〖 Ⅻ 吊るされた男 〗
「頭でっかちになってない?」
「こうでなければ」
「いままでこうしてきたから」
「こちらの方が正解なんだから」
そんな言葉たちが あなたのまわりに積み重なり
見えない囲いをつくっていた
その囲いの影から 一本の枝がするすると伸びてきて
あなたの足首をつかみ、 ためらいもなく空へと吊り上げる
逆さまになった世界で あなたの頭の奥に ひとつの声が響く
――何を頑なになっているのだ
その問いは 鋭い刃ではなく
古い殻をそっと叩く指先のように あなたの内側へ触れてくる
はっとして あなたは気づく
とらわれの正体は 他でもない自分自身
古い考え 意味のないこだわり ずっと居座っていた影たち
それらがほどけていくとき
長く座り込んでいた脚を立ち上げたときの
あのじんわりした痺れが
足元から頭の先へと流れていく
その痺れは あなたがもう変われるという合図
新しい方向へ歩き出すための 静かな灯り
「なんのことか いまいちわからないわ」
そうつぶやくあなたに 風がそっと答える
気づいて あなたのこだわりが あなた自身を縛っていることを
考えてみて それはなんなのかを
ほんの少しでいい
その手から ひとつだけ手放してみる
枝はもう あなたを吊り上げていない ただ 見守っている
あなたが自分の足で 新しい地面へ降り立つ瞬間を
そして その一歩が あなたの物語を変えていく
