『メタルダー、明日ちょっと付き合ってほしいんだが』
部活が終わったあと、トップガンダーが剣流星にそう言った。
『え…?』
(それってもしかして…デートのお誘い!?)
期待に胸踊らせる流星だったが
『夢の入学準備をすっかり忘れていてな。ランドセルと学習机を買いに行きたいんだが…どこに行けばいいだろうか』
『両方揃えるならニ○リとか?』
『最近のランドセルってカラーが豊富よね~こだわるなら色々見たほうがいいんじゃないかしら』
トップガンダーは北八荒や仰木舞にも声をかけている。
明日は平日だが入試の都合で学校は休校。そこでトップガンダーは四月から小学生になる夢の入学準備をしようと考えているのだ。
『じゃあトップガンダーさんが銀行に行くことも考えて…待ち合わせは10時に駅前でいいかしら?』
『わかった』
そうしてトップガンダーが先に帰ったあと、流星はまだ夢見心地で…
『お~い流星~トップガンダー先帰ったぞ~?』
八荒に言われるまで彼がいなくなったことにも気付かなかった。
夢の銀行口座には毎月決まって匿名の振込がある。
ラプソディの話によればそれは夢の母親からの養育費。
だが、年に二度母親とはまた別の振込があって…それはもしかしたら父親からではないかとラプソディは思っていた。
ちなみに夢の養育費には今まで一切手をつけていない。
『ランドセル!ゆめのランドセル!ゆめね、あかいの!あかいランドセル~!』
『わかったわかった。夢の好きなランドセルを買っておいで』
『わーい♪』
『出来れば私が一緒に行きたいところなんだがなぁ…』
はしゃぐ夢を横目にラプソディは残念そうにつぶやいた。
『仕事、休めないんだろ?』
トップガンダーが冷静に言うと
『トップガンダー、くれぐれも頼んだぞ』
ラプソディは真剣な顔して彼に言った。
『…わかっている』
そして翌日、事件は起きた。
トップガンダーと夢が銀行での用を済ませて外に出ようとしたその時、
『全員動くな!』
覆面の男が三人、銀行に押し入ってきた。男達はその手に拳銃を持ち、銀行の職員を脅している。脅された職員はあわてて全てのシャッターを閉めた。中にいた人たちはトップガンダーと夢も含めて全員閉じ込められることになる。
(強盗か…面倒なことに巻き込まれたな…)
トップガンダーは冷静に今の状況を考える。
(三人‥手にはそれぞれ拳銃‥)
いつもならギターケースの中に愛用のライフルを入れて持ち歩いている彼だったが、今日は大きな買い物をする予定なので渋々家に置いてきたのだった。
(俺一人なら三人くらいどうってことないんだが…)
トップガンダーは横目で傍らの夢を見た。夢は彼の手をしっかり握っている。
(夢を危険な目に遭わせるわけにはいかないからな)
強盗たちは大きなカバンを職員に渡し、中に現金を入れるよう命令している。
(ここは下手に刺激するよりおとなしくしてたほうが得策だな。悪人の逮捕は警察に任せる…)
そう考えたトップガンダーは何も言わずに夢の手を握り返した。
一方‥
駅前にはすでに流星と舞の姿があった。そこへ
『お待たせ~』
八荒がやってくる。
『あれ…てっきり俺が最後かと思ったんだけど…もしかしてトップガンダーまだ?』
二人しかいない状況を見て八荒はそう尋ねる。
『トップガンダーさん銀行に寄ってから来るって言ってたし…銀行が混んでるのかもね』
時計を見ながら舞が言うと
『あ~銀行といえばさ、さっき銀行の前通ったら営業時間のはずなのにシャッター閉まっててさ、なんかすげー人が集まってた』
と八荒が話す。
『八荒それどこの銀行?』
流星が聞いた。
『どこってこの先の…』
と八荒が話し始めたその時、
「番組の途中ですがここで臨時ニュースをお伝えします」
駅前のビルに設置された巨大ビジョンに突然臨時ニュースが流れる。そして
『そうそうこの銀行!って…えぇぇっ!?』
八荒が話していた例の銀行前の映像が映し出された。
「八手銀行に覆面の男三人が押し入り、現在人質をとって立てこもっている模様。犯人は拳銃を所持しているようです」
現場の中継を見た八荒は
『まさかの銀行強盗…』
とつぶやく。すると
『八荒』
流星が八荒の肩に手を置いて
『ジャスティスタイガーの出番だね』
と無駄に爽やかに言った。
『…は?』
聞き返す八荒に
『心配しなくても虎のマスクならあるよ?』
と言って流星は懐からマスクを取り出す。
『いや、何故持ってる!?』
八荒は突っ込みながら虎のマスクを流星の懐に押し戻す。そして
『ジャスティスタイガーのこと、舞ちゃんには言ってないだろうな!?』
と小声で聞いた。
『言ってないよ』
という流星の返事を聞いて八荒が一安心したところで
『流星さん八荒さん!ちょっと銀行行ってみない?』
と舞が言う。流星と八荒は揃ってうなずき、三人は渦中の銀行へと向かうのだった。
現場となっている銀行では強盗が次の行動に移ろうとしていた。
『そこの子供、こっちへ来い』
突然、強盗の一人が夢を呼ぶ。
『…何をさせる気だ』
トップガンダーが夢の代わりに尋ねた。
『お前その子供の保護者か。だったらお前も手伝え』
男はそう言うとトップガンダーと夢に向かって奪った大金を詰めたカバンを放り投げる。
一人が逃走用の車を裏口に乗り付け、二人はカバンを運ぶトップガンダーと夢を見張りながら移動。
トップガンダーが持ってきたカバンをトランクに積むと
『子供、そのカバンはこっちだ』
男はそう言って後部座席のドアを開けた。そこに夢がカバンをのせようとした時
『夢待て!!』
トップガンダーが珍しく叫んだ。
『え?』
夢がその声に反応した次の瞬間、夢は男に突き飛ばされるようにして中に押し込まれる。
そのまま車は急発進し、トップガンダーだけがその場に残されていた。
銀行の前は刑事と機動隊、マスコミ、そしてたくさんの野次馬が集まりごったがえしている。
そこに流星、舞、八荒の三人もやってきたちょうどその時‥一台の車が猛スピードで走り去っていった。
『はえ~~』
感心するように八荒がつぶやくと
『あの車…中に女の子が乗ってた』
流星が言う。
『女の子?』
と舞が聞き返したあと
『犯人が少女を人質に車で逃走!』
警察がいきなりそう叫んだ。
ざわめきたつ銀行の前を一台の黒いオートバイが風のように走り去っていく。
『あれ?トップガンダー…?』
フルフェイスのヘルメットを被っていたにも関わらず、流星だけがその正体を一瞬で見破っていた。
逃走車を追いかける一台の黒いオートバイ。乗っているのはトップガンダー。
(ライフルさえあれば一発で仕留められるんだが…)
今日に限って愛用のライフルを持っていないことを後悔する。それでもなんとかして夢を救出しようと考えながら走っていた。そして彼は多少手荒だがひとつの方法を思いついた。
その頃逃走車の中では
『人質がいる限り警察も簡単には手を出せないだろう』
運転している男が被っていた覆面を脱ぎながら口にする。
『安心しろ。おとなしくしてりゃ命まではとらねーよ』
後部座席の夢の隣で男が同様に覆面を脱ぎながら言った。夢はそっぽを向いて返事をしない。
『誰か…追いかけてきてる…』
それにまず気付いたのは助手席の男だった。
『何?』
運転しながらバックミラーで確認すると、確かに黒いオートバイが自分たちを追いかけているように見える。
『白バイじゃないから警察ではないな…』
とりあえず少しだけスピードを上げてみる。しかしオートバイの姿が小さくなることはなく、それどころか横に並んだ。見覚えのある黒いオートバイに夢が目を向けるとそこに乗っている彼が夢に何かジェスチャーする。
(とっぷがんだ…?)
シートベルトをするようにと夢に伝えて、彼は運転席の横につく。
『くそ…っ』
男は思い切りアクセルを踏んだ。目の前の信号が黄色から赤に変わったが構わず突っ切った。
オートバイも後を追い、赤信号をそのまま通過する。
そうして再び運転席の横に並んだ時‥
ガシャンッ!
ためらうことなく窓ガラスを割り、ハンドルに手を伸ばした。
『んな…っ!?』
右手でオートバイを操縦し、左手で車のハンドルを握り、男の運転する方向とは逆に回す。
車は少しの蛇行のあと右に曲がり、歩道に乗り上げ街路樹に衝突して止まった。
並走していたオートバイも歩道に乗り上げたあと横転し、ガリガリガリという大きな音をたてて停止する。
『とっぷがんだ!!』
車の後部座席から無傷の夢が飛び出して横転したオートバイに駆け寄った。
『とっぷがんだ!だいじょぶ?いたい?いたい?』
今にも泣き出してしまいそうな少女に彼は
『…いたくない』
と答えて
『夢は、どこも痛くないか?』
と尋ねる。
『ゆめは、だいじょぶ…です』
という返事を聞いて
『そうか…』
決して『良かった』とは言わないが、彼は小さく微笑んだ。
その時、
『暴走ライダーが邪魔しやがって!!』
車から脱出した男が二人に向かってそう叫んだ。そして拳銃を取り出しその銃口を向ける。
『夢!』
彼は少女の名前を呼んだ。少女に駆け寄ろうとした。しかし自分が思っている以上にダメージは大きく体は動かない。
(こんな時に…!)
せめて精一杯手を伸ばす。
次の瞬間、少女の体が宙に浮いた。そして聞こえた。
『怒りのG(ジャスティス)キック!!』
少女を救ったのは通りすがりの正義の使者。
『正確にはジャスティスの頭文字は「J」なんだけどね』
そう言って正義の使者はマスクの下で苦笑した。
『トップガンダー!』
『なんだ騒々しい』
『なっ…人が心配してやってんのに騒々しいとはなんだ!』
暴走ライダーと通りすがりの正義の使者の活躍で、強盗は無事逮捕された。が、
『速度超過と信号無視で説教された』
『それは…しょうがないんじゃね?まぁ免許取消しにならなくて良かったじゃん!てかトップガンダー免許とバイク持ってたんだな』
『学園では特に禁止されてなかったからな』
トップガンダーと八荒がそんなことを話している傍では
『夢ちゃ~ん無事で良かったわ~~』
『まいちゃん、ゆめ、がんばった~!』
舞と夢が感動の再会。
『ところで夢ちゃん、今日幼稚園は?』
『きょおはおやすみ~』
『違うだろう。インフルエンザが流行しているための休園だ』
『そうなのです!だからゆめ、ランドセルかいにきたの!』
夢が笑顔でそう宣言したところへ
『みんなお待たせ』
流星が爽やかにやってくる。
『流星さん、今までどこに行ってたの?』
『え?えーと…一応犯人逮捕の協力を…』
『りゅうせい!ゆめね、とらにたすけてもらった!』
『あぁ、ジャスティスタイガー?』
舞と夢はジャスティスタイガーの正体を知らない。というか、八荒がヒーローは正体を明かさないものだと言うので流星もあえて今日のジャスティスタイガーが自分だとは言わないでいた。
『流星、マスコミに囲まれてなかったか?』
八荒がこっそり聞いた。
『うん。でもあくまで自分は通りすがりの正義の使者で、地球での活動時間は3分が限界なので‥って言って逃げてきた』
と言って流星はまた無駄に爽やかに笑う。それから
『トップガンダー大丈夫?けっこう派手に転んだみたいだけど』
とトップガンダーに声をかける。
『歩くのがつらいなら僕がお姫様抱っこしてあげるよ?』
『断る』
トップガンダーに即答された流星は苦笑したあと
『さぁ夢ちゃん、ランドセル買いに行こうか』
夢に向かって手を出した。
『うん!』
夢は大きくうなずいて流星と手をつなぐ。そして
『とっぷがんだ、いこ?』
トップガンダーに手を差し出す。彼は何も言わずにその手をつないだ。それだけで夢は嬉しそうに笑った。
翌日の新聞の一面を「通りすがりの正義の使者ジャスティスタイガー」が飾り、その後ジャスティスタイガー探しがおこなわれ…ほとぼりが冷めた頃まさかの特撮ヒーロードラマ化が発表されたりするのだが‥‥‥
それはまだしばらく先の話。
<終>
部活が終わったあと、トップガンダーが剣流星にそう言った。
『え…?』
(それってもしかして…デートのお誘い!?)
期待に胸踊らせる流星だったが
『夢の入学準備をすっかり忘れていてな。ランドセルと学習机を買いに行きたいんだが…どこに行けばいいだろうか』
『両方揃えるならニ○リとか?』
『最近のランドセルってカラーが豊富よね~こだわるなら色々見たほうがいいんじゃないかしら』
トップガンダーは北八荒や仰木舞にも声をかけている。
明日は平日だが入試の都合で学校は休校。そこでトップガンダーは四月から小学生になる夢の入学準備をしようと考えているのだ。
『じゃあトップガンダーさんが銀行に行くことも考えて…待ち合わせは10時に駅前でいいかしら?』
『わかった』
そうしてトップガンダーが先に帰ったあと、流星はまだ夢見心地で…
『お~い流星~トップガンダー先帰ったぞ~?』
八荒に言われるまで彼がいなくなったことにも気付かなかった。
夢の銀行口座には毎月決まって匿名の振込がある。
ラプソディの話によればそれは夢の母親からの養育費。
だが、年に二度母親とはまた別の振込があって…それはもしかしたら父親からではないかとラプソディは思っていた。
ちなみに夢の養育費には今まで一切手をつけていない。
『ランドセル!ゆめのランドセル!ゆめね、あかいの!あかいランドセル~!』
『わかったわかった。夢の好きなランドセルを買っておいで』
『わーい♪』
『出来れば私が一緒に行きたいところなんだがなぁ…』
はしゃぐ夢を横目にラプソディは残念そうにつぶやいた。
『仕事、休めないんだろ?』
トップガンダーが冷静に言うと
『トップガンダー、くれぐれも頼んだぞ』
ラプソディは真剣な顔して彼に言った。
『…わかっている』
そして翌日、事件は起きた。
トップガンダーと夢が銀行での用を済ませて外に出ようとしたその時、
『全員動くな!』
覆面の男が三人、銀行に押し入ってきた。男達はその手に拳銃を持ち、銀行の職員を脅している。脅された職員はあわてて全てのシャッターを閉めた。中にいた人たちはトップガンダーと夢も含めて全員閉じ込められることになる。
(強盗か…面倒なことに巻き込まれたな…)
トップガンダーは冷静に今の状況を考える。
(三人‥手にはそれぞれ拳銃‥)
いつもならギターケースの中に愛用のライフルを入れて持ち歩いている彼だったが、今日は大きな買い物をする予定なので渋々家に置いてきたのだった。
(俺一人なら三人くらいどうってことないんだが…)
トップガンダーは横目で傍らの夢を見た。夢は彼の手をしっかり握っている。
(夢を危険な目に遭わせるわけにはいかないからな)
強盗たちは大きなカバンを職員に渡し、中に現金を入れるよう命令している。
(ここは下手に刺激するよりおとなしくしてたほうが得策だな。悪人の逮捕は警察に任せる…)
そう考えたトップガンダーは何も言わずに夢の手を握り返した。
一方‥
駅前にはすでに流星と舞の姿があった。そこへ
『お待たせ~』
八荒がやってくる。
『あれ…てっきり俺が最後かと思ったんだけど…もしかしてトップガンダーまだ?』
二人しかいない状況を見て八荒はそう尋ねる。
『トップガンダーさん銀行に寄ってから来るって言ってたし…銀行が混んでるのかもね』
時計を見ながら舞が言うと
『あ~銀行といえばさ、さっき銀行の前通ったら営業時間のはずなのにシャッター閉まっててさ、なんかすげー人が集まってた』
と八荒が話す。
『八荒それどこの銀行?』
流星が聞いた。
『どこってこの先の…』
と八荒が話し始めたその時、
「番組の途中ですがここで臨時ニュースをお伝えします」
駅前のビルに設置された巨大ビジョンに突然臨時ニュースが流れる。そして
『そうそうこの銀行!って…えぇぇっ!?』
八荒が話していた例の銀行前の映像が映し出された。
「八手銀行に覆面の男三人が押し入り、現在人質をとって立てこもっている模様。犯人は拳銃を所持しているようです」
現場の中継を見た八荒は
『まさかの銀行強盗…』
とつぶやく。すると
『八荒』
流星が八荒の肩に手を置いて
『ジャスティスタイガーの出番だね』
と無駄に爽やかに言った。
『…は?』
聞き返す八荒に
『心配しなくても虎のマスクならあるよ?』
と言って流星は懐からマスクを取り出す。
『いや、何故持ってる!?』
八荒は突っ込みながら虎のマスクを流星の懐に押し戻す。そして
『ジャスティスタイガーのこと、舞ちゃんには言ってないだろうな!?』
と小声で聞いた。
『言ってないよ』
という流星の返事を聞いて八荒が一安心したところで
『流星さん八荒さん!ちょっと銀行行ってみない?』
と舞が言う。流星と八荒は揃ってうなずき、三人は渦中の銀行へと向かうのだった。
現場となっている銀行では強盗が次の行動に移ろうとしていた。
『そこの子供、こっちへ来い』
突然、強盗の一人が夢を呼ぶ。
『…何をさせる気だ』
トップガンダーが夢の代わりに尋ねた。
『お前その子供の保護者か。だったらお前も手伝え』
男はそう言うとトップガンダーと夢に向かって奪った大金を詰めたカバンを放り投げる。
一人が逃走用の車を裏口に乗り付け、二人はカバンを運ぶトップガンダーと夢を見張りながら移動。
トップガンダーが持ってきたカバンをトランクに積むと
『子供、そのカバンはこっちだ』
男はそう言って後部座席のドアを開けた。そこに夢がカバンをのせようとした時
『夢待て!!』
トップガンダーが珍しく叫んだ。
『え?』
夢がその声に反応した次の瞬間、夢は男に突き飛ばされるようにして中に押し込まれる。
そのまま車は急発進し、トップガンダーだけがその場に残されていた。
銀行の前は刑事と機動隊、マスコミ、そしてたくさんの野次馬が集まりごったがえしている。
そこに流星、舞、八荒の三人もやってきたちょうどその時‥一台の車が猛スピードで走り去っていった。
『はえ~~』
感心するように八荒がつぶやくと
『あの車…中に女の子が乗ってた』
流星が言う。
『女の子?』
と舞が聞き返したあと
『犯人が少女を人質に車で逃走!』
警察がいきなりそう叫んだ。
ざわめきたつ銀行の前を一台の黒いオートバイが風のように走り去っていく。
『あれ?トップガンダー…?』
フルフェイスのヘルメットを被っていたにも関わらず、流星だけがその正体を一瞬で見破っていた。
逃走車を追いかける一台の黒いオートバイ。乗っているのはトップガンダー。
(ライフルさえあれば一発で仕留められるんだが…)
今日に限って愛用のライフルを持っていないことを後悔する。それでもなんとかして夢を救出しようと考えながら走っていた。そして彼は多少手荒だがひとつの方法を思いついた。
その頃逃走車の中では
『人質がいる限り警察も簡単には手を出せないだろう』
運転している男が被っていた覆面を脱ぎながら口にする。
『安心しろ。おとなしくしてりゃ命まではとらねーよ』
後部座席の夢の隣で男が同様に覆面を脱ぎながら言った。夢はそっぽを向いて返事をしない。
『誰か…追いかけてきてる…』
それにまず気付いたのは助手席の男だった。
『何?』
運転しながらバックミラーで確認すると、確かに黒いオートバイが自分たちを追いかけているように見える。
『白バイじゃないから警察ではないな…』
とりあえず少しだけスピードを上げてみる。しかしオートバイの姿が小さくなることはなく、それどころか横に並んだ。見覚えのある黒いオートバイに夢が目を向けるとそこに乗っている彼が夢に何かジェスチャーする。
(とっぷがんだ…?)
シートベルトをするようにと夢に伝えて、彼は運転席の横につく。
『くそ…っ』
男は思い切りアクセルを踏んだ。目の前の信号が黄色から赤に変わったが構わず突っ切った。
オートバイも後を追い、赤信号をそのまま通過する。
そうして再び運転席の横に並んだ時‥
ガシャンッ!
ためらうことなく窓ガラスを割り、ハンドルに手を伸ばした。
『んな…っ!?』
右手でオートバイを操縦し、左手で車のハンドルを握り、男の運転する方向とは逆に回す。
車は少しの蛇行のあと右に曲がり、歩道に乗り上げ街路樹に衝突して止まった。
並走していたオートバイも歩道に乗り上げたあと横転し、ガリガリガリという大きな音をたてて停止する。
『とっぷがんだ!!』
車の後部座席から無傷の夢が飛び出して横転したオートバイに駆け寄った。
『とっぷがんだ!だいじょぶ?いたい?いたい?』
今にも泣き出してしまいそうな少女に彼は
『…いたくない』
と答えて
『夢は、どこも痛くないか?』
と尋ねる。
『ゆめは、だいじょぶ…です』
という返事を聞いて
『そうか…』
決して『良かった』とは言わないが、彼は小さく微笑んだ。
その時、
『暴走ライダーが邪魔しやがって!!』
車から脱出した男が二人に向かってそう叫んだ。そして拳銃を取り出しその銃口を向ける。
『夢!』
彼は少女の名前を呼んだ。少女に駆け寄ろうとした。しかし自分が思っている以上にダメージは大きく体は動かない。
(こんな時に…!)
せめて精一杯手を伸ばす。
次の瞬間、少女の体が宙に浮いた。そして聞こえた。
『怒りのG(ジャスティス)キック!!』
少女を救ったのは通りすがりの正義の使者。
『正確にはジャスティスの頭文字は「J」なんだけどね』
そう言って正義の使者はマスクの下で苦笑した。
『トップガンダー!』
『なんだ騒々しい』
『なっ…人が心配してやってんのに騒々しいとはなんだ!』
暴走ライダーと通りすがりの正義の使者の活躍で、強盗は無事逮捕された。が、
『速度超過と信号無視で説教された』
『それは…しょうがないんじゃね?まぁ免許取消しにならなくて良かったじゃん!てかトップガンダー免許とバイク持ってたんだな』
『学園では特に禁止されてなかったからな』
トップガンダーと八荒がそんなことを話している傍では
『夢ちゃ~ん無事で良かったわ~~』
『まいちゃん、ゆめ、がんばった~!』
舞と夢が感動の再会。
『ところで夢ちゃん、今日幼稚園は?』
『きょおはおやすみ~』
『違うだろう。インフルエンザが流行しているための休園だ』
『そうなのです!だからゆめ、ランドセルかいにきたの!』
夢が笑顔でそう宣言したところへ
『みんなお待たせ』
流星が爽やかにやってくる。
『流星さん、今までどこに行ってたの?』
『え?えーと…一応犯人逮捕の協力を…』
『りゅうせい!ゆめね、とらにたすけてもらった!』
『あぁ、ジャスティスタイガー?』
舞と夢はジャスティスタイガーの正体を知らない。というか、八荒がヒーローは正体を明かさないものだと言うので流星もあえて今日のジャスティスタイガーが自分だとは言わないでいた。
『流星、マスコミに囲まれてなかったか?』
八荒がこっそり聞いた。
『うん。でもあくまで自分は通りすがりの正義の使者で、地球での活動時間は3分が限界なので‥って言って逃げてきた』
と言って流星はまた無駄に爽やかに笑う。それから
『トップガンダー大丈夫?けっこう派手に転んだみたいだけど』
とトップガンダーに声をかける。
『歩くのがつらいなら僕がお姫様抱っこしてあげるよ?』
『断る』
トップガンダーに即答された流星は苦笑したあと
『さぁ夢ちゃん、ランドセル買いに行こうか』
夢に向かって手を出した。
『うん!』
夢は大きくうなずいて流星と手をつなぐ。そして
『とっぷがんだ、いこ?』
トップガンダーに手を差し出す。彼は何も言わずにその手をつないだ。それだけで夢は嬉しそうに笑った。
翌日の新聞の一面を「通りすがりの正義の使者ジャスティスタイガー」が飾り、その後ジャスティスタイガー探しがおこなわれ…ほとぼりが冷めた頃まさかの特撮ヒーロードラマ化が発表されたりするのだが‥‥‥
それはまだしばらく先の話。
<終>