上越行きの列車の中で思い出したのは
この日のことやってんけど、
このジョークの精神って
黒人社会のカルチャーなんだろうなぁ。

たった一日しかいなかってんけど
人生の中でとても意味ある一日
だったような気がする。


いつも、俺を引っ張ってきてくれた
黒人音楽のルーツの土地、
ディープサウスって言われてた場所で
リアルな普通の黒人家庭に
触れることができてんから。

それは13歳くらいの時
R&Bを好きになった自分への
回帰だったり、
思い切り憧れては思い切り夢見た
その夢の結実の日のように思えた。

夢とはとんでもない時に実を結ぶ。

世の中なんて何もわからなかった
13~14の頃
レコードから流れるR&Bシンガーの
歌声を通して、
あれやこれや想像してた
その土地に立ったのがあの日だ。

ずーっと忘れていたことやってんけど
みんなとジョークの渦にまみれながら
フッと気がついてん。

「あーそうか。夢見た世界やんか」って。

最後に行った一人暮らしのおじさんと
フレディーとお兄さん
この3人はピカイチのジョーカー達。

俺にも分かる簡単な英語を使って
ジョークの連発で
腹を抱えて笑った後
空港に送ってくれた。

その途中、信号待ちをしていると
突然大声で
「フレディー!」って叫び声が聞こえる。

顔真っ赤にして走ってきたのは
名前は忘れてしまってんけど
小さい時から長い間、
お兄さんとフレディーと
一緒にゴスペルチームを作ってた大親友。

穏やかで見るからに人の良さそうな彼と
昔、通っていた教会の十字架の前で
再開を懐かしんでた。

別れ際にあのゴスペルナンバー
覚えてるかってことになって、
みんなでハモリだした!

それはまるで映画のラストシーンのように、
深く俺の胸の中に刻まれてる。

教会の十字架の前で
半べそになって歌ってる向こうに、
教会の庭にライティングされた
噴水が立ち上がり、
夕陽がオレンジに空を染めていた。

ほんまにこの日、
スペシャルな一日の終わりに
ふさわしいラストシーンだった。


こんな瞬間に出会わせてくれたのは、
この教会の中の神様の力
ちゃうかなと思えてしまうような
偶然が重なって、
アメリカ旅行の
最大のクライマックスとなった。

日本に帰ってきて月日が経つにつれ
アメリカで起こったいろんな出来事を
どんどん忘れてしまってるけど、
あの夜のあのシーンだけは、
この先何十年経っても
絶対忘れないだろうと思う。

列車の中はまだ笑いの渦が続いている。
白昼夢のように
アメリカ旅行を思い出してた
俺のことなどお構いなしに
ワイワイガヤガヤは今も続いている。

この止めどないエネルギーに脱帽です。