~黒子side~



(火神君・・・)


火神との待ち合わせ場所へとやって来た黒子は、辺りを行き交う人達より頭一つ分かそれ以上の身長を持つ火神を迷いなく見付けた。英語のロゴ入りTシャツとジーパンというシンプルな服装だが、よく火神に似合っている。

元々恵まれた体格をしているのだから、何を着ても似合うだろうと思う。


待ち合わせ場所で一人待つ火神は、そわそわしていて落ち着きがない。

明らかに緊張している様子だ。


(ボクと一緒ですね)


黒子はクスッと笑って火神に近付き、いつもの様に声を掛けた。


「お待たせしました、火神君」


「うわっ!」


派手に驚いて見せた火神は 「もっと普通に声掛けられねーのかよ!」 と、怒鳴りながらこちらに振り向いた。


黒子にとっては普通に声を掛けたつもりなので、、そこまで怒鳴らなくても・・・と思う。

火神には悪いが、こればっかりは我慢してもらうしかない。


「・・・で?まずはどこに行く?」


「そうですねぇ。取り敢えず、目的のバッシュを見に行きますか?」


「そうだな」


黒子は火神と肩を並べて歩き出し、そっと彼の手に自分の手を絡めた。

黒子にしては大胆な行動に 「な、何だよ」 と、火神は驚き半分照れ半分な顔を黒子に見せる。


「大丈夫ですよ。他の人には見えていないと思いますから。それに、この方がデートっぽいですし」


「そ、そうだな」


ほんの少し頬を赤くした火神が頷いて、ぎゅっと黒子の手を優しく握り返してくれる。


(こういう事ですよね?黄瀬君)


黒子はこの場にいない黄瀬に問い掛けた。


『黒子っちからアプローチした方がいいっスよ!』


そう黄瀬にアドバイスされ、それを今日実践してみたのだった。


あの日、黄瀬から好きだと告白された。

彼が自分に好意を寄せている事など、言われるまでもなく知っていた。


だから、辛かった。


仕草や行動から――本人は無自覚だが――好きだと伝えられる度に、

それに応える事の出来ない現実に。


黄瀬の方も黒子に断れる事を分かっていたのか、思っていたよりもあっさりと納得してくれた。

あの時、黄瀬が無理矢理笑顔を作っていた事に黒子は気付いていて、何も言えなかった。


ありがとう、と一言伝えたかったのに。


それだけが、心残りだ。


チラッと隣を歩く火神を盗み見すると 「自然体・・・自然体だぞ、オレっ」 などと、

何やら自分を鼓舞する様にブツブツ呟いている。


「火神君。さっきから何ブツブツ言ってるんですか?」


首を傾げながら火神を見上げる。


「な、何でもねーよ。それよりお前、どこのメーカーのバッシュ使ってんだ?」


火神のクセに誤魔化した、と多少ムッとしたが折角のデートをぶち壊したくはないので我慢する事にし

「○○○のですけど・・・」 と、素直に質問に答えた。


「おっ、マジで?オレ気になってたんだよなー、そこのバッシュ」


「確か、新しいデザインのものが発売されるとか聞きましたけど」


「そりゃ気になるな」


ニカッと白い歯を見せながら笑い、小さな子供の様にワクワクした表情を見せる火神が可愛く思えて、何だか微笑ましい。それが顔に出ていたのか 「何笑ってんだよ」 と、手を繋いでいない方の手でわしゃわしゃと少し乱暴に頭を撫で回された。


(何かいいな・・・)


デートらしい甘い雰囲気など全くないけれど、ただこうやって二人で手を手を繋いで他愛ない話をしているだけで、

凄く楽しくて幸せだ。


この時間がずっと続けばいいのに、と黒子はそう思った。