日本衰退の原因は株主至上主義 | 門前小僧、習わぬ今日を読む

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反グローバリズム、反新自由主義、反緊縮財政。
アイコン,ロゴ画面はイラストレーターtakaさんより。
takaさんの詳細情報はブログ画面にて。

結局ね、

賃金を上げなきゃ日本の衰退は止まらないんですよ。

 

国力の源泉である供給能力、

つまりモノやサービスを創り出す技術、知識、経験。

そういったものはどこに蓄積されるかって言ったら、

人間ですからね。

 

そして、それを発揮するのが労働力です。

 

データとかに知識や経験、技術も蓄積できるじゃん、

とかいう人もいるかもしれませんけど、

教科書読んでりゃ供給能力が高まるってんなら

世界中先進国だらけですよ。

 

結局それを扱う人間の中に技術や経験、知識が蓄積し、

それが労働力として発揮されることで、

初めて供給能力としてモノやサービスを生産できるんです。

 

日本が技術立国たりえたのも、

基本的に労働者の技術力によるところが大きい。

 

AIとかあるじゃん、

とかいう人もいるかもしれませんけど、

AIが人間の並みの仕事ができるようになるのに、

 

一体どれだけの時間と、

どれだけの金が掛かることか。

 

そう、掛かるのは時間だけではありません。

 

金が掛かるのです。

 

技術の革新には、投資が必要です。

ざっくり言えば、設備投資ですね。

 

当然、産業に直接かかわる設備投資は企業の役割ですが、

30年に渡る不況で、

日本の企業がどれだけの設備投資をやって来たんでしょうね?

 

 

 

上のグラフは、日銀の資金循環統計、

各経済主体(部門)の資金過不足を示したものです。

 

資金過不足とは、

 

各部門にどれだけの資金が余っているか、

どれだけの資金が不足しているかというのを示すものです。

 

グラフの上の部分(資金余剰)にあれば資産があることを示し、

グラフの下の部分(資金不足)にあれば負債があることを示すと考えてください。

 

グラフをご覧いただければ解りますが、

太い実線が家計、つまり我々個人や、個人事業主の資金。

点線が民間非金融法人企業、つまり金融機関以外の経済主体。

細い実線が一般政府、つまり日本政府。

点線は海外を示しています。

 

1997年以前において、民間非金融法人企業、

すなわち企業は、一貫して資金不足の状況にありました。

 

アレ?

1997年以前って、日本は景気が良かったんじゃないの?

何で資金不足?

 

とか思うかもしれませんが、実はこれが正しいのです。

 

要するに景気が良くて、

金を貯めこむ必要もなく、

売上をガンガン人件費含む経費に回しており、

設備投資のために銀行などからバンバンお金を借りていたから、

統計でみると資金不足(負債が多い)ということになるわけです。

 

負債が多いということは、

その分世の中にお金が出回っていたということですよね。

 

銀行融資は、

銀行の負債として預金通貨が発行されることによって

企業に資産が生まれるということですが、

 

その反対側で、企業は負債を背負うことになりますから、

統計上は企業は資金不足(負債を負うこと)になります。

 

そして1998年以降を見てみますと、

一貫して企業は資金余剰の状態になっています。

 

要するに、銀行からお金を借りず、

お金を貯めこむ体質になってしまっているということです。

グラフは2013年で途切れていますが、

それ以降、現在に至るまでこの傾向は続いています。

 

銀行融資というのは、手持ちのお金だけでは難しい投資、

例えば工場を建てる、設備を一新するなどの設備投資をする際に必要になりますが、

不況であるにもかかわらず企業が資金余剰の状態にあるということは、

少なくとも日本国内において、

設備投資はほとんど成されていないことを示しています。

 

こんなんで人間の労働に代わるAIとか、

出来るわけがないでしょう。

 

研究開発投資ってのは、

普通に工場を建てるとか設備を一新するより遥かに金が掛かる事業です。

 

こんなザマで

人間以上の技術労働力を持つAIなんて

開発できるわけがありません。

 

現実を見なきゃいけませんよね。

 

そして、

 

そのAIを開発するのは誰か

って話ですよ。

 

人間ですよね?

 

人間の労働者です。

投資家じゃありません。

 

そういった人たちに

十分な賃金も支払われずして、

何がAIかって話ですよ。

 

バカじゃねーの?

 

つまり、

 

日本が技術・経済立国として立ち行くためには、

何をおいても現状では、

賃金を増やさにゃならんわけですよ。

 

 

 

ざっくり言えば、

 

企業にとって賃金はコスト、利益は株主利益です。

 

この20年間、一貫してコストカット・利益最大化の経営方針が構造化してしまっています。

 

コストカット・利益最大化というのは、

即ち株主至上主義そのものです。

 

そもそも新自由主義というのも、

株主至上主義者にとって都合が良いというだけであって、

あくまで本丸は株主至上主義です。

 

 だから新自由主義そのものを叩いても、

今の労賃ピンハネ構造にはダメージが通りにくい。

 

そして、

 

新自由主義を叩く声は上がっても、

株主至上主義を叩く声が少ないのは、

企業にとって賃金はコストであり、利益は株主の所得である

というシンプルな事実に、

目が行かないからでしょう。

 

株主至上主義というのは、

いわば賃金ピンハネ主義のことです。

 

今の日本の最大の問題は、 

 

大企業主導型経済構造の構築

という政府だかアメリカだか竹中平蔵だかの方針と、

 

 株主至上主義に基づく株かじりへの利益供与構造の構築

という一部の国民の利害が一致してしまって、

 

分離できないということにあるのだと思います。

(ちなみに緊縮財政も、大企業主導型経済構造構築のための手段の一つに過ぎません)

 

ベーシックインカムなんて導入したって、

日本国民貧困化を根本から解決する手段にはなり得ません。

 

お金を企業や株主が労働者からピンハネして貯め込む構造、

すなわち株主至上主義を打破し、

お金の風通しと循環を良くすることで、

初めて日本は経済技術立国として、

そして国民の豊かな生活を安定させることに繋がっていくのです。