またまたつづきである。



横浜駅でゆみちゃんと合流した俺は

とりあえず荷物を持ち、車を拾おうとした。

そのときゆみちゃんが、



   「ねぇねぇ、どーせだからたまにはいい所に部屋とってよぉ」



と、女王様っぷりの片鱗を見せ始めた。




   「えっ? なに? どーせだって?

    いつもインターコンチネンタルホテルのハーバースィートを

    取ってやってるのに何言ってんだこのばぁさんはっ!!! 

    ついにアルツが来てしまったのかっ!!」



俺はインターコンチの会員なのでいつも仕事や私用で

誰か泊まるって時に俺の名前で予約を取る。

そうやって爪に火を灯す思いで貯めたポイントのお陰で

ハーバーを取っても1泊 ¥13,650 までになったなのである。




   「エントランスにリビング、ベッドルーム、ウォーキングインクローゼット、

    ベイブリッジが目の前に一望できるバスルーム...

    なにが不満だ? 何が気に入らねーんだよっ!

    俺か?俺なのか?俺が気に入らねーのか?

    そーかそーか、俺なんだね、うんうんわかったよ...

    だったら帰ってくれる?

    ねぇ、お願いだから帰ってください!

    これはなんの試練なんですか? 神様っ!答えてっ!!」



脳裏に ドナドナ が流れていた...


けなげな俺は、それでも自分を取り戻し平静を装った。

しかしあれ以上の部屋はなかなか俺の財布が

いい返事をしてくれない。

もしこれが大好きな梨○ちゃんだったら

定期を解約してでもロイヤルスィートを予約するだろう。

でもゆみちゃんだもんなぁ...

本来なら寿町の簡易宿舎で一泊 ¥600 で済ましたいのにね。


 (寿町とは、明日のジョーにでてくる丹下団平がいるような所である)


でも死んでから枕元に立たれても困るので

仕方なくロイヤルパークホテルを予約した。

この間たった5分である。

なんて手際がいいんだろう俺って。 うひょひょひょ。

いざこの事をゆみちゃんに告げると



   「その部屋海見える? 広い? 上の方?」



すいません、クビ締めていいですか??


なにも言わずとにかくタクシーに乗ってとりあえずは

チェックイン出来ないので チャン街 (中華街)に向かった。

何か食わせりゃ少しはおとなしくなるだろうと思ったからである。

しかし、その思惑も浅はかに崩れた。



   「私船見たい!」



えっ? 

女王様、今なんとおっしゃいましたか?? 



   「船見に行こうよ、船!」



この人俺が仕事あるの知ってるのか?

プータローで遊んでる訳じゃないんですけど...(よく言われるけど)

俺これでも意外とお仕事真面目なんだけど...(ピグやってるだけど)

ホテルに泊まるのお金掛かるんですけど...(課金出来なくなっちゃう)

ああぁ、おばあちゃんとお花畑の映像が

段々はっきりくっきり濃くなって行く...



   「たまには付き合いなさいよねっ!」



   「はい、女王様、仰せの通りに致します...

    だから、だからなにとぞ早くお帰りくださいませっ!!」



タクシーはホテルに荷物を預け、山下公園に向かったのである。





                   つづく