街中の三階建てのビル。一階は喫茶店、二階の窓には「古賀探偵事務所」の文字が並んでいる。しかし事務所の中は真っ暗で無人。下の階の喫茶店にだけ明かりがついている。
『流星』
『何?スプリンガー』
『だからお前はどこへ向かっている』
『え~と…あくまでこっちは副業のつもりなんだけど……』
スプリンガーの問いかけに流星は苦笑しながら紅茶を淹れる。彼の隣では隻眼の彼がシフォンケーキを切り分けている。
『トップガンダー、シフォンケーキの他にガトーショコラもお願い』
『了解』
二人が用意しているのは客から注文された「ケーキセット」。その客というのは近くの駅を利用している電車通学の女子高生。
冷やかし…もとい、様子を見に来た舞と八荒が『ここって近くに駅があるじゃない?電車通学の高校生をターゲットにして学割のケーキセットを提供するのはどう?』『流星もトップガンダーも黙ってりゃイケメンだし、女子高生にウケると思うぜ?』と言ったのが始まりで、言われた通りの学割メニューを考え、トップガンダーにスイーツを作ってもらった。ら、見事にそれがはまったらしく……イケメンのいる喫茶店ということで話題になり、今では放課後になると電車通学じゃない女子高生までもがこぞって来店するようになった。
また、イケメンの噂を聞いて来店する主婦層も少なくない。
『客がまったく来ないよりはいいが…お前の言う本業はどうなってんだ』
『僕の本業っていうと…世界平和のために戦う正義のヒーロー的な?』
『否定はしないが…何でも屋の方はどうした』
『どうしたも何も…依頼が来ないからなぁ…』
スプリンガーの鋭い突っ込みに流星は苦笑するしかない。
実はスプリンガーのこの突っ込みは半ば八つ当たり。それは彼も喋るドーベルマンということで一時はそれなりに話題になった。が、やはりドーベルマンという犬種のせいか女子高生ファンはつかず…喫茶店の看板犬ではあるが流星やトップガンダーほどの人気はない。
『俺だって人間だったら流星もトップガンダーも足下に及ばないほどのイケメンに違いないんだからな』
壁に向かって独り言のように口にしているスプリンガーに流星は何も言えない。が、
『あ、スプリンガーほら、もうすぐお気に入りのモフモフうさちゃんが始まる時間だよ』
最近彼が気に入っているショートアニメが放送される時間になったのを知らせて話題を変える。するとスプリンガーは慌てた様子で階段を駆け上がっていった。これでしばらくは二階の事務所のテレビの前から動かない。
『メタルダー』
不意にトップガンダーに呼ばれて流星は顔をあげた。「何?」と尋ねる前に喫茶店のドアが開いて来客を知らせるベルが鳴る。「いらっしゃいませ」と挨拶するより先に
『流星さん!』
入ってきた客に名前を呼ばれた。誰かと思えばそれは
『舞さん』
仰木舞。彼女の後には当然のように北八荒の姿。二人はある意味ではここの常連である。
『どうしたの?』
と流星に尋ねられた舞はカウンター席に座りながら
『ちょっと気になる話を耳にしたんだけど』
と話を切り出す。そんな彼女の隣に座った八荒は流星に向かって「いつもの」と注文する。ちなみに八荒の言う「いつもの」とは学割ではないケーキセット。
『気になる話?』
舞に聞き返しながら流星はお湯を沸かし、隣ではトップガンダーが何も言わずにケーキを用意している。
『あのね、ゲームセンター荒らしがいるみたいなのよ』
『ゲームセンター…荒らし?』
(なんだろう…それ…)
初めて耳にする言葉に流星は首を傾げた。
『流星が何を想像してるか知らないが…ゲームセンターで暴れてるわけじゃなくてな、まぁ要するにゲームセンターに入り浸って他の客に迷惑かけてるような奴がいる、って話』
八荒がそう説明する。と
『へぇ~』
流星は素直に八荒を感心している。
『というわけでね、流星さん!』
『うん?』
流星の両手を舞が両手で包み込み、
『ゲームセンター荒らし、撃破しましょう!』
と言った。
『……はい?』
何が「というわけで」なのかわからないまま、流星はそのゲームセンター荒らしとやらに挑むことになっていた。
喫茶店の閉店後、改めてスプリンガーも交えて舞から詳しい話を聞いたところ
『待望の初仕事だな!』
誰よりも張り切るスプリンガー。その一方で
『まずはそのゲームセンター荒らしの人となりについて調べるべきじゃない?』
意外と慎重な流星。
『ねぇトップガンダー?』
隻眼の彼に意見を求めようとしたところ、彼は
『トップガンダー……何してるの?』
彼は、自身愛用のライフルを手入れしている最中で…
『ゲームセンター荒らしとやらを抹殺するんだろう?』
「任せろ。暗殺は得意だ」と言って不敵な笑みを浮かべられた流星は
『ノー!暗殺はノー!!』
思わず声を大きくして彼からライフルを取り上げる。彼が小さく舌打ちしたがそれは聞こえなかったふりをして
『撃破ってそういう意味じゃないからね。他のお客さんに対しての迷惑行為をやめてもらえればいいんだから、事を穏便に済ませるためにもまずは話し合おう!』
と宣言。それを聞いてスプリンガーとトップガンダーはなんとなくつまらなそうな雰囲気を醸し出していた。
翌日、流星とトップガンダーは舞と八荒に案内されながらゲームセンターにやってきた。明るい照明とあちこちから聞こえる賑やかな音。土曜日だからか小中学生の姿も多い。
(そういえば…ゲームセンターという名前は聞いたことあるけど実際に来たのは初めてだなぁ…)と周囲を見渡しながら流星は思う。
『じゃあ~まずはプリクラ撮りましょっか!』
突然舞が言い出して八荒が『賛成~!』と言ってバンザイする。
(プリクラ……って、女の子が撮るものじゃ…?え?男も撮っていいの?)と思った流星の横でトップガンダーは何かを見つめている。
『どうかした?』
と尋ねると彼は壁の貼り紙を指差した。見ると「男同士でのプリクラ撮影禁止」と大きな文字で書かれている。
『へぇ~~……ってことは僕ら撮っちゃダメなのかな?』
流星がつぶやいた直後
『流星~』
八荒に手招きされて歩み寄ると、舞が慣れた手つきで画面を操作していた。
『いいの?男子は撮影禁止って書いてあったよ?』
流星は八荒に訊いた。すると
『撮影禁止?そんなの初めて聞いたぞ』
そう言って八荒は目を丸くした。流星が貼り紙を指差すと
『あぁ~はいはい。男同士の撮影禁止ってやつな。心配しなくても舞ちゃんいるから問題ねぇよ?』
言いながら八荒は遠巻きに仁王立ちしているトップガンダーを手招きした。
『はい準備オッケー!撮影始まるから急いで~』
舞がカーテンをめくって三人を呼ぶ。八荒に続いて流星とトップガンダーが中に入ると
『音声に合わせてポーズしてカメラ見てくれればいいから。カメラはここね』
舞が早口で説明した後、早速撮影が始まる。
流星はわけもわからず手をチョキにしてカメラに向かって笑顔…というか苦笑。かと思えば流星の隣でトップガンダーは棒立ちで無表情でピースすらしていない。一方で舞と八荒は慣れているのか色々ポーズを変えて撮影を楽しんでいる。
あれやこれやの間に撮影が終わって「次はらくがきタイム~🎵」と言われたが、あとは舞と八荒に任せて流星とトップガンダーはプリクラコーナーを離れた。
(っていうか…僕らはゲームセンター荒らしと話し合うために来たんじゃなかったっけ…?)当初の目的を思い返しながらゲームセンター内を歩いていると
『メタルダー、あれはなんだ』
トップガンダーが流星を呼び止めた。見ると彼が指差した先では中学生くらいの女子が二人で太鼓を叩いている。
『あれは…太鼓を叩いて遊ぶ…リズムゲーム…ってやつかな?』
流星自身も実際に見るのは初めてなので曖昧に説明した。
『試しに僕らもやってみる?』
と尋ねると
『断る』
あまり興味がないのかトップガンダーはきっぱり即答して先に歩き出す。
ぬいぐるみやアニメのフィギュアが景品のクレーンゲームのコーナーを素通りしたあと、何かに気づいて足を止めた。そこはどうやら体験型ゲームのコーナーで、ゾンビを撃つガンアクションゲームの前に男が三人座り込んでいるのが見えた。
ゲーム画面には過去にプレイした人たちの記録がランキング形式で発表されている。
『1位…クロスランダー…2位がスナイプ……?』
(あれ?クロスランダー…ってどこかで聞いたことあるような…)
ランキングを読み上げたあとでそんなことを考える流星にトップガンダーが
『クロスランダーとゴブリットとデデモスか』
と言った。
『え?』
『どうやらゲームセンター荒らしの正体はあの三人らしいな』
ゲームの前に座り込んでいるのはトップガンダーの元、同僚(?)。
『お前達こんなところで何をしている』
トップガンダーが三人に歩み寄って尋ねた。すると『ゲッ!!』一人があからさまにイヤそうな顔をして
『なんでテメェがここにいやがる!』
と言って立ち上がった。「それはこっちのセリフだが?」とトップガンダーが口にするより先に
『トップガンダー久しぶり~』
『元気だったか?』
妙にフレンドリーな二人が声をかけてくる。そんな二人にトップガンダーが
『お前達が噂のゲームセンター荒らしか』
と訊いてみると
『『ゲームセンター荒らし?』』
二人は揃って首を傾げた。
『なんだそれ?』
『初めて聞いたな』
顔を見合せながら話すのはデデモスとゴブリット。そしてもう一人は
『ここで会ったが百年目!オレと勝負しろトップガンダー!』
トップガンダーを一方的にライバル視しているクロスランダー。
『勝負?』
「勝負」と聞いてトップガンダーの眼の色が変わった…と思ったのは流星だけ。
『さすがに街中で銃を撃ち合うわけにはいかないからな。ここでこのゲームで勝負だ!』
言いながらクロスランダーは背後にあるゲーム機…ゾンビを撃つガンアクションゲームを指差した。
「俺はそのゲームとやらをやったことがない」とトップガンダーが口にする前に
『負けた方は一生相手の下僕だ』
クロスランダーはニヤリと笑ってそう告げた。それを聞いてトップガンダーよりも先に動いたのは流星。瞬転しそうな速さでクロスランダーに駆け寄ると彼の顔面を右手の掌でわしづかみにした。
『負けたら、一生、相手の、何…?』
ミシミシと嫌な音を鳴らす自分の頭を恐怖に感じながらクロスランダーが痛い痛いと大騒ぎするが店内の賑やかな音によってわざと聞こえないふりをしている。が
『いいだろう。その勝負受けてやる』
トップガンダーの一言に驚き、わしづかみにしていたクロスランダーを解放する。
『トップガンダー!?』
なんで?どうして?という意味を込めて名前を呼ぶと
『俺が勝ったらお前は一生下僕でいいんだな?』
言いながら彼はクロスランダーの正面に立つ。
『ハッ、オレがテメェに負けるわけないだろうが!』
クロスランダーはまだ痛みの残る頭をさすりながら精一杯強がってみせる。
それから二人はゲーム機のメイン画面の前にコントローラー代わりの銃を手にして横並びで立った。
『トップガンダー、やり方わかるの?』
心配した流星が尋ねると
『知らん』
彼は即答した上で
『要は如何に速く相手より多く正確にゾンビを撃ち殺すか、だろう?』
と言って不敵に笑って見せる。その邪悪だが自信に満ち溢れた顔に流星は何も言えず…苦笑しながら肩をすくめたのだった。
続く
『流星』
『何?スプリンガー』
『だからお前はどこへ向かっている』
『え~と…あくまでこっちは副業のつもりなんだけど……』
スプリンガーの問いかけに流星は苦笑しながら紅茶を淹れる。彼の隣では隻眼の彼がシフォンケーキを切り分けている。
『トップガンダー、シフォンケーキの他にガトーショコラもお願い』
『了解』
二人が用意しているのは客から注文された「ケーキセット」。その客というのは近くの駅を利用している電車通学の女子高生。
冷やかし…もとい、様子を見に来た舞と八荒が『ここって近くに駅があるじゃない?電車通学の高校生をターゲットにして学割のケーキセットを提供するのはどう?』『流星もトップガンダーも黙ってりゃイケメンだし、女子高生にウケると思うぜ?』と言ったのが始まりで、言われた通りの学割メニューを考え、トップガンダーにスイーツを作ってもらった。ら、見事にそれがはまったらしく……イケメンのいる喫茶店ということで話題になり、今では放課後になると電車通学じゃない女子高生までもがこぞって来店するようになった。
また、イケメンの噂を聞いて来店する主婦層も少なくない。
『客がまったく来ないよりはいいが…お前の言う本業はどうなってんだ』
『僕の本業っていうと…世界平和のために戦う正義のヒーロー的な?』
『否定はしないが…何でも屋の方はどうした』
『どうしたも何も…依頼が来ないからなぁ…』
スプリンガーの鋭い突っ込みに流星は苦笑するしかない。
実はスプリンガーのこの突っ込みは半ば八つ当たり。それは彼も喋るドーベルマンということで一時はそれなりに話題になった。が、やはりドーベルマンという犬種のせいか女子高生ファンはつかず…喫茶店の看板犬ではあるが流星やトップガンダーほどの人気はない。
『俺だって人間だったら流星もトップガンダーも足下に及ばないほどのイケメンに違いないんだからな』
壁に向かって独り言のように口にしているスプリンガーに流星は何も言えない。が、
『あ、スプリンガーほら、もうすぐお気に入りのモフモフうさちゃんが始まる時間だよ』
最近彼が気に入っているショートアニメが放送される時間になったのを知らせて話題を変える。するとスプリンガーは慌てた様子で階段を駆け上がっていった。これでしばらくは二階の事務所のテレビの前から動かない。
『メタルダー』
不意にトップガンダーに呼ばれて流星は顔をあげた。「何?」と尋ねる前に喫茶店のドアが開いて来客を知らせるベルが鳴る。「いらっしゃいませ」と挨拶するより先に
『流星さん!』
入ってきた客に名前を呼ばれた。誰かと思えばそれは
『舞さん』
仰木舞。彼女の後には当然のように北八荒の姿。二人はある意味ではここの常連である。
『どうしたの?』
と流星に尋ねられた舞はカウンター席に座りながら
『ちょっと気になる話を耳にしたんだけど』
と話を切り出す。そんな彼女の隣に座った八荒は流星に向かって「いつもの」と注文する。ちなみに八荒の言う「いつもの」とは学割ではないケーキセット。
『気になる話?』
舞に聞き返しながら流星はお湯を沸かし、隣ではトップガンダーが何も言わずにケーキを用意している。
『あのね、ゲームセンター荒らしがいるみたいなのよ』
『ゲームセンター…荒らし?』
(なんだろう…それ…)
初めて耳にする言葉に流星は首を傾げた。
『流星が何を想像してるか知らないが…ゲームセンターで暴れてるわけじゃなくてな、まぁ要するにゲームセンターに入り浸って他の客に迷惑かけてるような奴がいる、って話』
八荒がそう説明する。と
『へぇ~』
流星は素直に八荒を感心している。
『というわけでね、流星さん!』
『うん?』
流星の両手を舞が両手で包み込み、
『ゲームセンター荒らし、撃破しましょう!』
と言った。
『……はい?』
何が「というわけで」なのかわからないまま、流星はそのゲームセンター荒らしとやらに挑むことになっていた。
喫茶店の閉店後、改めてスプリンガーも交えて舞から詳しい話を聞いたところ
『待望の初仕事だな!』
誰よりも張り切るスプリンガー。その一方で
『まずはそのゲームセンター荒らしの人となりについて調べるべきじゃない?』
意外と慎重な流星。
『ねぇトップガンダー?』
隻眼の彼に意見を求めようとしたところ、彼は
『トップガンダー……何してるの?』
彼は、自身愛用のライフルを手入れしている最中で…
『ゲームセンター荒らしとやらを抹殺するんだろう?』
「任せろ。暗殺は得意だ」と言って不敵な笑みを浮かべられた流星は
『ノー!暗殺はノー!!』
思わず声を大きくして彼からライフルを取り上げる。彼が小さく舌打ちしたがそれは聞こえなかったふりをして
『撃破ってそういう意味じゃないからね。他のお客さんに対しての迷惑行為をやめてもらえればいいんだから、事を穏便に済ませるためにもまずは話し合おう!』
と宣言。それを聞いてスプリンガーとトップガンダーはなんとなくつまらなそうな雰囲気を醸し出していた。
翌日、流星とトップガンダーは舞と八荒に案内されながらゲームセンターにやってきた。明るい照明とあちこちから聞こえる賑やかな音。土曜日だからか小中学生の姿も多い。
(そういえば…ゲームセンターという名前は聞いたことあるけど実際に来たのは初めてだなぁ…)と周囲を見渡しながら流星は思う。
『じゃあ~まずはプリクラ撮りましょっか!』
突然舞が言い出して八荒が『賛成~!』と言ってバンザイする。
(プリクラ……って、女の子が撮るものじゃ…?え?男も撮っていいの?)と思った流星の横でトップガンダーは何かを見つめている。
『どうかした?』
と尋ねると彼は壁の貼り紙を指差した。見ると「男同士でのプリクラ撮影禁止」と大きな文字で書かれている。
『へぇ~~……ってことは僕ら撮っちゃダメなのかな?』
流星がつぶやいた直後
『流星~』
八荒に手招きされて歩み寄ると、舞が慣れた手つきで画面を操作していた。
『いいの?男子は撮影禁止って書いてあったよ?』
流星は八荒に訊いた。すると
『撮影禁止?そんなの初めて聞いたぞ』
そう言って八荒は目を丸くした。流星が貼り紙を指差すと
『あぁ~はいはい。男同士の撮影禁止ってやつな。心配しなくても舞ちゃんいるから問題ねぇよ?』
言いながら八荒は遠巻きに仁王立ちしているトップガンダーを手招きした。
『はい準備オッケー!撮影始まるから急いで~』
舞がカーテンをめくって三人を呼ぶ。八荒に続いて流星とトップガンダーが中に入ると
『音声に合わせてポーズしてカメラ見てくれればいいから。カメラはここね』
舞が早口で説明した後、早速撮影が始まる。
流星はわけもわからず手をチョキにしてカメラに向かって笑顔…というか苦笑。かと思えば流星の隣でトップガンダーは棒立ちで無表情でピースすらしていない。一方で舞と八荒は慣れているのか色々ポーズを変えて撮影を楽しんでいる。
あれやこれやの間に撮影が終わって「次はらくがきタイム~🎵」と言われたが、あとは舞と八荒に任せて流星とトップガンダーはプリクラコーナーを離れた。
(っていうか…僕らはゲームセンター荒らしと話し合うために来たんじゃなかったっけ…?)当初の目的を思い返しながらゲームセンター内を歩いていると
『メタルダー、あれはなんだ』
トップガンダーが流星を呼び止めた。見ると彼が指差した先では中学生くらいの女子が二人で太鼓を叩いている。
『あれは…太鼓を叩いて遊ぶ…リズムゲーム…ってやつかな?』
流星自身も実際に見るのは初めてなので曖昧に説明した。
『試しに僕らもやってみる?』
と尋ねると
『断る』
あまり興味がないのかトップガンダーはきっぱり即答して先に歩き出す。
ぬいぐるみやアニメのフィギュアが景品のクレーンゲームのコーナーを素通りしたあと、何かに気づいて足を止めた。そこはどうやら体験型ゲームのコーナーで、ゾンビを撃つガンアクションゲームの前に男が三人座り込んでいるのが見えた。
ゲーム画面には過去にプレイした人たちの記録がランキング形式で発表されている。
『1位…クロスランダー…2位がスナイプ……?』
(あれ?クロスランダー…ってどこかで聞いたことあるような…)
ランキングを読み上げたあとでそんなことを考える流星にトップガンダーが
『クロスランダーとゴブリットとデデモスか』
と言った。
『え?』
『どうやらゲームセンター荒らしの正体はあの三人らしいな』
ゲームの前に座り込んでいるのはトップガンダーの元、同僚(?)。
『お前達こんなところで何をしている』
トップガンダーが三人に歩み寄って尋ねた。すると『ゲッ!!』一人があからさまにイヤそうな顔をして
『なんでテメェがここにいやがる!』
と言って立ち上がった。「それはこっちのセリフだが?」とトップガンダーが口にするより先に
『トップガンダー久しぶり~』
『元気だったか?』
妙にフレンドリーな二人が声をかけてくる。そんな二人にトップガンダーが
『お前達が噂のゲームセンター荒らしか』
と訊いてみると
『『ゲームセンター荒らし?』』
二人は揃って首を傾げた。
『なんだそれ?』
『初めて聞いたな』
顔を見合せながら話すのはデデモスとゴブリット。そしてもう一人は
『ここで会ったが百年目!オレと勝負しろトップガンダー!』
トップガンダーを一方的にライバル視しているクロスランダー。
『勝負?』
「勝負」と聞いてトップガンダーの眼の色が変わった…と思ったのは流星だけ。
『さすがに街中で銃を撃ち合うわけにはいかないからな。ここでこのゲームで勝負だ!』
言いながらクロスランダーは背後にあるゲーム機…ゾンビを撃つガンアクションゲームを指差した。
「俺はそのゲームとやらをやったことがない」とトップガンダーが口にする前に
『負けた方は一生相手の下僕だ』
クロスランダーはニヤリと笑ってそう告げた。それを聞いてトップガンダーよりも先に動いたのは流星。瞬転しそうな速さでクロスランダーに駆け寄ると彼の顔面を右手の掌でわしづかみにした。
『負けたら、一生、相手の、何…?』
ミシミシと嫌な音を鳴らす自分の頭を恐怖に感じながらクロスランダーが痛い痛いと大騒ぎするが店内の賑やかな音によってわざと聞こえないふりをしている。が
『いいだろう。その勝負受けてやる』
トップガンダーの一言に驚き、わしづかみにしていたクロスランダーを解放する。
『トップガンダー!?』
なんで?どうして?という意味を込めて名前を呼ぶと
『俺が勝ったらお前は一生下僕でいいんだな?』
言いながら彼はクロスランダーの正面に立つ。
『ハッ、オレがテメェに負けるわけないだろうが!』
クロスランダーはまだ痛みの残る頭をさすりながら精一杯強がってみせる。
それから二人はゲーム機のメイン画面の前にコントローラー代わりの銃を手にして横並びで立った。
『トップガンダー、やり方わかるの?』
心配した流星が尋ねると
『知らん』
彼は即答した上で
『要は如何に速く相手より多く正確にゾンビを撃ち殺すか、だろう?』
と言って不敵に笑って見せる。その邪悪だが自信に満ち溢れた顔に流星は何も言えず…苦笑しながら肩をすくめたのだった。
続く