「パズル」第7話 唐 | mony rainbow blog

「パズル」第7話 唐

茶盛と加元は今にも自分自身を押しつぶしてしまいそうな不安と重圧に耐えながら車を走らせた。

そして守口の一ノ瀬健太のマンションの前に着いた。



加元「チャモさん、着きました。ここが一ノ瀬健太のマンションです。」

茶盛「・・・おう。・・・行くぞ。」



一ノ瀬の部屋の前には連絡を受けたマンションの管理人が部屋の鍵を持って立っていた。



管理人「刑事さん、何か事件でもあったんですか?」

茶盛「・・・・どうですかね。さあ、玄関を開けてください。」



茶盛の心臓の鼓動のテンポが次第に上がっていく。

管理人は静かに鍵を回し、扉を開けた。




一人暮らしの若い男の部屋。

そのステレオタイプのような何の変哲もない部屋に茶盛にとって一番大切な宝物が横たわっていた。


茶盛「うそ・・・うそやろ・・・・は・・・はるか・・・・春香!!春香ーー!!」

加元「春香ちゃん!春香ちゃん!!」

管理人「ああああ・・・!!し・・・し・・・死んでる!!」


管理人は腰を抜かしその場にへたり込んでしまった。


茶盛「カモ!!救急車!!早く!!救急車呼んでくれ!!」

加元「は、は、はい!!」

茶盛「たのむ!!早く!!カモ!!カモ!!」


茶盛の心拍数がこれ以上ないスピードで上昇していく。


茶盛「春香!!春香!!春香・・・・・はる・・・は・・・る・・・・・・・・・・ 」

加元「チャ、チャモさん?チャモさん!!しっかりしてくださいチャモさん!!チャモさん!!」





「オギャーオギャー」

「おーよしよしいい子やねー。ねんね、ねんね。」

「オギャーオギャー」

「はいはいはい。男の子は泣かないんよ。」




・・・・赤ちゃん・・・?





~関目病院~

茶盛「・・・ん・・・・うん・・・?ん・・・・あれ・・・」

まさ子「あ・・・あ・・・おとうさん・・・、お父さん!!あぁ・・・・・」

茶盛「・・・あ・・・ああ・・・母さんか・・・なんで母さんが・・・・」

まさ子「ああ・・・良かった・・・。お父さん、気を失って・・・病院に運ばれたんですよ。」

茶盛「え・・・ああ・・・そうか・・・」

まさ子「・・・・お父さん・・・・春香が・・・・春香が・・・・うう・・・」

茶盛「・・・春香・・・。春香!!母さん!!春香は!!」

まさ子「・・・・」

茶盛「やっぱり・・・あかんかったんか・・・」

まさ子「・・・う・・・うわぁぁあーーーお父さんーーー」

茶盛「くっ・・・春香っ・・・春香・・・」



茶盛は春香の遺体を見ることができなかった。

この残酷な現実を受け入れるにはまだまだ時間が足りなかった。



茶盛「・・・母さん、カモは?」

まさ子「・・・え、ああ、加元さんね。加元さん病院まで一緒についてきてくれてたみたいなんですけど、急な用事ができてしまったので、ってどこかへ行かれたみたいですよ。」

茶盛「・・・そうか。・・・あかんあかん、こんなところで寝てる場合じゃない。行かな」

まさ子「ああ、だめですよ、お父さん。もうちょっと寝ててください。」

茶盛「いや、もう大丈夫や。行ってくる。」

まさ子「ちょっと、お父さん!」


茶盛は春香の死を受け入れられないまま、目の前の現実から逃げるように病院を出た。



ピリリリリ・・・ピリリリリ・・・

加元「はい、加元です。あっ、チャモさん!大丈夫やったんですね!良かった!」

茶盛「カモ、すまんな心配かけて。今どこにおるんや?」

加元「チャモさん、もうちょっとゆっくりしてはったらどうですか?春香さんのこともあるし・・・」

茶盛「アホ!!もう大丈夫やゆうとるやろ!!どこや!!」

加元「え、え、え~と・・・あ、迎えにいきます!関目病院ですよね。」




加元「チャモさんすいません、お待たせしました。」

茶盛「おう。カモ、どこ行っとったんやお前。」

加元「・・・いや、ちょっと急な用事が・・・すいません・・・」

茶盛「別に謝らんでもええやろ。おう、お前どう思う?一ノ瀬は」

加元「・・・はい、ん~、ここまでの一ノ瀬、二階堂、三橋、四宮。1,2,3,4、全て状況はほぼ一緒ですよね。そして25年前の事件とも・・・」

茶盛「いや・・・違う。春香は・・・一ノ瀬の件は違う。現場の状況はほぼ同じやけどあそこには確かに殺意があった。犯人の意思があったんや。春香は・・・・ただ殺されたんやない。」

加元「春香さんを殺した犯人と春香さんにつながりがあると・・?」

茶盛「おそらくな。」

加元「一ノ瀬・・・一ノ瀬を探さないことには何も始まりませんね。」

茶盛「・・・せやな。」

加元「チャモさん・・・もう一度一ノ瀬の家へ行きましょう。・・・辛いことかもしれませんけど・・・」

茶盛「・・・おう。行くぞ。」



~車中~

茶盛「カモ・・・思い出したことがあるんや。俺が一ノ瀬の部屋で意識を失いかけてたときに・・・。」

加元「・・・何ですか?」

茶盛「・・・赤ちゃんの泣き声や。お母さんに抱かれてあやされてる赤ちゃんの泣き声や。25年前・・・間違いない。あれは25年前俺が担当したあの事件のあの母親や。後回しにしてしまったあの母親や。・・・男の子・・・、男の子を抱いとった。」

加元「・・・それが・・・どうかしたんですか?」

茶盛「あの事件の後・・・どれぐらい後やったか・・・俺はどこかであの母親を見てるんや。抱いている男の赤ちゃんも・・・」

加元「・・・そうですか・・・あ、着きましたよ」

茶盛「よし。行こう。」




「次のニュースです。大阪で起きている4件の殺人事件の重要参考人の一人、二階堂一、21歳が出頭しました。二階堂は事件を全面的に否定しております。捜査本部では引き続き二階堂の取り調べを行い捜査に当たる模様です。」




つづく