正義は立つ位置によって違う。
立つ位置によって物の見え方は
違って来る。
しかし真実は絶対的に一つだ。
生き物にとって絶対的な真実は、
子孫を残し生き延びること。
生物学的に見れば、
これは揺るぎない真実。
昨今の減断薬ブームに警鐘を
鳴らしたい。
断薬者の「断薬したら元気に
なりました!」
「精神薬を服用している者は
頭がおかしいヤツ」
「私は断薬者だから正常者」ブログや
情報発信が、断薬=正義という単純な
ステレオタイプの価値観を生み出して
いるようにも感じていた。
かつて私は「断薬は正義か」という
ブログを書いたこともある。
私が劇症型ベンゾ離脱症状を
発症したのが21年前。
途中断薬時期もあったが、
それでも今日まで生き延びて
来られたのは、断薬に拘らず
腹をくくって薬を服用して来た
のも一つの大きな要因だと
思っている。
あのまま断薬し続けていたら
今この世にはいない。
断薬や服薬に拘るのではなく、
希死念慮を抑えることや
情緒不安定、絶不眠を抑えることを
取った。
リボトリール減薬に失敗し
強烈なアカシジアに見舞われ
緊急入院したこともあった。
入院し処方薬を組み立て直し
投薬調整を行った。
その時の処方が今の処方の
原型になっている。
命に関わらない副作用には
目を瞑る。
しかし拘るものを間違えれば、
取り返しのつかないことにも
なってしまう。
勿論体質は個人差があるので、
私の経験だけが全てではない。
生物にとっての真実とは
断薬ではない。
「生き延びること」これが真実。
その真実に比べたら、断薬など
それは単に生き延びる手段に
過ぎない。
ある人にとったら断薬が生き延びる
手段であり、別の人にとったら
服薬が生き延びる手段になる。
真実と手段を見間違えてはならない。
減断薬に拘る余り、死んでしまっては
何もならない。
減薬中は特に視野狭窄に陥り易い。
優先順位もつけられなくなる。
薬が怖い余りに頑なに服薬を拒否し、
結果情緒不安定が酷くなり、
希死念慮に見舞われ発作的に
やってしまいかねない。
再服薬が遅れれば、よりややこしく
なる。
飲むも地獄、止めるも地獄の
地獄へと落ちていく。
薬の中途半端な血中濃度で
より不安定にもなる。
何の為に減断薬するかと言えば、
それは「生き延びる」ためであったはず。
ところがその生き延びる為の
手段に殺されてしまうなら本末転倒。
まずは症状を落ち着かせるために
再服薬をして、落ち着いてから
漸減していっても遅くはない。
緊急入院をして、
注射や点滴で命を守る手段もある。
精神医療や精神病院を
そこまで恐れることはない。
繰り返すが、死んでしまっては
何もならない。
症状が落ち着けば、考え方にも
余裕が生まれ視野も広くなる。
死ぬくらいなら、死ぬまで最低限の
薬を服用し、希死念慮を感じず、
情緒を安定させ、最期まで生き延びて
天寿を全うさせるという正義だって
アリだ。
断薬者の「断薬して元気になりました!」
「いつまで薬を飲んでいるのか!?
薬を飲んでいる者は病気だ!」
「何年もチビリチビリ減薬し、
記録を付け、グラフにして
ブログにしている人もいる、
信じられない!」等の挑発的な情報には
気を付けねばならない。
漸減をあざ笑い急減薬を暗に示唆する
恐ろしい情報である。
減薬中は特に刺激に揺れやすいから
要注意だ。
人にはそれぞれ「生き延びる」
ための手段があり、それはもしかすると
最低限の服薬かもしれない。
少なくとも私はそうだし、だから
直近の減薬ブログにも
「断薬が目標ではない」と書いている。
服薬を継続した結果寿命が縮んでも
仕方がないと思っているし、
もう織り込み済みだ。
それよりも私にとって「自分から死なない」
というのは、最大の正義である。
最低限の服薬はそのための手段。
過度ではなく適切に薬を恐れ、
自分の「生き延びる」手段は何なのかと
考えたい。
そしてそれをまた他人に強要しても
ならない。
ベンゾ離脱症候群に気付いたのは
遅かったが、それでも情報が全くない
時代から21年も生き延びて来たのは
それなりの理由があったように思う。
一人一人体質や事情は違うので
私の例で全ては語れないが、
誰かの考えるヒントになれば
有難い。
近年の精神薬減断薬ブームに
警鐘を鳴らすと共に、
生き延びる一つの手段に
逆にやられないようにして欲しい。
断薬は真実ではない、
生き延びる一手段に過ぎない。
正義は10人いれば10の
正義があり、断薬もまた
一つの正義に過ぎない。
人の数だけ正義はある。
狭窄的な価値観に陥らないように
したいしして欲しい。
断薬者だろうが服薬中だろうが、
「生き延びている」こと、これ自体で
生物学的には勝者である。
どっちが上でどちらが下とかない。
生き延びる手段はどうでもいいし
何でもいい。
「死ぬ気で減断薬」はナンセンス。
本当に死んでしまっては何にもならない。