オレの最近の悩みは、好きな人に好きだと伝えても本気にされないことだ。

全身全霊で愛を伝えているつもりなのに、どうしたことか、全く相手に届いていない様なのだ。


「何度見てもカッコいいっス!」


懲りずに誠凛高校へと来ていたオレは、想い人が決めるダンクシュートを

目を輝かせながら見詰めていた。


青峰っちのダンクもすげぇカッコいいけど、火神っちのダンクの方がオレは好きっス。

何つーか、見てるだけでムラムラするんスよね。


「何、ニヤニヤしてるんですか。気持ち悪いので帰ってもらっていいですか」


「うわっ!く、黒子っち!?」


先程まで練習試合をしていた黒子っちが目の前にいた。

黒子っちのミスディレで驚かされるのは今に始まったことじゃないから、

敢えてツッコまないことにする。


つか、黒子っちにミスディレ止めてって言ったところであんま意味ないし。


「部活はどうしたんですか?もしかしてサボった訳じゃないですよね?自分なら練習しなくても大丈夫とか思ってるんですか?全く、どこのガングロですか君は」


何故かイライラした様子の黒子っちが一気に捲し立てるのを 「ちょ、ちょっと待つっス!」 と、遮った。


「今日はこの近くでモデルの撮影があったから、早めに部活切り上げてきたんスよ!だから、サボりじゃないっス!」


そもそもオレが部活をサボるなんて有り得ない。

それが黒子っちにも分かったのか 「・・・そうですか。すみません」 と言って、口を閉ざしてしまった。


どうやら今日の黒子っちは機嫌がすこぶる悪いみたいだ。

考えられる原因は火神っちが青峰っちの二人だけど、多分火神っちじゃない。

二人のプレーを見ていれば分かる。となると、残るは一人。


「青峰っちと何かあったんスか?」


「何もなかったですし、そんなこと黄瀬君には関係ないです」


・・・確実になんかあったんスね。

大方、青峰っちが黒子っちに無神経なこと言ったりしたりしたに違いないっス。


「ボクのことはいいとして、今日も懲りずに火神君に会いに来たんですか」


自分達のことにあまり首を出されたくないのか、黒子っちに話題を変えられた。

オレが何を言っても、黒子っちも青峰っちも全然聞く耳持ってくれねーから、部外者は黙ってますよーだ。


「そーっスよ!今日の火神っちもすげぇカッコよかったっス。あのダンクコピってみようかなー」


オレがそう言った瞬間 「すんじゃねーよ」 と、首に掛けたタオルで流れる汗を拭きながら火神っちがオレ達のところにやって来た。


「あっ、火神っちお疲れっス!今日もすげぇカッコよかったっスよー!惚れ直したっス!」


「わ、分かったから!いちいち抱き付いてくんじゃねーよっ!」


火神っちの登場に、嬉しさを我慢出来なくなったオレは、火神っちの首に腕を絡めて思いきり抱き付き、ついでに頬ずりまでする始末だ。


あ・・・、どうしよう・・・


火神っちの汗の臭いを嗅いだ瞬間、思わずムラっとしてしまった。

健全で素直なオレの下半身が言い訳が通用しない状態になっちゃう前にと、火神っちから離れる。

幸い、火神っちには気付かれていない様で安心した。


「お前ヒマな訳?いっつも顔出しに来やがってよ」


うんざりといった表情で火神っちがそんな事いうから 「ヒマな訳じゃないっスよ。オレだって毎日汗水垂らして部活頑張ってるし、モデルの仕事だって手ェ抜いてない。正直言って、ヘトヘトっスよ?」 と、数センチ上の火神っちを上目遣いで見る。


「だったら、わざわざこんなとこまで来なくてもいいだろ」


「分かってないなぁ、火神っちは。疲れてるからこそ、火神っちに会いに来てるんじゃないっスか」


どういう意味だよと言う火神っちの腕に自分の腕を絡める。


「ほら、アレっスよ。好きな人の顔見たら疲れも吹っ飛ぶっていう――痛っ!ちょっ、火神っち痛いっスよ!」


話の途中で火神っちに思いきり二の腕を抓られ、オレは涙目で抗議する。

地味に痛いからマジで止めて欲しい。


「ふざけるのも大概にしろよ。お前の 『好き』 は信用ならねーって何回言えば気ィ済むんだよ」


急に真面目な顔になって、オレの腕を振り払った火神っちはそのまま踵を返してしまう。

オレは慌てて 「ちょっと待って下さいっス!」 と、火神っちの手首を掴んだ。


どうして。どうして。と思う。


どうしていつも、オレの気持ちは伝わらないんっスか。


「・・・今日、火神っちの家に泊まっていいっスか?」


今すぐ伝えたい言葉を呑み込んで、いつもの笑顔を浮かべて、火神っちに問い掛ける。

そんなオレの些細な変化を感じ取った火神っちは 「好きにしろ」 と言って、足早に練習に戻って行った。


「ねぇ、黒子っち」


正直途中から黒子っちがいるのかいないのか曖昧になってたけど、多分気配がしないだけで傍にいるんだろうと思いながら声を掛けると 「何ですか」 と返って来てちょっとホッとした。


「オレ、ふざけてる様に見える?」


「その質問に答える前に、ボクの質問に答えてもらっていいですか?」


「いいっスよ。何っスか?」


「ボクと青峰君の事、好きですか?」


黒子っちが真面目な顔をするから重大なことでも訊かれるのかと思ってたら、

オレにとって至極当然で、既に答えが決まっていると言ってもいい質問に、逆に驚きながらも 「好きっス」 と答える。


「火神君の事は?」


これまた当然のことを訊かれ、オレは同じ様に答えた。


「勿論、好きっスよ」


そう答えた瞬間、黒子っちに 「火神君が怒るのも分かる気がします」 と、大きな溜息をつかれてしまった。


「どういう意味っスか!オレ、何か変なことでも言ったっスか!?」


「それはボクからは言えません。何とか自分で気付くか、火神君にでも訊いて下さい。それじゃボクは練習に戻るので」


黒子っちはそう言って、何の事だか全く理解していないオレを置いてさっさと練習に戻ってしまった。


せめて、ヒントくらいくれたっていいじゃないっスか。

黒子っちはオレに冷たすぎるんっスよ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



特に会話を交わさず火神っちと肩を並べて歩く。

火神っちの右手には中身が沢山詰まったスーパーの袋がぶら下がっている。


一緒に帰っていた黒子っちと途中で別れた後 「今晩、何か食いたいもんでもあるか?」 と火神っちに訊かれ 「ハンバーグが食いたいっス」 とオレが答えると、ひき肉あったか?とかブツブツ独り言を言ってから 「スーパー寄るからな」 と言って、信じられない量のひき肉を買って来た火神っちに驚いた。

多分、その殆どが火神っちの胃袋に収まるんだろう。


火神っちの胃袋、一体どうなってんスかね。

ブラックホール並みっスよ、全く。


「メシ作るから、お前はテレビ見るなりテキトーに待ってろよ」


部屋に着くと、火神っちはささっと着替えてエプロンをつけながらキッチンへと向かう。

オレはそんな火神っちを見送った後、リビングにあるローテーブルの前に腰を下ろした。

対面型のキッチンだから、料理を作っている火神っちがよく見えて、何だかニヤニヤする。


火神っちがオレのためにハンバーグ作ってくれるとか、ちょー嬉しいんスけど!

しかも何なんスか、エプロンって!アンタそんなタイプじゃないっしょ!


・・・でも何かいいっスね。

エプロンつけた後ろ姿って、オレ的にはツボっス。


オレは立ち上がりゆっくりと火神っちに近付き、ズボンのポケットからスマホを取り出しカメラを起動させてシャッターボタンを押す。その一連の動作をほぼ無意識でやってしまうほど、オレは今の火神っちに夢中になっていた。


「・・・おい、黄瀬。テキトーにしてろとは言ったけど、誰も盗撮しろとは言ってねぇぞ!」


「痛っ!」


流石に何度も背後から聞こえるシャッター音に気が付いたらしい火神っちが振り返り、

手に持っていたお玉でオレの頭を叩いた。


「油断も隙もねーヤツだな。今すぐ止めねぇとメシ抜きにすっからな」


「そ、それは困るっス!」


火神っちの手料理がどうしても食べたいオレは、火神っちの言いつけ通りスマホをズボンのポケットに直し、今度こそ大人しく待つことにした。


隠し撮りが出来ない分ずっと火神っちを見詰めていると 「何、ニヤニヤしてんだよ」 と、目が合った火神っちに言われ 「なーんでもないっスよ」 と笑顔を返す。


言える訳がなかった。

言っても信じてもらえない。


オレは、火神っちがスゲー好きなんだなってことを、改めて思い知ったとかさ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



晩ご飯を食べ終わった後、大して面白くないバラエティー番組を二人で見た。

このお笑いコンビのネタは今一だとか、そんな他愛ない会話を交わす。

会話と言っても、帰国子女の火神っちには笑いのツボが理解出来ないらしくて、殆どオレの言葉に相槌を打ってただけだけど。


「先、風呂使えよ」


テレビの電源をオフった火神っちが、今着替え用意すっからと立ち上がるのを

火神っちの袖を掴んで制した。


ちゃんと伝えなきゃいけない。

伝えて、それでも信じてもらえなかったらかなり凹むけど・・・

どうして信じてもらえないのか、その理由が知りたいっス。


「・・・火神っち。オレ、火神っちのこと好きっス」


伏せていた顔を上げて、ありったけの想いを込めて真っ直ぐ火神っちの赤い瞳を見詰める。


嘘じゃないしふざけてもいない。

それを分かって欲しくて真剣に想いを伝えたのに、フイッと火神っちに目を逸らされてしまった。


「何でなんっスか!」


思わず声を張り上げてしまった。

こんな風に怒鳴ったのは凄く久しぶりだ。


もう我慢なんて出来ないっス。


「何で信じてもらえないんっスか!オレ、真剣に言ってんスよ!?火神っちなら、オレが本気なことくらい、分かるっスよね!?」


火神っちの袖から手を離し、今度は火神っちの肩口に触れるのと同時に後へと倒し、火神っちの上に馬乗りになった。火神っちは驚いたように目を瞠って、今にも泣き出しそうなオレを見上げていた。


「・・・・・・分かってる、けど・・・」


ボソッと火神っちが言う。


「だったら何で・・・っ!!」


信じてくれないんっスか。何で本気でオレに向き合ってくれないんっスか。

何で前みたいに笑いかけてくれなくなったんっスか!


溢れ出して来る火神っちへの想いに、遂に涙が零れてしまった。

ポロポロと零れる涙が、火神っちの頬に落ちて流れて行く。


好きな人に告白して断られるのはまだいい。

悲しいけどしょうがない。時間は必要だけど、諦めだってつく。


でも、好きな相手に自分の気持ちを否定されるのだけは、我慢出来ないっス。


「・・・・・お前、黒子と青峰のこと好きだろ・・・?」


ややあって、悲しそうな表情をした火神っちが問い掛けてきた。

それは黒子っちにも訊かれたことだった。


二人揃って何なんっスか。


「好きっスよ。それがどうしたんっスか?」


手の甲で涙を拭いながらオレがそう答えると、火神っちは傷ついた表情をしてフッと目を伏せてしまった。


オレには分からなかった。

火神っちが傷つく理由が。


「・・・オレには、同じに聞こえるんだよ。お前のオレに対する 『好き』 と黒子や青峰に対する 『好き』 がな。だから、オレは信じられなかったんだよ。オレに好きだって言っておいて、黒子や青峰に対する態度と同じように接して来て、オレは別にお前の 『特別』 じゃないんだなって思ったら、すげぇムカついて・・・」


だからお前に辛く当ったんだと、火神っちが語ってくれた。


確かに、黒子っちと青峰っちのことは好きっス。

黒子っちは尊敬、青峰っちには憧れ。二人に対しては、そういう感情を持っている。

持っているだけじゃなくて、態度でも言葉でも二人に伝えていて、それが火神っちを不安にさせていたんだろうか。


オレは、オレなりに火神っちに気持ちを伝えてきた。

だけど 『つもり』 になっていたのかも知れない。

火神っちなら分かってくれるって。


「火神っち、ごめん・・・っ。オレ、無神経だったっスよねっ」


また涙がポロポロと零れた。

これ以上情けない顔を火神っちに見せたくなくて、火神っちの胸に額を押し付け顔を隠した。


「でも、分かって欲しいっス。火神っちは、オレにとって 『特別』 で 『大切』 な人なんスよ・・・!好きで好きで堪らないんっス!」


「黄瀬・・・」


火神っちがオレの名前を呟く。

そして、そっとオレの背中に腕を回して来て、ぎゅっとオレを抱き締めよしよしと頭を撫でてくれる。


ややあって、火神っちにそっと優しく身体を離され 「モデルのクセにひでぇ顔しやがって。ファンに笑われるぞ」 と、顔を覗き込まれてクスっと笑われた。


「そ、そんなことないっスよ。オレは泣いたって、鼻水垂らしてたって男前なんスから・・・!」


言って、拳で火神っちの胸を叩こうとしたけど、火神っちの大きな手が右頬に触れた瞬間力が抜けてポスっと情けない音がしただけで終わってしまった。


「か、火神っち・・・?」


「信じるから。お前の気持ち」


そう言って微笑んでくれた火神っちに、うっかりトキメいてしまった。


「火神っち大好きっス!」


額や頬を火神っちの首筋にグリグリと押し当てると 「くすぐってぇから止めろって!」 と身体を押し返され、ふと目が合う。赤い瞳を見詰めても、もう逸らされることはない。


どんどん赤い瞳が近づいて来て、近いな、と思った瞬間、生温かくて柔らかいものが唇に押し当てられた。


き、キス・・・!?


火神っちにキスされてるって気付いた途端に、カァっと顔が赤くなったのが自分でも分かる。


「お前ホント、素直だな」


オレの下半身の変化に気付いたらしい火神っちが苦笑する。

その表情でさえ、オレの胸の高鳴りを強くさせる。


「か、火神っちが悪いんじゃないっスか!・・・・・・んっ」


火神っちの胸の上から起き上がろうと身を捩った拍子に、反応し始めていたオレの息子が火神っちの腰に当たっちゃって、うっかり変な声を洩らしてしまった。


チラッと火神っちを盗み見すると、ちょっと驚いた顔をしてたけど次の瞬間にはニタァと笑われる。

何かいやらしいイタズラでも思い付いた様な笑い方だ。


・・・今なら羞恥で死ねるっスよ!


「も、もう止めて欲しいっス・・・!」


オレの反応が面白いのか、火神っちはグイグイとオレの下半身に腰を当ててくる。


火神っちがこういうことを積極的に仕掛けてくるタイプだとは思わなかったっス!

本当はオレからグイグイ攻めていこうって思ってたのにっ。


こ、こんなの・・・嬉しい誤算っスよ!


で、でも恥ずかしいっス・・・。


羞恥のあまり目に涙を浮かべ 「火神っち・・・、オレ・・・っ」 と言って火神っちを見詰めると、急に腰の動きが止まり、そして火神っちはそっとオレを押し退け起き上がると 「風呂、入って来るわ」 と言って、足早にリビングから出て行ってしまった。


チラッと見えた火神っちの耳が凄く赤かったような・・・。


「そりゃないっスよ、火神っちぃぃぃぃぃぃいっ!」


そりゃ止めて欲しいとは言ったけど、こんな状態で放り出すとかヒドすぎっス!


風呂から上がって来たら仕返ししてやると、オレは密かに拳を握り締めたのだった。





                                               END





*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



火黄を書いてたのに途中黄火みたいな感じになって

また火黄に戻った感じがしました(笑


シリアスっぽいの書こうとしたのに

黄瀬君のアホわんこな性格のせいでシリアス感が薄いorz


タイトルもね・・・。

何も浮かばなかったので、黄瀬君の最後の叫びをチョイスしましたw


そして心残りが、かがみんをカッコ良く書けなかったこと。。。


今度はもっと頑張る・・・っ!



でゎでゎ、読んで下さった方ありがとうございましたm(_ _ )m