エミから電話が鳴る
「もしもし~」
「ゆうちゃん!事件だよー!」
「…どうしたの?」
「いいから早く帰ってきてー!」
「…はぁい」
…
エミの話は
たいてい
主語がない
というか
主語から話し始めないから
話を最後まで聞かないと
話の筋がまったく読めない
常に何事も
結果から知りたい俺にとっては
まず主語だ
雑誌も
最後のページから読む俺にとっては
最後まで話が見えない
エミの話は
いつもイライラするんだ
今回の話で言うなら
「OOOという事件です」
と
話し始める前に
説明してほしいわけだ
でも事件と言っても
エミの口調から察するに
何かサプライズ的な
例えば俺が
「何、何?事件って何さ~??早く教えて~」
って聞いて欲しいような
そんなような口調だったから
その手には乗らんとばかりに
あえて先に何が起こったかは聞かずに
「すぐ行くよ」
とだけ言って電話を切った
めんどくせ~な~
仕事途中なのにな~
なんてちょっとライライしながら
家に帰った
そして
ドアを開けて靴を脱ごうとすると
?
何やら靴の横に落ちている
何だコレ?
拾い上げてみると
髪の毛だった
!?
顔をあげ
トイレの方に目をやった
すると…
ここですべてが分かった
恐る恐る
中に入ると
散乱する
髪の毛とハサミ
部屋と髪の毛とハサミ~
そんなことは
どうでもいい
そして慌てて居間に行くと
エミが愕然としている
ヒナツはいない
「どうしたの!?」
エミが答える
「目を離してる隙に、自分で髪の毛バッサリ切っちゃった…」
「マジで…」
ヒナツを探す
いた!
ソファーの裏で
頭を布団で隠しながら
大泣きしている
「ひな!ダディーにお顔見せてごらん!!」
「やだー!!」
大泣きだ
とてもやっかいな展開
それでも無理やり
布団を引っ張る
顔が見えた!
おうっ!!
えらいこっちゃ!
ずいぶん前に流行った
ウルフカットになっているではないか!
しかも
右と左で
左右非対称
通称
「アシンメトリー」ってやつだ
オーメ~ン…
聞くところによると
エミが美容師時代に使っていたハサミを
自分で取り出して
鏡も見ずに
自分でカットしてしまったらしい…
3歳からサーフィンを始める子供
3歳からピアノを弾き始める子供
3歳から自分で髪の毛をばっさりウルフカットのする子供
この写真はぼちぼちイケてるけど
左からの角度はとてもお見せできません
でもね
写真でも分かる通り
3歳児が
自分で切ったわりには
そこまでひどくない
というか
3歳児が切ったにしては
むしろ上出来
でももし仮に
お母さんが切ったのだとしたら
残念
って
ぐらいの出来
だからなおさら
痛い
周りの人から見ると
「ねぇあの子、なんかちょっと髪型変じゃない?お母さんが切ったのかしら?だとしたらちょっと下手よね~」
って思われてしまうであろう
なもんだから
いちいちみんなに
「ヒナツが自分で切っちゃってさぁ~」
と説明しなければならない
とても面倒だ
それにしても
うちの子
変わってるなぁ…
ヒナが聞いてきた
「お風呂入ったら髪の毛伸びる?」
…
いや
伸びないよ


