連続小説「大阪純情朝焼け物語」<きっさん>
「昨日、髪切ってきたの、夏だしさ、 なんかあの頃に戻ったみたい」 と笑うイクコ。
僕が息をのんだのも無理はない。10年という月日は流れ、お互いに歳を重ねたはずが、、、今こうして目の前に存在するのは紛れもなくあの頃のイクコだ。
「さ!いきましょうか!(笑)」 それはまるで天使のごとく、僕を梅田行き環状線に導いた。
梅田に出た僕たちは、ヘップの観覧車を横目に歩き、上映時間がくるまで時間を潰す事にした。
ウインドウショッピングとは名ばかりの、、、ただあてもなくブラブラ歩くだけの時間、、、、ただ自然と盛り上がり、二人は二人だけの時間を楽しんでいた。イクコの仕草一つ、笑顔一つが僕にはたまらなく、、、時間という概念がうとましく思うほどだった。 「あの頃と何も変わらないね」とつぶやく僕に、「もうおばさん入ってるもん(笑)」とおどけてみせるイクコ。
「好きだ」と打ち明けた事が必然だったと思えたのはこの時が初めてなのかもしれない。
上映時間もせまり、僕たちは梅田ロフトの地下にある「テアトル梅田」に入った。 もちろんポップコーンとコーラを両手に(笑)
開始を示すように館内は暗くなり、「いかにも、、」というような宣伝が始まる。 ポップコーンを口に運びながらスクリーンを見つめるイクコ。僕に気づいて微笑みかけたイクコ、、、。ダメだ、、、かわゆい、、、。
そして、、、映画は始まった、、、。
始まりは「北斗の拳」、出だしは「機動戦士ガンダム」と「宇宙戦艦ヤマト」を足して2で割ったようなパクリ作品、、、(汗)。
、、、マズイ、、明らかに選択ミスだ、、、女の子が観て面白い訳がない、、、。僕は美津子ママを恨んだ。
でもイクコの目はキラキラと、、、まるでワンシーン、ワンシーン食い入るように見つめ、僕もそれに促されるように映画に入っていった。
映画が終わりを告げるエンドロール、、、、。
うっすらと涙を浮かべるイクコ。 正直、始めは馬鹿にしていた映画、、、。なぜアイツが死ななければいけなかったのか、、、なぜあんな見たこともないようなラストシーンだったのか、、、。馬鹿にしてた分の振り幅が尋常じゃないくらいの感動に変わった。
映画館を出た僕たちは一言めに「よかったね~」と感激を口に出した。
テンションの下がらない僕は「また来ようね」と言った。
そう、、その時だ、、、、
あの時、、、そう、、、あの時、、、
ちゃんと気づいてやればよかったんだ、、、「、、うん」というイクコの、、、。
イクコの笑顔が、、一瞬、、、、、曇ったのを、、、。
あたりはスッカリ暗くなり、少し豪華な夕食を食べ、軽く飲み屋にも入り、ほろ酔い気分で少し酔を覚ましてから帰ろうと関テレ前の公園にやってきた。 誰もいない公園で二人は外灯の下のベンチに座った。 話題はやはり映画の話で持ちきりだった。
「でもやっぱミッチーかっこよかったね。」僕が感想をのべる。
「あたし、フチがいいな。 優しいもん」イクコがいう。
「最後の大どんでん返しはすごいね あんな結末見たことないもん。ほんと感動しちゃった。」慌ててしゃべる僕。
「、、、、、、」 イクコ。
「、、、どうしたの?」急に黙り出したイクコ。僕は何かマズイ事言ったのかな?と心配になる。
突然
「ねえ、、、。」イクコが口を開いた。
「ん??、、どうした??」僕が尋ねる。
「今日、、ね、、、帰りたくない、、、な」
明らかにおかしいイクコの発言に、、、この時の僕は、、、まだ、、、気づいていなかった。
つづく