連続小説「大阪純情朝焼け物語」<きっさん>
俺の名前は簿木 郁夫(ぼき いくお) 訳あって今大阪に住んでる。じつは大失恋の後、逃げるように大阪に来てはや10年になる。大学の頃、好きだった子にフラれ卒業と同時にこの街に来た。初めは慣れない土地柄に戸惑いもしたけれど、今はすっかりこの土地が好きになった。お好み焼きやたこ焼き、一番店が多いのはミナミだと気づくのに、そう時間もかからなかった。いわゆるもう大阪の人だ。
この物語はそんな僕の街の、そんな僕が引き起こす、たわいもない、甘く、切ない物語です。
先日、僕は仕事終わりにいつもの行きつけの店に向かった。
千林にあるスナック「ドリーム」 いわゆる昭和な飲み屋 たぶん常連は僕だけだろう。。。
そこの美津子ママとは親子のような関係だった 僕を息子のように可愛がり、大阪のオカンそのものだ。
そして美津子ママが急に話しかけてきた。「そうそう、郁夫ちゃん、やっとうちにもアルバイトの子がはいるんよ それが郁夫ちゃんと同じ歳やって 可愛がってあげてや」
そもそも僕はこの店の人間ではないし、どうみてもアルバイトが必要な店ともおもえない。。
「ああ、仲良くはするよ」 ありきたりの返事を返し、濃い目の梅酒を飲んだ
「でも遅いわね、今日からなんやけど」とそわそわする美津子ママをつまみに濃い目の梅酒を飲み干した時
カランカラン
「ママ ごめん 京阪、人身で止まってて」勢いよくドアが開いたと思いきや懐かしい元気な声が聞こえた
神様のいたずら
人間は同じ過ちを繰り返す生き物
不幸へのカウントダウン
新たな旅立ちの日
運命の残酷さ
笑顔で美津子ママと話をしているのは何をかくそう大失恋のちょう本人、栗原 イクコ(くりはら いくこ)だ
心臓の音が止まらない
顔も赤くなってるのもわかる
フラれた男が即座にする行動 それは「ただちに逃げる」 この答えがでるまでの時間約2秒
赤ら顔のぼくは酔ったフリをして「ママ お代はここにおいておくよ」と店を出ようとした時 「待ち~な郁夫ちゃん さっき話してたアルバイトの子 名前?」
「栗原イクコ」 とっさに僕が答える
「そうそうイクコちゃん あれ?なんで郁夫ちゃんが?」
びっくりしてたのは美津子ママではなく イクコ本人のようだ
「ひ 久しぶり」僕が声をかけた
「う うん 久しぶり」イクコが答えた
明らかに知らない人同士ではない二人に「あら 知り合いやったの」と軽々しく入ってくる美津子ママ
「だったら話は早いわね よろしく頼むわね」空気を読まない美津子ママ
「よろしく」 ふたりの再開に「よろしく」 新しいこれからに「よろしく」
二人のぎこちない笑顔が窓から漏れる夕暮れの光に照らされた
つつく