【恋模様】~黄瀬side~
「黒子っちまだっスかね~」
モデルの仕事を終わらせた黄瀬涼太は、二度目となる誠凛高校へと訪れていた。
この前来た時はじっくりと観察する暇がなかったが、元チームメイトが通うこの学校は新設校のため、
かなり綺麗な外観をしている。
もう日が傾いてきているのにも拘わらず、グラウンドからは野球やサッカー部、
陸上部の部員達らしき掛け声が聞こえてくる。
黄瀬は校門前で落ち着きなくうろうろしながら、ひっそりと想いを寄せている――隠せていると思っているのは本人だけだが――相手を今か今かと待ち続けていた。
一度来た事があるのだから体育館の場所は分かっているのだが、何のアポもなく練習中に顔を出すのは迷惑がかかる。前回の事で多少は学習しているのだ。
「あ!」
ガヤガヤと体育館のある方から人の声が聞こえてきて何気なく目を遣ると、
見知った連中がぞろぞろとこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。
必死で待ち人を探すが、見付からない。
ちゃんといる筈なのに、見付からない。
やっと会えると綻んだ顔が、一気に暗くなる。
影が薄いにも程があるってもんだろう。
「黄瀬!?何でテメェがここにいんだよっ」
いち早く黄瀬の姿を見付けた火神が、露骨に嫌そうな顔をする。
「モデルの仕事がこの近くであったんで、ちょっと寄ってみただけっスよ」
「そんな事言って、本当は偵察しに来たんじゃねーだろーな?」
グイっと詰め寄られて 「そ、そんなんじゃないっスよ~」 と、身をかわす。
どうして自分はこうも彼に嫌われているのだろうか。
「あ、そうだ。火神っち、黒子っちは一緒じゃないんっスか?」
そう訊いた瞬間だった。
「ボクはここにいますけど」
急に声が聞こえてきて、今まで視界にいなかった人物が急に目に入った瞬間 「うわあぁぁ!」と、黄瀬は後ろへ飛び退る。
その横で火神も同じリアクションをとっていた。
「く、黒子っち!?一体、いつからそこにいたんっスか!?」
「火神君と最初からいましたよ。っていうか、何で火神君まで驚いてるんですか」
ぷくっと可愛らしく――本人にはその自覚はないが――頬を膨らませた黒子が、火神を見上げている。
羨ましい。羨ましすぎる。
黒子にそんな風に見上げられるなんて。
もし自分が今、火神の立場だったら、
(絶対抱き締めてる・・・っ!!)
火神も黄瀬と同じ気持ちなのか、彼の腕が自分を見上げる黒子へと伸ばされ掛けている。
これは危ないと思った黄瀬は 「黒子っちに話があるんスけど、ちょっといいっスか?」 と、
二人の間に暴飲に割って入った。
勿論、火神に文句を言われるが、そんなのは無視だ。
黒子がちらっと火神を見たのを、黄瀬は見逃さない。
チクっと胸が痛んだが 「じゃあ、この前三人でバスケした公園に行かないっスか?」 と、精一杯の笑顔を張り付けて黒子の細い手首を掴んで歩き出す。
「お、おい!」
後ろで火神の声がするが追い掛けては来ない様子なので、黄瀬はそのまま黒子の手首を掴んだまま公園へと向かった。
続く。