劇場版「ジャスティスタイガー」を公開初日に見に来たメタル田高校の面々。
北八荒は途中で正体不明の赤ん坊を拾って合流。
いざ映画鑑賞、という時に…
『全員動くな!この映画館は我々が占拠した!』
まさかのテロ発生。しかもその時剣流星とトップガンダーは劇場の外で
『TDF極東支部科学研究所所属イングラム・プリスケン』
一人の男性と対面していた。
『TDFということは…』
『はい。竜夫さんと同期です』
流星に尋ねられたイングラムはうなずき
『はじめまして、ですよね』
と流星の前に右手を差し出す。
『あ…はじめまして。兄がいつもお世話になってます』
挨拶しながら流星とイングラムは握手を交わす。
『本当に…よく似ていますね』
感心するイングラムに
『まぁ…兄弟ですから…』
と言って笑ってごまかそうとした流星だったが
『竜夫さんから聞いてます。貴方は竜夫さんをモデルにして造られた超人機だと』
イングラムは真実を知っていた。
(兄さん意外とおしゃべり…)
困惑する流星にイングラムからは衝撃的な一言が続いた。
『そして彼は貴方の奥様だと聞きました』
『えっ』
彼、とはもちろんトップガンダーのことで
『いや、彼は確かに将来的には僕のお嫁さんになる予定だけどまだ奥さんじゃなくて…もちろん奥様でも間違いじゃないんだけどむしろ正解といえば正解だし…』
直球で聞かれたものだから驚きと嬉しさで饒舌になる流星。すると
『誰が、誰の、なんだって?』
トップガンダーが流星のこめかみにライフルの銃口を押し付けながら聞いた。
『えーと、イングラムさんでしたっけ?TDFの科学研究所所属なんですよね?今日はどういったご用件ですか?観光?』
あわてた流星は話題を変えようとイングラムに尋ねる。
『そういえば…緊急事態なんですよね』
イングラムはつぶやくように口にすると
『実は…竜夫さんがいなくなってしまったんです』
流星に竜夫のIDカードを見せる。
『IDカードがないと連絡をとりあうことも出来ません』
『いなくなったって…何か事件に巻き込まれたとか?』
聞き返す流星に
『事件というか…事故というか…』
イングラムは言葉を濁す。
『事故?』
『正確には竜夫さんの不注意なんですけど…実は今、竜夫さんは子供の姿になっていまして…』
『それ…って…見た目は子供!頭脳は大人!迷宮なしの名探偵!に、なってるってことでしょうか!?』
流星の的外れな発言にイングラムは動じない。あえてスルーして
『子供…よりも小さな…赤ん坊になっています』
と言う。
『兄さんが…赤ん坊!?』
聞き返してから流星はふと思った。
(赤ん坊…?)
二人のやりとりを黙って聞いていたトップガンダーも(赤ん坊…)と考える。
『竜夫さんは自他共に認めるトラブルメーカーですから…もしかして貴方のところに来ているんじゃないかと思ったのですが…』
『あの~参考までに聞きたいんですけど…小さくなった兄さん…その…服などは…』
おそるおそる尋ねる流星。
『身につけていたのは大人サイズのTシャツ一枚…ほぼ全裸です』
というイングラムの返事を聞いて納得する。
『あの…非常に言いにくいんですけど…』
『ヤツならこの中だ』
流星より先にトップガンダーが言った。それも直球で。
『はい?』
『たぶん、間違いなく、兄さんです』
その頃劇場の中のベビー竜夫は…
(あかん…めっさトイレ行きたい…)
ある意味ピンチを迎えていた。
(赤ん坊やから紙おむつはかされてんねんけど…もしここで用を足して…何かの拍子に元に戻ったりした時は…むちゃくちゃ気まずいやん!)
じわじわと忍び寄る尿意と男のプライドの間で悩み、苦しむ。
(それでも限界が来たその時は…正体がばれる前に逃走する!)
『だぅ~…(頑張れ俺の膀胱ちゃん…)』
ベビー竜夫がぼそっとつぶやいたのを
『たろうちゃんなにかいった?』
夢は聞き逃さなかった。
『‥‥‥う?』
竜夫なりに精一杯可愛く振る舞ってみる。と
『だいじょーぶだよ』
夢はにっこり笑った。そして
『りゅうせいととっぷがんだがきてくれるからだいじょーぶ!それに、ほんとにあぶなくなったら、そんときはきっとじゃすてぃすたいがーがたすけてくれるよ』
と言う。
『だからぜったいだいじょーぶ!こわくないよ』
突然現れたテロリストに周りの大人たちはざわめき、不安になっている。そんな中で少女は笑った。
(ずいぶんと肝が座ってんな~それともそんだけ流星らを信じとるんか?)
『だいじょーぶだいじょーぶ』
そう言って夢はベビー竜夫の頭を撫でる。
(ほんまはめっちゃ怖いくせに…生意気にも強がりおってからに……こないな娘がこんだけ信じてるんやから…はよ助けにこいや!流星!!アンド嫁!!)

『ハクション!!』
劇場の外で流星が大きなくしゃみをしていた。
『風邪ですか?』
心配そうにイングラムが尋ねる。
『うーん…誰かが噂してるのかなぁ』
つぶやく流星にイングラムは
『超人機でも誰かに噂されるとくしゃみがでるんですか?』
と聞き、更に
『ということは超人機でもしゃっくりを百回したら死んでしまうんですか?』
と興味深そうに尋ねた。
『え~と…』
流星が返答に困っていると
『メタルダー、試しにしゃっくりしてみろ。百回』
トップガンダーが平然と言った。
『トップガンダーひどい…』
『さて、冗談はこれくらいにして…』
(真顔で冗談言ってる…この人はこういう人なんだ)
トップガンダーとイングラムの自分の扱いの酷さに流星は地味にショックを受ける。
『そろそろ人質の皆さんを救出しましょう』
『救出…』
イングラムの発言で流星は本当に緊急事態なのは劇場の中で起こっていることを思い出す。
『犯人の目星はついています。ペガッサ星人です』
『ペガッサ‥星人?』
聞いたことのない宇宙人の名前に流星は首を傾げる。
『ペガッサ星人は地球を目の敵にしているんです。それは地球連邦政府が彼らの故郷であるペガッサシティの爆発を阻止出来なかったことが原因なんですが…この話は話すと長くなるので控えます』
『えっ、逆に気になる…』
興味津々な流星を無視してイングラムは話を続ける。
『ペガッサ星人が不穏な動きをしてることは聞いていたので前もってガイアセイバーズに連絡しておきました』
『あ、じゃあ安心だね』
流星がホッとしたのもつかの間。
『ただ、突入するまでの時間稼ぎを誰かにしていただきたいんですよね』
そう言ってイングラムは流星を見つめる。
『はい…?』


『くそぅ…地球連邦政府め…一度ならず二度までもオレたちをコケにしやがって…』
劇場内で観客を人質に立てこもり中のテロリスト…もとい、ペガッサ星人。しかし外部からなんの反応もないことに苛立ち始めていた。
『こうなったら見せしめに人質を一人ずつ殺してやりましょう』
一人のペガッサ星人が物騒なことを言った直後‥
『レーザーアーム!』
誰も出入りが出来ないようにと取っ手部分に鎖を巻いて開かなくしていた扉が何者かによって開けられた。そうして現れたのは
『あ、良かった~。まだ映画始まってないみたいだね』
白い虎のマスクを被った男と、
『白々しいな』
黒い狼のマスクを被った男。そんな二人を見た夢が思わず叫んだ。
『じゃすてぃすたいがーとぶらっくうるふ~!!』
『は?』
『夢ちゃん?ジャスティスタイガーはわかるけどブラックウルフって?』
初めて聞く名前に八荒と舞は聞いた。
『あのね!ぶらっくうるふはやみのけしんくろじしていこくのうらぎりものなの!』
『闇の化身黒獅子帝国の裏切り者…』
『でもじゃすてぃすたいがーのおともだちなの!いっぴきおおかみでね、とっぷがんだみたいにかためなの~』
興奮しながら説明する夢の話を聞いて
『なるほど…帝国を裏切り正義に寝返ったライバルキャラってわけね…そんなの絶対人気出るじゃない!!』
舞にもそれが伝染。
『それ…まんまトップガンダーじゃん』
八荒の突っ込みは二人の耳に届かない。
『お前たちは一体何者だ!?』
いきなり現れた二人組にペガッサ星人は動揺。
『名乗るほどの者じゃないけど…通りすがりの正義の使者です』
「ジャスティスタイガー」の名台詞が登場し、何故か観客からは歓声があがる。
(さすがジャスティスタイガーファン…そうだよな、映画を見にくるほどだもんな…)
つい感心してしまう八荒。
(てか本当はジャスティスタイガーって俺が考えた架空のヒーローだったはずなんだけど…いつの間にか立派なヒーローになりやがって…)
八荒が感慨深そうに考えていたその時、一発の銃声が劇場内に鳴り響いた。何事かと思って音のした方を見ると、黒い狼のマスクの男…ブラックウルフの足元にポップコーンが散乱して甘い香りを漂わせている。
『あ、悪い。次はちゃんと当てるから』
一人のペガッサ星人が拳銃片手にそう言った。そして次の銃弾を装填した時、別の銃声が鳴り響く。それはブラックウルフのライフルでその銃弾はペガッサ星人の持つ拳銃をはじき飛ばした。
『な…っ』
驚くペガッサ星人たちにブラックウルフは
『食べ物を…粗末にするなぁぁぁぁ!!!!』
と吼える。それを合図にガイアセイバーズが突入してきてペガッサ星人たちは一網打尽。
『ご協力感謝します』
頭を下げるイングラムに
『礼はいらない。それよりポップコーンを弁償しろ』
トップガンダーは狼のマスクを脱ぎながら言う。と
『トップガンダー、ポップコーンなら僕が買ってあげるよ』
虎のマスクを脱ぎながら流星が言った。すると
『流星!トップガンダー!』
その時ちょうど八荒がやってきた。しかも
『あだ~(二人とも無事やったか~)』
ベビー竜夫も一緒に。
『竜夫さん…』
『お…ぅ…(イングラム…なんで…)』
『え?この赤ん坊の知り合い?』
話すと長くなるので八荒に詳しい話はしない。イングラムが
『坊っちゃん!どこ行ってらっしゃったんですか~心配しましたよ~?』
と言ってごまかす。
(あ、キャラ変わった。この人切り替えうまいな~)
なんて流星が感心しているところへ
『流星さん!』
『とっぷがんだ!』
舞と夢もやってきた。
『あら、太郎ちゃんの…お兄さんですか?』
イングラムに抱っこされるベビー竜夫を見て舞が聞くと
『たろーちゃんおうちかえるの?』
夢が淋しそうに聞いた。
『あぅ…』
返答に困るベビー竜夫だったが
『そっか~よかったね!』
夢はすぐに笑顔になってベビー竜夫の頭を撫でる。
『もうまいごになっちゃだめだよ?』
『だ~ぶ~』
ベビー竜夫が最後に何か言ったがそれは誰にも聞こえなかった。こうしてお騒がせな赤ん坊は静かに帰っていった。


『ただいま』
『おうお帰り流星』
『スプリンガー…どうしたの?いきなり大掃除?』
帰宅した流星を迎えたのは埃まみれのスプリンガーと散らかった部屋。
『ちょっと捜し物をな。どこにしまい込んだんだっけな~~』
言いながらスプリンガーは押し入れに頭を突っ込む。流星はそんな彼を放っておいてリビングのソファーに腰かけた。その時ふと一冊のアルバムが目にとまる。何気なく手を伸ばし中を見る。そこには見覚えのある赤ん坊の写真。
(あぁやっぱり…どこかで見た気がしたんだよね…)
自分の記憶は勘違いじゃなかったことがわかった流星はふっと笑った。


<終>