行為の後、黙ったまま布団の中で緩く抱き合った。

激しかったさっきまでの時間が嘘みたいに、穏やかな時間だ。


言いたい事がいっぱいあるような気もするんだけど、それと同時に何も言わなくてもいいような気もしてる。身体だけじゃなくて、心の奥まで触れ合う事が出来たから、今は言葉は要らない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「真実と彼の意外な趣味」



「身体、平気?」


さり気なく訊かれて、「平気に決まってんだろ」 とちょっと強がる。


ホントはまだ異物感が残ってて、もぞもぞ変な感じもするけど―――でもそれは、そんなに嫌な感じじゃない。春樹との行為のせいなんだと思うと、悪いものじゃないと思える。


「あ、そうだ。誕生日プレゼント何がいい?渡すのちょっと遅くなっちゃうけど・・・」


俺がそう訊くと、春樹はふっと幸せそうに笑みを浮かべた。


「もう貰った」


その言葉の意味を理解した瞬間、カァっと頬が熱くなった。


それって、つまり、俺自身がプレゼントって事だよな・・・?


「は、早く市原も呼んでお祝いやろーぜ!」


恥ずかしさのあまり、俺は話題を変えた。


ホントは二人で誕生日を過ごすつもりだったけど、これ以上春樹と一緒にいたら恥ずかしくて死にそうだ。


まだ、市原に揶揄される方がマシってもんだ。


「ど、どうせ部屋にいるんだろ?呼びに行くぞっ」


流石に彼とああいう事をするとまでは考えていなかったけれど、春樹の家に上がり込んだ時から覚悟は出来ていた。


市原はインドアなヤツで、休みの日は大概家にいる。

玄関に入った時視界の端で彼の靴をちゃんと捉えていたし、今、この瞬間、彼が自分の部屋にいる事は間違いないのだ。


そう。俺が来る前からずっと。


(アイツの部屋って、確か・・・隣、だったよな・・・?)


掌にじっとりと汗をかく。


後ろに春樹を従えて市原の部屋の前に立つ。

そろりとドアノブに手を伸ばし、掴んだそれをゆっくりと回した。


「やぁ。おめでと、二人とも」


俺達が部屋に入ると、気持ち悪いくらいの笑顔をした市原が俺達を見上げた。


「春は・・・二重の意味でおめでとう、だね」


ニコッと笑いかける市原に、「ありがとう」 と少し照れた春樹が答えた。


俺が覚悟してたっていう理由はこの事だ。

全部聞かれていただろう事は彼の表情を見れば一目瞭然なので、彼を直視出来ない。


そっと目を伏せると、思いがけないものが目に飛び込んできた。


「ちょっ、これ・・・!」


俺は慌てて腰を下ろして、テーブルの上に並べられた写真を手に取った。


―――写真。


春樹と佐原も持っていた、俺がメインで写った写真だ。

それが何枚もテーブルの上に並んでいる。


「よく撮れてるでしょ?」


ニコニコ笑う市原に、嫌な感じがする。


よく考えてみると、彼は写真部だったのを思い出した。

どうしてこの事に早く気付かなかったのだろうか。


「お、お前なのか?これ撮ったの」


違うと言ってくれ。


そう一縷の願いを胸に、彼に問いかける。


「そうだよ。羽柴って自分では自覚ないようだけど、かなり可愛いんだよ?だから、勝手に被写体にさせてもらったんだよねー。あ、勿論、春の了承得てるから。春ってば羽柴の事となると怖いからさ」


て事は、春樹は知ってたって事なのか?


そういえば、誰に貰ったんだって訊いた時 「写真部のヤツに」 って言ってたっけ。


「実はさ、僕、可愛いものがすっごく好きなんだよね!」


宣言されてからよく部屋を見渡してみると、かなりファンシーなものがあちこちに置かれていた。


フリル付きの洋服を着たクマとウサギのぬいぐるみとか、女の子が好きそうなキャラクターのグッズまであって、全てが俺に向かって可愛い笑顔を浮かべている。


「お、お前・・・」


サァーっと俺の中で何かが冷めていくのが分かった。


「・・・春樹。行こう、やっぱり二人で祝おうぜ」


春樹の腕を掴んで、何も言う事はないと市原の部屋から出た。


勝手に写真撮ってた事とか怒ってやろうと思ってたのに、いっきにその気が削がれてしまった。まさか自分の親友が少女趣味だったなんて、暫くは受け入れるのに時間がかかりそうだ。






                              END