行為の後、黙ったまま布団の中で緩く抱き合った。
激しかったさっきまでの時間が嘘みたいに、穏やかな時間だ。
言いたい事がいっぱいあるような気もするんだけど、それと同時に何も言わなくてもいいような気もしてる。身体だけじゃなくて、心の奥まで触れ合う事が出来たから、今は言葉は要らない。
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「真実と彼の意外な趣味」
「身体、平気?」
さり気なく訊かれて、「平気に決まってんだろ」 とちょっと強がる。
ホントはまだ異物感が残ってて、もぞもぞ変な感じもするけど―――でもそれは、そんなに嫌な感じじゃない。春樹との行為のせいなんだと思うと、悪いものじゃないと思える。
「あ、そうだ。誕生日プレゼント何がいい?渡すのちょっと遅くなっちゃうけど・・・」
俺がそう訊くと、春樹はふっと幸せそうに笑みを浮かべた。
「もう貰った」
その言葉の意味を理解した瞬間、カァっと頬が熱くなった。
それって、つまり、俺自身がプレゼントって事だよな・・・?
「は、早く市原も呼んでお祝いやろーぜ!」
恥ずかしさのあまり、俺は話題を変えた。
ホントは二人で誕生日を過ごすつもりだったけど、これ以上春樹と一緒にいたら恥ずかしくて死にそうだ。
まだ、市原に揶揄される方がマシってもんだ。
「ど、どうせ部屋にいるんだろ?呼びに行くぞっ」
流石に彼とああいう事をするとまでは考えていなかったけれど、春樹の家に上がり込んだ時から覚悟は出来ていた。
市原はインドアなヤツで、休みの日は大概家にいる。
玄関に入った時視界の端で彼の靴をちゃんと捉えていたし、今、この瞬間、彼が自分の部屋にいる事は間違いないのだ。
そう。俺が来る前からずっと。
(アイツの部屋って、確か・・・隣、だったよな・・・?)
掌にじっとりと汗をかく。
後ろに春樹を従えて市原の部屋の前に立つ。
そろりとドアノブに手を伸ばし、掴んだそれをゆっくりと回した。
「やぁ。おめでと、二人とも」
俺達が部屋に入ると、気持ち悪いくらいの笑顔をした市原が俺達を見上げた。
「春は・・・二重の意味でおめでとう、だね」
ニコッと笑いかける市原に、「ありがとう」 と少し照れた春樹が答えた。
俺が覚悟してたっていう理由はこの事だ。
全部聞かれていただろう事は彼の表情を見れば一目瞭然なので、彼を直視出来ない。
そっと目を伏せると、思いがけないものが目に飛び込んできた。
「ちょっ、これ・・・!」
俺は慌てて腰を下ろして、テーブルの上に並べられた写真を手に取った。
―――写真。
春樹と佐原も持っていた、俺がメインで写った写真だ。
それが何枚もテーブルの上に並んでいる。
「よく撮れてるでしょ?」
ニコニコ笑う市原に、嫌な感じがする。
よく考えてみると、彼は写真部だったのを思い出した。
どうしてこの事に早く気付かなかったのだろうか。
「お、お前なのか?これ撮ったの」
違うと言ってくれ。
そう一縷の願いを胸に、彼に問いかける。
「そうだよ。羽柴って自分では自覚ないようだけど、かなり可愛いんだよ?だから、勝手に被写体にさせてもらったんだよねー。あ、勿論、春の了承得てるから。春ってば羽柴の事となると怖いからさ」
て事は、春樹は知ってたって事なのか?
そういえば、誰に貰ったんだって訊いた時 「写真部のヤツに」 って言ってたっけ。
「実はさ、僕、可愛いものがすっごく好きなんだよね!」
宣言されてからよく部屋を見渡してみると、かなりファンシーなものがあちこちに置かれていた。
フリル付きの洋服を着たクマとウサギのぬいぐるみとか、女の子が好きそうなキャラクターのグッズまであって、全てが俺に向かって可愛い笑顔を浮かべている。
「お、お前・・・」
サァーっと俺の中で何かが冷めていくのが分かった。
「・・・春樹。行こう、やっぱり二人で祝おうぜ」
春樹の腕を掴んで、何も言う事はないと市原の部屋から出た。
勝手に写真撮ってた事とか怒ってやろうと思ってたのに、いっきにその気が削がれてしまった。まさか自分の親友が少女趣味だったなんて、暫くは受け入れるのに時間がかかりそうだ。
END