受容と供給1 | ムーンワーカーズ

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一人ひとりの人生があり、仕事がある。
自分というものをもっと知ろう。
個性は十人十色、作業も十人十色。
仲間の数だけ楽しさは増え苦しみは減る。
人に迷惑かけたら人の迷惑もらおう。
それがどうした? そんなもんでしょ。
地域と仲良く家族を信じ自分を大切に。

新年に、福祉教科書の決まり文句「受容と共感」を書初めしながらこんなことを思った。
▼健常者に近づくことが障がい者の自立なのか?
 入所当時、人前で話すこともしなかった利用者が、今では大勢の人前で試食販売ができるようになり、5+6の繰上げ算ができなかった利用者が、今では3桁の加減算ができるようになり、決して笑おうとしなかった利用者が、今では毎日笑顔を見せるようになった。それなりの成果が現れてきたと思う。しかし、この調子でどんどん進めること、つまり、どんどんと健常者に近づけることが利用者を自立させることなのだろうか? いや、大半の利用者にとって、それは見当違いなのだろう。なぜなら、我々健常者の常識がそのまま彼らの常識ではなく、むしろ我々が見ることも聞くこともない幻覚や幻聴と普通に会話することのほうが、彼らの常識だからだ。
 「受容」はできる、けれど「共感?」・・・ “できっこないでしょ! 僕たちが見えたり聞こえたりするものが何かわかりますか? 10本の指を使わなければ繰上げ算ができない私のイライラがわかりますか?”と、それこそ彼らのつぶやきが背中のほうから聞こえてきそうだ。
▼社会復帰を目指さない「非」援助論
「幻覚妄想大会」とは、北海道浦河町にある精神障がい者のグループホーム・ケアハウス・授産施設「べてるの家」の名物行事である。精神病の煩わしい症状である幻聴・幻覚・妄想に正面から向き合い、それどころか“幻聴から幻聴さんへ”と敬意を払いながら自分たちに見えたものを発表しあうこの大会では、人気の高かった幻覚類に“ぱぴぷぺぽ大賞”などの賞が贈られる。また、自分の病気や障害に名前をつけることから始まる「当事者研究」で、しばしば施設や職場を脱走してしまう自分のことを、“統合失調症”ならぬ“逃亡失踪症”だと自慢し、“流行語大賞”が贈られたそうだ。他にも「べてるの家」には、ユニークな決まり文句がたくさんある。“偏見差別・公私混同大歓迎” “勝手に直すな自分の病気” “安心して絶望できる人生” “生きる苦労を取り戻そう”授産所の中では、“安心してサボれる職場づくり” “手を動かすより口を動かせ” 失敗しても“今日も順調”などなど 我々の常識とは、まるで真逆の価値観が彼らの心の支えとなっているようだ。このようにべてるの家は、病気や障害をもつ利用者に対して健常者が援助の手をさしのべるのではなく、障がい者が集まれる場所と作業を“供給”するだけで、自ずと生きる苦労を “共感”する場所になっていくのである。少なくとも健常者の社会よりも安心できる場所に違いない。
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