「愛した人～彼の存在～」

彼との出会いは今から約4年前。
その頃私は神戸で暮らしていた。

だから彼もコテコテの関西人。
私より2歳年下。

友達を通じて知り合った。彼の話は友達から前から聞いていた。
だけど、あんまりいい印象はなかった。
第一印象もあんまり良くなかった。

だけど、何となく仲良くなった。
そして、すぐに付き合いだして一緒に暮らし始めた。そして、私はすぐに大好きになった。

彼は不器用で自分の本当の気持ちを相手に伝えるのが苦手な人だった。
不器用だから本当はすごく優しいのに悪い人に見える。
だから、喧嘩をしても黙り込み「時間が経てばおさまるから。」といってすぐに喧嘩をやめてしまう。
仕事で辛い事があっても顔には出すけど、聞いても絶対に話さない。

幼かった私にはすごく不満だった。
「私はなんの為に側にいるの？」
喧嘩するといつもそう言っていた気がする。
今ならもしかしたら彼の黙ってしまう気持ちを理解する事ができるかもしれない。

そして彼はいつも口ぐせのように言ってた。
「俺は親に愛してもらえなかった。」
私はそういう風に感じた事がないから彼の言葉も気持ちもわからなかった。
それどころか、「そうかな？子供を愛さない親なんていないよ。それぞれ愛の形も表し方も違うし。」と言ってしまった。
もしかしたら私の言葉で彼を傷つけてしまったかもしれない。
彼は本当に愛されいなかったのかも知れないし、その気持ちを今、一番近くにいる私に彼の心にある傷に気づいて欲しかったのかもしれない。
そして、誰よりも愛して欲しいと心が叫んでいたのかもしれない。
だとしたら、きっと私の言葉は彼にとっては悲しい言葉でしかなかったと反省している。



私にとって彼の隣は居心地がよかった。
彼のわがままな所も自分勝手な所も私にとっては居場所だった。
彼の為にする洗濯も料理もお風呂掃除も買い物も、全部私には素敵な時間だった。
彼の為に何かをする事で彼に必要とされていると感じていた。
あの頃の何もない私にとって彼が全てだった。