ラスベガスでショーを観て、
ニューオリンズでライブを楽しんで、
フレディーの家がある
アラバマのバーミンハムって街に乗り込んだ。

空港でお母さんとお兄さんが
出迎えてくれたけど
ついさっきまであんなに
陽気にはじゃいでたフレディーが

お母さんと抱き合うなり
ドバーっと泣き出してしまった。

この辺りが分からんとこやねん。

ついさっきまで
ワイワイガヤガヤやってたのに
何の前ぶれもなく急な涙やから。

俺、どうしていいのかわからなくて
泣き止むまで横でジーットとしてた。


それから、まずはお母さんの家へ
みんなで行った。

なんでお母さんの家かと言うと、
お父さんとは離婚してるから。

お母さんの家にはお姉さんや妹が集まって
ホームパーティーが始まってんけど
なんかお邪魔虫のようで
小さくなってる俺を
みんなが気を使いまくってくれて
その細やかな心遣いに
日本の田舎や温泉に行ったような
ホノボノとした気分になってしまった。
 
その辺りは黒人だけが住む
ベッドタウンだけど
どの家も大きな庭と
形の良い街路樹が立ち並んで
リスがチョロチョロしてて
日本で言えば高級住宅街のような世界。


フレディー曰く
「貧しくはないけど、豊かでもない。
 これがごく普通の黒人の暮らし」とのこと。

銃とか麻薬とは程遠い、
のどかな街並みを見て
本当に何も知らなかったことを
改めて知った。

普段昼寝なんてしたことないのに
穏やかなフレディー家の人達の
温もりに包まれて、久しぶりに
気持ちいい昼寝をしてしまった。


目が覚めると、お母さんが
出かける用意をしている。

お父さんが来るので会いたくないらしい。

お母さんと入れ替わりに
お父さんがやって来た。

「ハデ!!!」

やたら派手なお父さん。

このあたりでは、
名の通ったゴスペル系の
ギターリストらしい。

満面の笑みを浮かべた
底抜けに陽気な人だ。


この後、お父さんの家に行ったり
お兄さんの家に行ったり
おじいちゃんの家に行ったり
おじさんの家と
あっちこっち転々としてんけど
まぁ本当によくしゃべる。

ジョークの連発やねん。

次から次へと笑いの渦って感じで
笑い声が途切れることがなかった。


つづく