連続小説「大阪純情朝焼け物語」 終 <きっさん>
、、、病院って嫌いだな、、、、
、、、元気な人でも元気なくなる気がするし、、、
、、、それに、、、
、、、それに、、、さあ、、、
ー回想ー
イクコ「お疲れ様!今日も一日ご苦労様!」
イクコ「「あ、、あたし、、あたしさあ、、コンタクトだからさ、、ゴミが入ると痛くって、、、ね、、大丈夫、、ゴミ取れた!ほら!」
イクコ「え~っと~、、ボッキン、まだ何も食べてないでしょう?? おかゆ作ってあげるね。 おかゆなら食べれるでしょ??(笑)」
イクコ「ボッキンってさ、、、 勃起したからボッキンなの?」
イクコ「ちょっち、 迷った(笑)」
イクコ「やっほーボッキン(笑) 大丈夫??」
イクコ「え! 覚えてないの! 私とのキスも?」
イクコ「笑 うそ(笑)冗談だよ(笑)な~にもしてないよ(笑)」
イクコ「(笑)いいよ、、、行こう映画(笑)」
イクコ「ありがと、、。」
「ありがと、。」
「ありがと。」
あ、、り、、が、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
ー霊安室ー
薄暗い部屋の中、、僕は壁を背にしてうずくまり、、、立てないでいる、、、。
美津子ママは隣でシクシクとただ泣くばかり、、、。
僕は目の前の現実を受け入れる事が出来ず、、、、ただ、、、
たまに記憶が飛ぶ、、、、「あれ?、、、僕はなぜ、、ここにいるんだろう、、、?」と、、、。
「目の前に眠っている人は誰なんだろう、、、?」と、、、。
奇しくも窓の外は快晴で、、、
きっと退院を祝う人達の声が、、聞こえる、、、。
でも、、、
僕の目の前には、、、白い布をかけられた少女のような人がねむっている、、、。
これはきっと、神様のいたずら
これはきっと、人間は同じ過ちを繰り返す生き物
これはきっと、不幸へのカウントダウン
これはきっと、新たな旅立ちの日
これはきっと、運命の残酷さ
、、、運命の、、、、残酷さ、、、、
僕の重い腰が起き上がり、目の前の眠る少女に近づき、、顔にかけられた白い布をゆっくりとる、、、。
そこには、、、見るも無残な、、、イクコの姿、、、、。
警察がね、、、
「まだ綺麗な方の遺体」だって、、、。
「見て本人確認が出来てるのは奇跡」だって、、、。
僕は泥が染み込んで乾いてカラカラになった頭を撫でた、、、、。
「クリちゃん、、、、。」
「クリちゃん、、、、。」
「ボッキンって言えよ、、、、。」
「いつもボッキンって言って笑ってたじゃないか、、、、。」
「ボッキンって言えよ、、、、。」
「ボッキンってさあ、、、、。」
「なあ、、、クリちゃん、、、。」
捨てられた人形のような姿のイクコを見て、、僕は大声で泣き崩れた、、、。
そこに美津子ママが近づき、、
「郁夫ちゃん、、じつはね、、、イクコちゃんから手紙を預かってるん、、、イクコちゃんが東京に帰った時を見て郁夫ちゃんに渡してほしいって言われたんよ、、、まさか目の前で郁夫ちゃんに渡すとは思ってへんかったけど、、」 っとまた美津子ママは泣き崩れた、、、、。
僕は泣きながら手紙を受け取り霊安室を出た、、、、。
薄暗い廊下の隅の階段に腰掛け、、僕はイクコの手紙を開いた、、、。
ボッキンへ、、、。
突然のお手紙でごめんなさい、、
きっとボッキンの事だから、、、ボッキンは優しいから、、あたしがいなくなると心配すると思うのでこの手紙を残します。
あたしね、、、あたし、、、再婚が決まってたの、、、。だから、、東京に戻らないといけないの、、、。
お父さんとの約束だから、、、。
あたし、、あたしね、、ずっとボッキンに会いたかったの、、、。
会いたくて、、会いたくて、、、会いたくて、、、会いたくて、、、大阪にきたの、、、、。
そして、、、やっと会えて、、あたしには夢のような数ヶ月でした、、、。
楽しかったよ、、、、。
嬉しかったよ、、、、。
ボッキンにしてみたら迷惑だった、、かも(^_^;)(笑)
あたしはもう大丈夫!!
あたしの夢が叶って、これからは、ボッキンとの思い出があればあたしは大丈夫!!
だから、、、
ボッキンも頑張ってね、、、。
あたしも頑張るから、、、
ボッキンも頑張ってね、、、。
幸せな数ヶ月でした、、、。
本当にありがと、、、、。
本当にありがと、、、、。
追伸
あたしの夢は「大阪人になったあなたを一目見る事」でした、、、。
僕の涙で文字が歪む、、、、、。僕は握り締めてしまった手紙を落とす、、、、。
大切なモノを失う悲しみって、、、失わないとわからないものだと、、、つくづくおもう、、、。
「勝手な事いうなよ、、」っと僕はイクコに対して怒りにも似た悲しみに襲われていた、、、。
もはやこの後に及んで感情論なんて、、なんの支えにもならない、、、。
体中の液体が、、、ただ、、、涙となって流れ、、、呼吸困難、、、僕はこのまま意識を失った、、、。
気づいたのは翌日、、、、深夜、、、。
自分の部屋、、、
目は覚めているが天井から視界が止まってる、、、。
こんな時の人間って人間の機能は正常に動かなくなるんだ っと頭だけが回ってる、、、。
たぶん、、僕はまだ現実逃避を繰り返すだろうし、、、このまま死んでしまおうと、、、本気で考えていた、、、。
今、、、現実がどう動いているかわからない、、、
あとから聞いた話、、、美津子ママが昨夜、僕を家まで運んでくれたらしい。
これもあとから聞いた話で、昨日は、イクコの携帯が見つかり、警察が着信履歴から美津子ママに連絡があり、僕に連絡したらしい、、。そのつながりで美津子ママがイクコの身元引き受け人になり、親類への連絡及び、細々したことは美津子ママが全部してくれたらしい、、、。
全てはあとから聞いた話です、、、。
僕はベットから起きることもなく、、、
生きる気力も無くし、、、
そして、、思考回路は死ぬ方向へと向かっていった、、、。
その時、、、僕の携帯が鳴る、、、、。
もちろん、とるつもりなどないが、、、着信画面が見えた、、、
栗原イクコ、、、、、
!!!!!!!!!!!!!!!!
僕はあまりの勢いに貧血で目が回った、、
動かなくなった関節を叩き起こし、携帯を取った、、、、。
「イクコーーーーーーーーーー!!!!」
僕は携帯である事を忘れ叫んだ、、、。
「もしもし、、、、。」
イクコでは、、、、ない??
「もしもし、、、簿木郁夫さんですか?」
「は、、い」
僕は久々に声を出した。
「ご迷惑をおかけしました、、夜分にすいません、、イクコの母です」
おかあさん、、、それは娘を失い、、それでも懸命に冷静を保とうとする力強い母の声だった、、、。
「は、、はい」
僕はまた涙が溢れた、、、。
「郁夫さんね、、、、イクコがお世話になりました、、、。
郁夫さん、、、あなたには本当に本当に、感謝しています、、、。」
僕は感謝されることなんて何もしていない、、、。
だから後悔で、、死のうと考えていたところだったのに、、、。
「ご存知かもしれないけど、、、あの子(イクコ)離婚したの、、、前の旦那の暴力が原因で、、、いつも、あの子、顔にアザをつくって実家に帰ってきては泣いてました、、、。わたしは何もしてやれず、、、あの子に「楽しい事考えなさい」としか言えませんでした、、、。でも、、でもね、、それからのあの子は同じように顔にアザを作って帰ってきても泣かなくなったの、、、その代わりに帰るたびに「ボッキン、ボッキン」とあなたの話ばかりするようになりました、、。「大学の頃は、、、」とか「大阪に住んでる、、、」とか、、、。それはそれは楽しそうに、、、あの子には、、、あなたとの思い出が生きる光だったんですね、、、。
正式に離婚が決まり、落ち着いた時、うちの主人(イクコの父)がなくなりました、、、。主人が生きている時に、主人もイクコの事を気にかけていたのか、再婚相手をみつけていたの、、、昔の人だから離婚は血族の恥、と思ってたようです。それでイクコとよく喧嘩をしていました、、、。死ぬ間際にイクコは主人の約束を守ることを主人に誓い、ただし、、、再婚する前に、、、大阪に行かせてほしいと言いました。
そして、主人がなくなり、住む家もなくなり、私たちが生きる為に残されたのは主人が残した再婚相手との結婚しかなくなったのです。
あの子もそれはわかっていたようです、、、。わたしの為にあの子は再婚をするつもりでした、、、。
ただ、、、あなたとの思い出が欲しい、、少しでいい、、、少しでいいからあなたとの思い出が欲しい、、「それさえ叶うならあたしは大丈夫!お母さん!」と笑顔であなたのもとえ、旅立ったのです、、、。
沢山手紙ももらいました。電話も、、それはそれは二人の楽しそうな内容ばかりでした、、、。
わたしはあの子に言いました「もう、帰ってきてはだめよ!簿木さんのそばにいなさい!」と、、、。
でも私の事を気にかけていたのでしょう、、、「私には一生分の思い出ができた(笑う)、、だから、、、帰るね」と、、、。
それがあの子の最後の言葉です、、、」
僕は何も言えず、、、ただ泣きじゃくるだけ、、、。
「それから、、、郁夫さんにどうか、、どうか最後のお願いがあります、、、、」
落としそうな携帯をなんとか握り、耳をすました、、、
「どうか、、、どうか、、、イクコの光であり続けて下さい、、、
あの子の光であり続けて下さい、、、、
あなたが元気に生きるだけで、、あなたはあの子の光なんです、、、あの子の光を消さないであげてください、、
そして
いつか
誰かの光になってあげて下さい、、、
イクコとわたしの最後のワガママです、、、、」
僕の大きな泣き声はこの部屋を超え、、、たぶん、、近隣10軒先までは聞こえていたはず、、、、。
そして、、、ぼくは、、イクコのお母さんとの電話を切り、荒れ果てた散らかり放題の部屋をみわたした、、。
少しずつ白くて黄色い朝日が差し込んできた、、、、。
この部屋にイクコはいた、、、
間違いなく存在して、、、
そしてきっと今も、、、
僕はベランダに出て、乾いた空気を思いっきり吸い、、そしてこの朝焼けに誓っつた、、、。
僕はこのイクコのいない大阪で大阪人として一生、元気に生きてみせる!
負けそうになっても僕の光は絶対に消さない!!
誰に笑われても、、誰に馬鹿にされても、、僕の光は絶対に消さない!
自分の為にも
イクコの為にも
そしていつか、、、
僕の覚悟も、、、
イクコに捧げたいと思う、、、
この指輪と共に、、、、
朝焼けの光が指輪に当たり眩しくも、、ささやかに、、輝いた、、、。
「大阪純情朝焼け物語」 終