(小説)【はぐれこうもりとかぼちゃのおはなし】
ハロウィン即興ポエム…いや小説??です。のつもりです。
※主人公は僕じゃないので画像は本当に挿絵程度に;;
夕闇が直ぐ其処まで近付いて、もうちょっとで蝋燭に火が燈る頃。
あたしはの蝙蝠の群れからふと離れた。
仲間なんて思えない他人の背中越しじゃなく、
あたしの眼で景色を見たくなったの。
一年に一度だけ、あたし達が認められる日だし。
つまり今日だけ、逸れ蝙蝠って奴に、あたしはなったわけ。
人間は皆可笑しな服を着るの。
お化けのふりをして、連れ去られない為にね。
そんな事しなくても御前達なんかいらないのにって皆は笑う。
今の人間達は食べても大して美味しくないらしい。
こうして見下ろしてると、何と無く解る気がした。
人間達は気付いてないみたいだけれど、
あんた達が飾り付けてるその南瓜達は生きているんだからね。
土手南瓜がジャック・オ・ランタンになった時、
あたし達の仲間になるのよ。
ほら、其処の子なんか高所恐怖症だから、
そんな高い処に置いて欲しくないってさっきから騒いでるじゃない。
あーあ可哀想って笑いながら見ていたら、見つけてしまったの。
他の南瓜共から離れた処に転がる、一匹の小さな南瓜を。
あたしが直ぐ近くに来ても、其の子はあたしに気付かない。
何か…地面をじっと見てるみたい。
我慢できずにあたしから声を掛けてみた。
なにしてんの。
べつに。 これみてただけだよ。
静かな其の子の視線を追うと、地面に一匹の虫の屍骸が転がってた。
むし?
うん、 しんでしまったの。
こんなの見ててたのしいの?
…なかまだから。
意味が解らない。虫の友達って事?南瓜が?
ぼくがここに来たときは、まだ生きてたんだ。
そう言う其の子の人工の瞳はひどく優しくて、
もし今この子に自由に動かせる手があったら、
きっとそっと屍骸を撫でてた。
人にふまれたんだ。だれにも気付かれずに…、
確かにここに居たのに。
其の子の人工の笑顔は動かなくて、其れがちょっと切ないと思った。
ジャック・オ・ランタンだから仕方が無いのだけれど。
暫く何も言わなかった、いや言えなかった。
でもあたしは此れだけは訊きたかった。
あんた、こんなとこにいていいの。
…どうして?
あんた、装飾用でしょ?仲間はみんなあっちにいたわよ。
そう言うと、其の子はまた地面に視線を落とした。
ぼくは…いいんだ。
なぜ?
もう人の残念がる顔をみたくない。
少しだけ其の子は顔を上げた。
ぼくはしっぱいだったって。求められていた大きさじゃないし、
なにより顔がきれいに作れなかったって。
…この虫さんは、なかまなんだ。
唐突にまた虫の話題に戻された。でもあたしは黙って聴く。
この子、ちょっと気になる。
独りでここにきて、夕闇の微風のなかで、独りで。
其の子の静かな声に、嗚呼、ちょっと解って来た気がする。
ねぇ、あたしも、はぐれこうもりなのよ。
かえる場所はあるけれど…心からの仲間なんていなかったし。
…ねぇ、
其の子はゆっくり空を見上げると、其のまま呟くように聴いて来た。
だれかに愛されたこと、ある?
まっすぐ、静かに、ただぼくだけを見詰めるように。
少し、風が強くなってきたみたい。
ない。だってあたし、こうもりだもの。
誰かに求められたことすらないわ。
…そう。
其の子は初めて微笑った。
人工の笑顔が其の子の其れとなって、ふわりと現れた。
夜風に紛れて、おなじだね、って声が聴こえた。
ぼく、いつまでここにいるのかな…。
ここに捨てられて…これから、どこに行くのかな。
其の子の言葉を遮って、あたしははっきり言った。
あたし、まだここにいるから。
ずっとここにいるからね。
其の子は何も言わず、空を見上げてた。
だけど少しだけ、あたしの近くで。
あたしも一緒に、見上げたの。
何時の間にか夜空が浮かんでいて、
今日にぴったりの月が笑った。
もう暫く、一人は二人で居られそうだった。
誰かの掌が覆い被さるまで。
-END-
