昨夜はいつもお世話になっている、区の役職者のお母様がお亡くなりになったので、お通夜にうかがった。その方は、4半世紀を区内の中小企業振興に東奔西走されてきた方だったので、会場にうかがうと地元の中小企業の社長がいるわ、いるわ。。。人徳ですね。お焼香が終わった後、何名かの社長とお話する機会を得た。そして話をうかがいながら、本当にこの地域は経営者と行政機関の結びつき(信頼関係)が強いなぁ、と改めて感じる。
ということで、本題。
私がなんで今回、タイに行くかという理由をちょっとまじめに話そう。もちろん区からのオープニングセレモニーへの出席要請&取材のためなんだけど、「行きたい!」理由はもっと別のところにある。
バブル経済崩壊。失われた10年。かつてさまざまな波を日本の中小製造業は受けてきた。その中で、メーカーの拠点が海外に移った、いわゆる「産業の空洞化」は今も尚、中小製造業に暗い影を落としている。中小零細すら、海外拠点を持たなければ、取引を解除する、と親会社のメーカーに言われる例も実は少なくない。しかしながら、経済的な問題で、それはなかなかかなわないことだった。
今回、大田区のタイ工場の中小製造業に対する入居斡旋 は、一部では「産業の空洞化をさらに促すのか」という批判もあるようだが、私はそれは違うと思う。まず入居条件が、区内で事業所を営む企業の拠点とする、ということにあるからだ。
海外で部品・機械・設備を提供する裾野産業(サポーティングインダストリー)を担う中小企業の育成は、これからの日本の産業経済を発展させるための鍵だ。そのために必要なインフラ、知財流出防止の一翼を行政機関がコーディネートすることによって担う。今後、こういう構図がどこの自治体でも必ず出てくる。その先駆けが「大田区モデル」というわけだ。
一方、農水産資源に恵まれているタイは、工業国というよりむしろ「アジアのライスボウル」といわれるほどの農業国の地位を確立していた。
しかし、現在、世界経済はグローバル化へと進んでいる。アメリカを中心とするNAFTA、統合を目指すEUという、超国家的結びつきが存在する世界経済において、タイが国際競争力を維持するためにはASEANといった地域的枠組みの中で捉える必要がある。
また、日本との二国間関係もタイの輸入構造から重要性が高い。その背景に、各国の通貨危機の拡大を阻止したいという大きな共通の利害の一致があったと思われる。日本からタイへの支援策としては、単なる資金援助だけでなく、高度な産業技術の移転、企業の進出による労働力の吸収、タイ製品の受け入れ、民活インフラへの協力などが挙げられる。
というわけで、サポーティングインダストリーの「大田区モデル」を見ていくと、世界経済がみえてくる。
リゾートでも、癒しでもなく、そういう視点で訪れてもいいのではないか。そしてそろそろ「女性の視点」云々(実はもうこの言葉には辟易している)よりも、もっと骨太に産業経済を語れる人間になりたいとも思う次第である。