私が生徒さんの楽譜に一切書き込みをしない理由。 | 「Rain」~私の頭の中の専門書~

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東京で活動する、ピアノ&作曲家、Mario IwaiのWebコラム
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はい、marioです。

 

私はピアノを人前で演奏したり、このコラムでも解説をさせていただいていますが、

 

希望される方には、ピアノのレッスンを実施しています。

 

本日のテーマはですね、先生、講師、つまりピアノを教える立場の視点から、

 

生徒さんの楽譜に書き込みをすることが、いかなることなのか?

 

ということについてお話していきたいと思います。

 

 

 

結論から申し上げますと、

 

私は、生徒さんの楽譜に書き込みをすることは、ほとんどありません。

 

「ほとんど」というのは、生徒さんから書いてもらって良いですか?

 

と頼まれたときだけは、書き込みをします。

 

ただ、頼まれたとき以外で、書き込みをすることはありません。

 

 

 

なぜかと言いますと、

 

第一には、そもそも他人の物じゃん?私物ではないでしょう??

 

という理由です。

 

先生だからといって、勝手に書き込みをして良い理由にならないかな、

 

と私は思っています。

 

 

 

そしてもう一つ、こちらがメインの理由ですね。

 

書き込みを行うということは、将来的に、その書き込み縛られて演奏することになる。

 

ということです。

 

先生が書いたから(おっしゃったから)、そうやって弾かなければならない、

 

という刷り込み、思い込み、強迫観念を生み出してしまう可能性がある、ということですね。

 

この考え方は、

 

マリア・ジョアン・ピレシュというピアニストの、スーパーピアノレッスンを見た時に、

 

彼女が言っていたのですが、

 

昨日の演奏と今日の演奏は違う、今日の演奏と明日の演奏は違う、

 

同じように演奏することはない、それで良い。

 

書き込みがあることで、それに縛られて演奏することになる。

 

というところから来ています。

 

彼女は、楽譜に書き込みをしないそうです。

 

 

 

そもそも、

 

私たちピアノを教える立場の人間から、生徒さんに提示する解釈というのは、

 

数多く存在する中の、ほんの一例に過ぎません。

 

楽譜に色んなエディションが存在するのと同じように、絶対的なものではないはずです。

 

ピアニストの数だけ、その人なりの弾き方や表現が存在します。

 

しかし、

 

先生がこう書いた!それはその生徒さんの楽譜に残りますよね。

 

先生がそうおっしゃったのだから、そうやって演奏しなくてはいけない!と、

 

思い込んでしまう場合があります。

 

 

 

もちろん、上手く弾けないうちはそれでも良いかもしれませんが、

 

ある程度、上手く弾けるようになった時、

 

もっと良い解釈が見つかった、あるいは私の書いたことがしっくりこない、

 

先生はここは強く、ここは速く!と言って書き込みをしたけれど、

 

成長して、ある程度弾けるようになった生徒さんが、

 

でも、ここは少し弱く弾いたほうが良いのではないか、

 

少し間をとって演奏したほうが良いのではないか、等々、もしもそう思った時に、

 

でも、先生はああいう風におっしゃっていたし、、、と、

 

私の書いた書き込みが、生徒の演奏の妨げになる可能性はないだろうか??

 

ということです。

 

 

 

これは、先生と生徒との関係だけでなく、

 

親子関係だったり、家族関係などでも、かなり当てはまる部分があると思います。

 

お母さんがああ言ったから、お父さんがこうしてたから、

 

知らず知らず、自分もそうなっている、

 

でも、それが正しいかどうかなんて、わからないですよね?

 

親だって間違えますもの。

 

先生が言っていることだって、全てが正しいわけではないですよね?

 

でも、それが刷り込みとなって、大人になっても、あるいは、死ぬまでずっと、

 

頭の中に、そして心の中に、残ってしまいます。

 

一度、刷り込まれたものは、なかなか消すことが難しいのです。

 

 

 

教える、ということは、

 

ある程度は、その人に進んでいく道筋を示してあげることです。

 

絶対的なものではないにしろ、生徒さんは自分一人で進むことが難しいから、

 

私のレッスンにいらしているわけですから。

 

あなたは、こちらに進んでいくと、もっと良くなると思うよ!と言ってあげることです。

 

しかしながら、

 

それを目に見えるような形として残すことで、

 

逆に、その人の成長の妨げになることが、全く無いのかどうか??という、

 

その先の影響も、考えなくてはならないということです、教える立場であるならば。

 

 

 

もちろん、言葉ではしっかりと生徒さんにお伝えします。

 

お手本、デモンストレーションも必要であれば見せます。

 

私は、生徒さんが弾く曲は、必ず自分でも弾きます。

 

でないと、どこか難しくて弾きづらいのか、どうやって練習していったら克服できるのか等、

 

そもそも、教えることができませんよね??

 

自分でその曲の難しさを体感していないのに、教えるということ自体、出来ないと思います。

 

しかしながら、生徒さんが、

 

私と全く同じように弾けば良い!という問題でもないですよね。

 

 

 

ですので、

 

アドバイスは「書き込み」という形として、後に残るものにはしない、

 

ということです。

 

ただし、生徒さんが録音したい、動画に残したいという場合は、許可しています。

 

 

 

ピアノ・音楽というのは、あらかじめ決め打ちして演奏するもの、弾くものではありません。

 

ある種の即興性や、生き物のように、その人の息遣いがそのまま現れることこそ、

 

音楽です。

 

私が生徒さんに伝えた言葉、それはいったん受け止めてもらい、

 

できれば、最初はまる飲みしてほしいですが、

 

後になって、これは必要ないな~と思うものについては、迷わず捨てて構いません。

 

 

 

私は、ピアノの先生の最大目標は、

 

先生を超える生徒を生み出すことであると思っています。

 

当然ながら、私のコピーを生み出すことではないのです。

 

ただそれは、単純に技術的とか、テクニック、あるいはコンクールで賞を取るとか、

 

そういった限定的で、表面的なことではありません。

 

 

 

私が持っている、知識や技術、ピアノや音楽におけるすべての要素を、

 

後ろの世代や、まだ私が出会っていない様々な人たちへ、

 

様々な方向へ広めていける、繋いでいける人を生み出す、ということです。

 

これがピアノの先生、教える立場として、とても重要なことだと、

 

私は思います。

 

 

 

私がピアノを教えているのは、私と同じように弾く人を作り出すためではない。

 

だから、私は生徒さんの楽譜には、書き込みを極力しません。

 

もしその生徒さんが、将来的に自分一人の力で進めるようになったとき、

 

私が伝えたものの中で、要らないものをしっかり捨てられるように、私の言葉に縛られないように。

 

 

 

では、自分自身で書き込んだものはどうなのか?

 

これはこれでアリだと思います。

 

それは、自分の自身の意思で書いたものですから、自分でそう決めたことです。

 

やっぱり違っていたと思えば、自分で消すのもたやすいでしょう。

 

だから、私の言った言葉を、生徒さんが自分自身で書き込む分には、私は止めません。

 

自分で書いたものは消せますからね。

 

でも、他人から言われた(書き込まれた)ものを消すのは、意外と難しいと思います。

 

 

 

実際、私の楽譜には、指番号などは書き込んであります。

 

暗譜するのにも、指番号で覚えるのも、一つの手段ですしね。

 

私も、昔、学生時代だったときは、かなり書き込んでいました。

 

書き込まないと忘れてしまうこともありますしね。

 

でも今は、書き込みが必要であればしますが、ほとんどしなくなりましたね。

 

 

 

別に、毎回同じように弾かなくても良いのでは?

 

と思うようになったからです。

 

その一瞬一瞬、その時のベストの演奏をすれば良いだけであって、

 

絶対的な頂点は、そもそも存在しないからです。

 

芸術の桃源郷は、世界のどこにも存在しないのです。

 

自分自身の心の中だけに、存在するものです。

 

クレッシェンド一つとっても、そのかけかたは、人によっても違うし、場面によっても違います。

 

毎回同じようなニュアンスのクレッシェンドで良いものだろうか??とも思いますし、

 

かといって、絶対に毎回違うニュアンスで準備しなければならないのか?というのも、

 

そもそも無理をしていますから、演奏がとても不自然になりますよね。

 

 

 

あくまで、自然に音を出して音楽を作っていく。

 

それが最も重要なことではないでしょうか。

 

 

 

本日は、私が生徒さんの楽譜に書き込みをしない理由!でした。

 

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それでは、次回の更新もお楽しみに!