『成長から循環へ』  その1 | ムーンワーカーズ

ムーンワーカーズ

一人ひとりの人生があり、仕事がある。
自分というものをもっと知ろう。
個性は十人十色、作業も十人十色。
仲間の数だけ楽しさは増え苦しみは減る。
人に迷惑かけたら人の迷惑もらおう。
それがどうした? そんなもんでしょ。
地域と仲良く家族を信じ自分を大切に。

その1.生物の限界

太古、弱肉強食の時代に栄華を誇った恐竜たちが絶滅した理由は? 隕石説か火山説か? 実のところ、それがどちらであろうが問題の本質ではない。真の理由は、彼らが巨大になりすぎたために環境の変化に順応できなくなったからである。

 一方で、その時代に周囲におびえながら暮らしていた弱者たちが、細々ながらも今日まで慎重に生命をつないできたのである。言うまでもなく、人類の祖先も弱者であった。

 ところが、人類は産業革命以降、急速に恐竜化してしまった。さらに言うなら、人類が作り出した「産業経済社会」は実態の何倍にも膨れ上がった「風船怪獣」みたいなものだ。ただ、この怪獣、ウルトラマンでも下手に手が出せない厄介者である。なぜなら、爆発してしまうと放射能をまき散らすからだ。ウルトラQに頼んで怪奇大作戦をもってしても無理であろう…と、 話が「円谷」方面へずれてしまったが、つまるところ生き物の大きさには限界があり、それを超えたものは必ず崩壊するということである。恐竜然り、マンモス然り、そして人類は…。

さて、円谷から別の谷に話を移す。 「風の谷のナウシカ」をご存じだろうか。

ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は数百年のうちに全世界に広まり巨大産業社会を形成するに至った。大地の富をうばいとり大気をけがし、生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は1000年後に絶頂期に達しやがて急激な衰退をむかえることになった。『火の7日間』と呼ばれる戦争によって都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し、複雑高度化した技術体系は失われ地表のほとんどは不毛の地と化したのである。その後産業文明は再建されることなく永いたそがれの時代を人類は生きることになった。

- 「風の谷のナウシカ」冒頭の一節より引用

もう少し話の続きをさせていただこうと思う。

 陸地の大部分には、瘴気(有毒ガス)によって人が息すらできない「腐海」と呼ばれる森が拡がり、複雑怪奇に巨大化した蟲(むし)たちが、これまた巨大化した菌類と共に生息していた。胞子の拡散で勢力を拡大するそれら新生態系は、従来の生態系を脅かす存在となっていた。一方で人類は、種の存亡の危機に瀕していながらも領土紛争に明け暮れ、それによって蟲たちを刺激し、さらに腐海が拡がるという悪循環を繰り返していた。

ある日、ナウシカが暮らす辺境の小国「風の谷」に侵攻してきた大国トルメキア軍は、腐海の発生源である胞子を持ち込んだばかりでなく、平和だった谷に大海嘯(腐海最大の生物 『王蟲=オーム』の大群が津波のように人里へ押し寄せること)をもたらす。自らが招いた脅威におののくトルメキア軍は、「火の7日間」で世界を焼き尽くしたと伝えられる「巨神兵」を復活させ、迫り来る王蟲の大群を焼き払おうとする。ところが、蘇生不完全で重力に耐えきれなくなったその化け物は自滅してしまう。そして暴走の勢いを増す王蟲の大群の中に、風の谷の王女ナウシカはたった一人、その身を投げ出すのである…。

経済成長に陰りのない約30年前に、宮崎駿氏はこの作品を書いた。単に科学文明の行く末を説いているだけではなく、そこには、隣国を制圧し自然すらも征服してきた西洋人と農耕社会で自然と共に生きてきた日本人、根本的に異なる二つの世界観が描かれている。東日本大震災による原発事故から半年、アメリカで起きた9.11同時多発テロから10年経った節目に、今一度見つめ直さねばならない人類の課題がぎっしり詰まっており、さしずめ『風の谷の“なう” 』としか言えない作品なのである。

ムーンワーカーズは小さな作業所だが、大きくなることに何ら魅力を感じていない。