(中学生のころ不思議な体験をしました

この時から死のとらえ方が変わったと思います)

 

 

ー送り火ー

 

「会いたいなあ・・・」

 

受話器から聞こえるその声は小さくて遠慮がちだったが

はっきりとわたしに意志を伝えてくる響きだった

 

「もうすぐ期末テストあるし忙しい!」

わざわざ会いに行っても別にしゃべることないし

なにより邪魔くさくて仕方なかった

 

受話器の向こうからはとても残念そうに

どこか悲しそうに

そして静かに

いつものように喉の奥で小さな微笑み声をたててそれ以上何も言わなかった

 

ただただ邪魔くさかった中学生のわたしは

冷たくあっさりと断って受話器を置いたあと

 

ふと気になった

 

祖母があんな風に自分の希望を伝えてくるのはこれが初めてのことだったから

 

そして

それはわたしへの最後の言葉となった

 

 

ーーー

 

 

数日後の夜 病院の待合室

中学生のわたしをはじめ弟や下の従姉妹たちはここで待つように大人たちに言われた

「あんたお姉ちゃんやねんからしっかりこの子ら見ててや」大人達はそういい残して

一番奥の病室へ入っていった

 

長男家族と一緒に外食していたおばあちゃんが事故で病院へ担ぎ込まれたのだ

そんな一大事が起こっているとは知らされず わたしたちはただ

<おばあちゃんが大変> という匂いだけ感じとっていた

 

仕方がないのでそれぞれにそこにある本を読み時間をつぶすことにした

 

しばらくしてわたしの体がふとなにかをとらえた

 

この待合室に向かって誰かが歩いてくる

その誰かは待合室の入り口でとまり ふわっと室内をのぞいて わたしたちに 

 「 さよなら 」 といった

そのあとその人は明るい光に包まれてそのままいってしまった

 

  おばあちゃんだった

 

四人は同時に読んでいた本から目を離して顔を見合わせた

「なあ・・・今おばあちゃん さよなら言いにきたよな 」

三人とも同じ風景を感じたらしく「うん!!」と一斉にうなづいた

 時計を見る 午後7時5分

たぶんもうすぐ大人達が私たちを呼びにくる

 

「 さよなら 」 はとてもやわらかで暖かくて 開かれていた

 

 

 

7時10分をすぎた頃

目を真っ赤にした叔母さんが私たちを呼びにきた

病室に入ると 口から鼻からたくさんのチューブにつながれた痛々しい姿のおばあちゃんがベッドで眠っていた

 

「ご臨終です」 お医者さんがわたしたちに教えてくれた

 

 

ーーー

 

 

霊安室

大人たちはお医者様と話があるとかで

わたしひとりを おばあちゃんのそばに残して出て行った

いや わたしが残って見ててあげる といったと思う

 

ほかにもご遺体がある(あったと記憶している)安置室

薄暗くひんやりとしているが おばあちゃんと一緒なので ちっとも怖くなかった

 

おばあちゃんにさわるとまだほんのりと暖かかった 

普通に眠っているみたいだ

 

肩に手を置いてほんの少しゆすってみた 

耳元でちいさくおばあちゃんと何度も呼んでみた 

口や鼻に手をかざして息をしてないか何度も確かめてみた  

目を凝らして胸元あたりを見つめても もうどこも動かない

 

時間がたつにつれおばあちゃんの体は お湯が冷めるみたいに少しづつ少しづつ

温度がさがっていった

その小さな そしてとてもおおきなその移り変わりをただただ じっと

肌で観察し続けていた

 

魂は穏やかに天界へ昇っていったのを見届けたのに 肉体はまだ目の前にある

なにか納得がいかなかった

 

しばらくすると看護婦さんが入ってきて

これから体をきれいに拭いてあげますから外で待っていてくださいねと

部屋を出された

 

 

ーーー

 

 

お葬式当日

わたしは一人 朝から冗談をいったり 笑ったりしていた

泣きたくなかったし 

ここは泣いてはいけないんじゃないか そう感じていた

わたしも笑ってさよならを返したかった

 

大人たちは皆「こんな時に非常識な!」と怒ってわたしを 黙らせた

 

 

 

ーーー

 

 

 

それから数年後

何気なく見ていたテレビで ひとりのお坊さんが話されていた

「私の母のお葬式の日 母は龍の背に乗って天へ昇っていくのをみた」と

なんと雄大なお迎えなのだろうか その人それぞれにお迎え方が違うようだ

それはその人の 生き方によって決まるのだろうか 

はじめから護ってくださっている人がいるのだろうか

 ・・・何に関係しているのか聞いてみたいものだ

 

さらに数年が経ち ある映画をみた

<ニューヨークの幻> 残された恋人を危機から守った彼が

いよいよ天国へ召される 別れの時間

 

行く道が光に満ち その光は天へと続いていて 

たくさんの可愛らしい天使たちが彼を迎えにきていた

彼は恋人にさよならを告げ 光に包まれていった

 

このラストシーンに釘付けになったわたしは鳥肌を立てながら 泣いていた

 

あれは・・・ あれは、本当だったんだね・・・

 

・・・ あの時 光の道の中 ふたりの神様(男性と女性)がお迎えにこられていた

(どんな御姿だったかは省略しますが 幼い頃からわたしの後ろにいらっしゃった方と同じ服装でした)

 

おばあちゃんの「 さよなら 」は

この世に未練を残すことなく 何の重荷を背負うことなく 軽やかで 

なんというか 

手ぶらで次の地へ旅立つといったふうな明るくてすっとした感じだったのを

今でもしっかりと覚えている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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