芥川賞を受賞した阿部和重さんの「グランド・フィナーレ」を読みました。

現代人や現代社会の病巣といわれるロリコンとか児童ポルノ規制法とか、テロとか地方都市の開発、ドラッグや、子供のいじめ、自殺願望などを周辺に散らばせながら、基軸とする現代を描こうという作家の意欲が伝わってきました。

ロリコン趣味がばれて離婚され、仕事も最愛の娘も失ってしまった37歳の男、沢見の視点で全編描かれています。
彼は高校卒業とともに田舎を出て東京で生活してきたわけですが、、、。
田舎に帰ったという意味は18歳の自分に立ち返って生き直すという意味もあるだろうし、しかし、失ってしまった半分の人生は取り戻せないという、非常に残酷な意味も突きつけてきます。
後半に出現する、亜美と麻弥という二人の小学六年生の女の子との出会い。
彼女たちは、とても仲がいいのですが、その背後関係を知ると、周囲からの阻害もその要因になっていることが分かってきます。

ここで高揚する沢見の気持ちは、さながら今までの悪行の贖罪ともとられます。彼は今まで自分の行動が少女たちを傷つけてきたとは考えてもいなかった。そこに気付かされたときには、既にそれを贖う方法はありません。
そこで、この二人をその象徴と見立てることになるのでしょう。

結局は「今自分ができること」で少しでも他者の助けになればという希望的な状況がラストになっています。


ただねー、女性の目で読むととてもとても読後感が重いです。
少女の性を扱っているだけにね。。。