連続小説「大阪純情朝焼け物語2」<きっさん> | mony rainbow blog

連続小説「大阪純情朝焼け物語2」<きっさん>

人間は何もしなければ、、、



きっと、、、

何も変わらない、、、




何かをするから、、、

何かが変わる、、、




川の流れも、、、

石を動かせば、、、

流れは変わる、、、




私の人生も、、、



私の命も、、、



何かをすれば、、、


変わる、、、


きっと、、、


変わる??、、、






~チン先生宅~

部屋を片付け、改めて珈琲を入れ直し、お互いソファに腰かけた、、、




「私の身体??」

育江は不思議そうに聞いてみた、、、


「そう、、君の身体、、、胸が痛む時があるよね??、、、」

チン先生は珈琲カップを置いた、、



窓の外を眺め、おもむろに話し始めた、、、



「私は長年、心臓の研究をしてきた、、中国、ドイツ、イタリア、パリ、、セリエA、、そして日本、、、私は色々な国に行き数々の心臓病の症例を見てきた、、

心臓にはね、、新たな病がまだまだ発見されると睨んでいる、、恐らく、、今、発見されているのは氷山の一角だろう、、今の医学では到底治療の出来ない病がこの数年間にゴロゴロと発見されるだろう、、、


そして私は新しい心臓病を最近発見してしまった、、、




「新しい心臓病???」

育江は問いかけた、、、




「ああ、、」




育江は息を飲んだ、、、




「リッチドール、、心筋症」

チン先生は呟いた、、、





「リ、、、リッチドール心筋症、、、、、、!?」



「初めはね、、軽い発作のような痛みが続くんだ、、、毎日ではないよ、、ごくまれに少しづつの痛みだ、、、やがて痛みも静まるので発見が遅れる、、

ただし進行の速さは過去最高、、発作のような痛みが出て、そこから約半年で心臓は確実に停止する、、

それを食い止めれる方法は一つ、、


「ソフトオンデマンド移植手術!!」それしかない!!



しかし、、

しかしだ、、その移植手術は日本では認められていない、、、モザイク適用法で法律上、日本では認められていないのだ、、、


、、、



そして、、、



その症例が、、、」


チン先生は育江を睨みつけた、、








「、、、、君なんだ、、、、、」







ガッシャーン!!!!


全ての時が止まった、、、


目に映るものはセピア色に変わり、夜のとばりは耳鳴りに、、身体中の血液がサァーっと引いていくのがわかる、、、


育江は珈琲カップを落とした、、



真っ青になる育江をしりめに、落とした珈琲カップを拾うチン先生、、


「じょ、、、冗談でしょ、、??また、、先生の軽いジョーク、、なんでしょ、、」

育江は精一杯の作り笑顔で返した、、


チン先生はコップをキッチンに運び、帰って来て重い口をようやく開いた、、


「私が見る限り、感じないくらいの発作から考えて三ヶ月、、、心臓停止は半年だから、、、残りは、、、三ヶ月、、、」



育江はうつむいて大きな溜息をもらした、、、


「とりあえずは明日から緊急入院してもらう!な~にまだ医学が負けたわけではない!君の心臓が動き続けている限り私はこの病の解明に全力を尽くす!!君は、、君はまず生きる事を諦めてはいけない!!諦めたら試合終了ですよ!!」

チン先生は笑顔で話した。






帰り道、、、


育江は呆然と歩いている、、

あと三ヶ月、、、



あと三ヶ月で私は死ぬ、、、



あと三ヶ月で私は私でなくなる、、、



頭の中が「死」という一文字で埋め尽くされる、、、




怖さと無気力さ、、、


生きる意味、、、

そんなモノが果たしてなんの力になるのか、、、



私の死はなんの意味も持たない、、


全てのベクトルが「不」に向かっていた、、、、



私は気がつくと職場の病院にいた、、、


自分の家ではなく、真夜中の病院、、


無意識にこの場所に来ていた、、、



薄暗い廊下を進み、、、


アルコールの洗浄剤の臭いの中、、、




私はフラフラと屋上に昇っていった、、、



コンクリートの生ぬるい風が気持ち悪い、、、



遠くに街の灯りも見える、、、



手すりに手をかけた、、、



私、、、


自殺するんだ、、、



ここから、、、


飛び降りるんだ、、、



全ての結末が少し見えた、、、


私の人生の結末、、、



その時!!!




「街の灯りってさみしい、、よね?」




後ろから聞き慣れた声が聞こえた、、、



「でも、、、さびしく見えるのはさびしい人間が見てるからだ、、」




屋上の片隅で膝を抱えて座っている旬君がそこにはいた、、、





「しゅ、、旬君、、??、、あなた、、何してるの??」


旬君は立ち上がり、少し微笑んで私のそばに歩いてきた、、、




「(笑)育江だって!!こんな時間にこんな場所で!!(笑)さては男にでもふられたか(笑)」




相変わらずの旬君の元気に少し気持ちの糸がほどけた、、、




「何を言っているのよ!!こう見えても私モテるのよ!!今日だって、、」



「今日だって、、、なに、、??」
旬くんが聞き返した、、、




「なにって、、、別にいいでしょ!子供には関係ない!」


私は真っ赤な顔を隠すように街並みに目を向けた、、、





生ぬるかった風が、やがて寒さを帯びる涼やかな風に変わった、、、





「育江、、、あの街の光の一つ一つに家族っていう家があって、少なくともあの光の数だけは生命が存在するんだよ、、、」


ふと、旬くんが話し始めた、、、



「こんな広い世界で、何千、何万の人が生きて、死んで、それでも空は青く、雲は白く、森は緑に輝くんだ、、



俺も育江もいつかは死ぬ、、、


でも、、、



でも今は生きてる、、、


泣けるし笑えるし、怒ったり騒いだり悩んだりも出来る、、、



夜風が気持ちいいなとか、街の光が綺麗だなとか、、、映画を観て感動するとかね、、、



あいつの事は好きだけど、あいつはムカつくから嫌いだとか、、、



お腹が空いたから何食べようとか、風呂が気持ちいいとか深夜テレビが面白いけど明日があるから寝ようとか、、






きっと、、




きっと、、




毎日ってさ、、、



それでいいんじゃないかな、、、





生きるって、、、



それの繰り返しなんじゃないのかな、、、」



そう言いながら旬くんは微笑んだ。





遠くを見つめる旬くんの話が私の荒れた心を静めていく、、、



私は涙が止まらなかった、、、





「育江!!ちょっとこっちきて(笑)」



旬くんは嬉しそうに私の手を引き屋上の片隅に招いた、、、




「育江、、、手を、、出して、、」


旬くんは拾ったガラスで私の人差し指を傷つけた


「痛!!」

ゆっくり指から真っ赤な血が出た、、


そして旬くんも同じように自分の人差し指に傷をつけた、、、




「ね?、、、まだ俺たち、、、生きてるでしょ??、、(笑)」


旬くんは笑って話した。



そして


その人差し指と人差し指の傷口を合わせ、、、ギュッと手を握りしめた、、、






「俺たちは、こうしてまだ生きている!!そして俺たちはもう他人じゃなくなった!!もう一人じゃないからね!!俺が助けてやるからね!!」



そう言って笑う旬くん、、、



星空がまんてんに輝き、夜風が二人を包むように吹き付け、暖かい温もりと生きてる証を感じ、涙に暮れる育江だった、、、




つづく


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