東京ビックサイトで開催された、ビジネスショウTOKYOの「女性起業家は、中小企業をどこまで支援できるか?~ブログ、SNS、PDAの利用をはじめ、各種のノウハウを大公開~」というオープンセミナーにパネリストとして参加した。
モデレーターは「渋谷ではたらく女社長」の伊藤淳子さん、パネリストは「府中」の傍嶋恵子さん、「板橋」の森田直子さんと「大田区」の私。それぞれが地域を冠言葉にブログを書いているのも共通点だ。それから飛び入り参加で、元・富士通のGW-NETというパソコン通信全盛時に、女性起業家ネットを仕掛けた横堀さん。
 伊藤さんは長年メディアの世界にいる人間だけに、パソコン通信時代のフォーラムに現在のSNSのルーツを見る、といった論旨の展開がユニーク。また農ビジネスの地域発信にも情熱を燃やしているので、山形や五島列島の現場の状況を紹介。
傍嶋さんは、テクニカルライターとしての経験が長く、書籍のインタビューなどを通して感じた、生活・仕事におけるブログ、SNS、PDAの活用の有益性を、保険ジャーナリストで板橋の女性起業家ネットワークの事務局をしている森田さんは、ブログやML活用による遠隔地における仕事の進め方を紹介。横堀さんは、長年のシステム開発の現場の経験から、現在のIT活用は昔とどう違うか、どういうスタンスをとったらよいか、というような話だった。
 私は、地域の産業施策、町のグランドデザインとしてのIT活用のスタンスで、大田区にまつわる話を紹介した。このブログでも何度も書いているが、大田区の中小製造業は最盛期9000社あったものが5000数社に激変している。もはや、淘汰は待ったなしだ。生き残りをかけるには、地域全体のデジタルデバイドを解消し、優れた技術力を、世界に向けて発信していかなければならない。この地域にいると、アジアの中の日本、世界の中の日本を考えざるをえない。その上でのデフェクトスタンダードとは何かを模索せざるをえないのだ。
 最後に、主催者側が招待したであろう、横浜の女性起業家の発言に違和感が残り、どうしてもひっかかった。主催者側が、彼女に自己紹介を促すと、こう言ったのだ。
「横浜で起業して1年になります。みなさんも一緒に上場を目指して頑張りましょう」云々。

は???

あなたのリソースは何で、何を目的に起業しているのですか? 自己紹介と言われて、業務内容も紹介せずに、なぜはじめに「上場ありき」なんですか?

 この彼女の発言に関しては、あとでパネリストの面々とお茶したときも、ひとしきり話題にのぼった。一言で言うと、「いるよね、ああいう起業家」。
 私はキャリア・コンサルタントの顔も持っていて、個人のキャリアデザインを支援する活動もしているが、一般的にいわれる「勝者」「敗者」の概念と、個人のキャリアデザインにおける位置づけは大きく違う。キャリアデザインにおける「勝者」とは、「個人が充実した人生を送るためのキャリアの選択」だ。
 上場をにらんで企業活動をするのも、大いに結構。ただし、個人の人生にとって、上場は決してゴールではない。そのためにどうするか。その先はどうするか。ぜひ、考えて欲しいと思う。