、我々科学者はどのような世界をおまえたちに残していけるのだろう……ふと、そう思うことがある。

人類は夜の闇を炎で照らし、その恐怖から解放された。
だが、それと同時に様々な犠牲をも生み出してきた。

公害、自然破壊、オゾンホール……いつも何かあって初めて、慌て、騒ぎ、後悔をする。

だが、それももう限界だ。もし今度何かあれば、それが取り返しのつかないことだったらどうする。

我々科学者とはいったい何者なのだ。進化というヴェールをかぶった破壊者なのか。


わしは願う……科学が常に犠牲を生み出すものなら、その科学でそれを食い止めることはできないだろうか……そうすることだけが、おまえたちに未来を託せる方法なのかもしれんな。


それを、母さんも望んでいるはずだ。


すべてはあと少し。あと少しすれば、あれが答えを出してくれる。

……ほーら、見える。見えるぞ。わしにははっきりと見える。おまえたちの世界だ。光り輝く未来、何の恐れもない夜。

それは、幻ではない……


フランケン・フォン・フォーグラー


遂に、物語のバックグラウンドを担う過去話が語られました。

概ね、予想通りと言ったところでしょうか。
霧の民と真王ジェがあんまり関係なかったり、なんかもう1人オッサンがいたり、あと制御出来ない部分が問題だったりしましたが王獣の戦争転用に於ける惨劇という部分では十分予測の範囲内だったかと思います。

やや不鮮明なのは尺の問題だったのかもしれませんが、ジェがオルフェ王の提案に従ったのは少なからず個人的な思い入れが関わっていたんじゃないかという部分を匂わせる物がありました。

まぁ結果的にはリョザ神王国の建国時点で、二人が結ばれた訳ではなさそうですから何とも言いかねますが。

オルフェ王は大公祖、と見るのが妥当でしょうしね。
彼らは、一応ながら王獣や闘蛇に介入する技術を伝えては居ますが、あくまで限定的で封印された部分が多い。
恐らくは悲劇を繰り返さない為に。
『王獣規範』がその好例。

エリンはそれに触れる行為を成し遂げてしまった訳で、やはりどちらからも狙われそうです。

ただ、キリクの予告からすると単純な軍事転用っぽい印象を受けるなぁ。
彼は言うなれば強硬な保守派(真王を推戴するという意味)ですから、権威には気を使わなきゃいけない気もしますが……王獣技術の一般化は真王自身の権威にはあんまり関わらないのかな? もちろん強硬な革新派(大公側)だった場合はそれを権威の失墜に利用するでしょうけどね。

また、今回やけにサラっと語られましたが、母ソヨンがわざと闘蛇を殺したという疑惑
しかしなぁ……コレはどうなんだろう。少なくとも今の段階では動機が薄すぎるんですよね。
闘蛇はまだ何百匹も居るだろうけど、ソヨンは命を奪われる。娘とも暮らせない。

こりゃ割に合わない。

第一医術師なんだから、殺そうと思えばもっと機会はある
卵を孵化させないとか、見つけさせないとか。

一番簡単に思い付くのは殺された闘蛇が自己で繁殖出来そうだった……という感じだけど、それでもまだ引っ掛かるんだよな~。
種やギアスじゃあるまいし(エリンも疑問に思ってるし)こういう行動の裏にはやはり何らかの理由があると考えて爾るべきでしょう。
今思えば、卵泥棒でもあった強硬保守派の関与も疑われますが、証拠が少なすぎますね。

ともあれ、エリンに艱難辛苦が降りかかってくる事は間違いのない話。
しかし、これまでも苦労の連続であり見た目の割には頑固極まりないこの女を挫けさせる奴等はそうは居ないでしょう。
冒頭の言葉はGロボの名台詞の一つですが、基本的にエリンも同じような思考を持つ人間だと僕は思っています。
この物語の最後に、彼女の辿り着く境地は何だろう……そう思うと、今から楽しみですね。