ショパンのエチュードを弾く時の注意点!vol.1 | 「Rain」~私の頭の中の専門書~

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はい、marioです!


本日は、ショパンのエチュードを弾く時の注意点!vol.1


ということで、書いていきたいと思います。


一応シリーズものですが、


以前の教材のときとは違って、不定期の更新になりますので、ご了承ください。



そして、もちろん!


「重力奏法で弾く!」、ショパンのエチュードです!


タイトルは、教材との区別化をするために、敢えて、


重力奏法という用語は外しましたが、私がショパンを解説する際には、


必ず、「重力奏法」という言葉が、キーワードになりますので、


覚えておいてくださいね。




前置きはこれくらいにして、


第一回目は、ショパンのエチュード、Op.25-11の「木枯らし」


を取り上げたいと思います!




解説の前半は、テクニカルな部分をクリアにすること、


後半では、曲想、つまり曲の中身について(特に和声の解釈について)


とり上げていきたいと思います。




とにもかくにも、非常に難曲ですよね。


そして、人気のある曲でもありますが、(私も実はレパートリーの中の一曲です。)


ショパンのエチュードの中では、かなりボリューム感のある曲で、


上手く仕上げるのには、かなり苦労するうちの一曲ではないでしょうか。




まず、苦戦を強いられるのは、主に右手、


音階的に下がってくる6連符の形、そして、分散和音的に上下する音型の形。


この二つの要素だと思います。


どちらにせよ、右手の6連符は、かなり粒をハッキリ聴かせる必要がありますので、


とても強靭なタッチを要求されるわけですが、


ここで、落とし穴が待っています。


次の画像をご覧ください。




皆さんの手の形、「一個一個の音をしっかり弾こう!」と意識し過ぎるあまり、


こんな風にはなっていませんか??


これでは、手首も肘も、無駄な力が入っていて、


非常に安定感を欠いてしまいます。




木枯らしを演奏しているの見たり、聴いたりしたとき、


手や、肘がグラグラ~と波打っているような、


そんな光景を、私はよく見かけます。


これは、分散和音の音型のところで上がっていくとき、(または下降するときに、)


親指で打鍵する際に、指の下をくぐらせたり、親指の上をまたがせたりして、


指を入れ替える必要があるため、(親指→薬指や小指等)


そのとき、どうしても、手や肘がグラグラしてしまうのです。


しかし、これは間違った方法です。



手や肘がぐらついてしまっては、当然、打鍵が安定しませんから、


音の粒をそろえるのが難しくなってきます。


それを補うために、上半身まで使って、波打つようにして、、、、、、


さらなる悪循環を生んでいます。


つまり、指が安定しないために、「体重の重みで」弾こうとするのです。




これでは、上手く音が響きませんし、そもそも、これは重力奏法ではありません。


ミスタッチも多くなりますし、何しろ、手に負担が大きすぎます。




重力奏法という言葉から、


よく、勘違いされている方がいらっしゃいますが、


大きな音を出す時に、重み(体重)をかける、、、わけではありません。


重力奏法は、あくまで、


身体(主に手、手首、肘、上半身)の使い方による、打鍵方法!なので、


高速パッセージだろうが、和音の連続だろうが、


ピアニッシモであろうが、フォルティッシモであろうが、


全てのシーンで、重力奏法が適用できます。


重力奏法とは、ピアノの鍵盤の「打鍵の仕方」なのです。




私が、重力奏法で弾く!ショパン、バラード1番!演奏解説で申し上げたこと、


皆さん覚えていますでしょうか。




木枯らしを弾く時の、手の形これ!(木枯らし以外の全ての曲においても、ですが。笑)


合言葉はなんでしたっけ?


そう、合言葉は、「ホロヴィッツの手」です。


なるべく、この手の形を維持したまま、弾いていきます。




重力奏法とは、主に、手や手首のバネを使った打鍵奏法です。


たった一音だけ鳴らす分には、手首の垂直方向のバネだけで十分ですが、


連続するフレーズでは、当然、鍵盤は横に広がっていますから、


横の動きにも対応しなければなりません。


その際に、


中指から小指にかけてを「外側の指」、


中指から親指にかけてを「内側の指」として、


木枯らしの6連符を見ていきます。




音階の部分を担当するのは、ほぼ外側の小指や薬指、または中指がほとんどです。


それに対して、間の音、支えになるのが親指や人差し指、つまり内側です。


教材の中でも、解説していますが、


横の動きに対しては、手首を回転させて打鍵します。




内側の音を弾いている時の手の形です。


人差し指や親指で打鍵しているときは、およそこのような形になっているはずです。


この打鍵した瞬間を軸にして、つまり支えとして、



外側に手首を回転させて、小指や薬指を打鍵していきます。


これにより、力の弱い小指や薬指でも、ハッキリとした音の粒を揃えられます。


また、内側の指で支えている分だけ、


外側の指の打鍵スピードの調節もできるので、


左手の和音や、メロディとのタイミングを合わせる時など、


少しの間、右手が「待っている」状態を作り出せます。




どんなに指の入れ替えがあったとしても、


弾きづらい個所であっても、なるべく!



この手の形を、極力崩さないで進んでいくことが重要です。


そして上半身、上体も、前かがみになったり、伸びたりと、


あまり極端に動かない方が良いです。


上体は常に安定していないと、正確な打鍵ができないからです。


鍵盤と上半身との距離を常に意識して、一定に保つのです。


前かがみになるのは、そもそも腕の可動域を狭めてしまうので、


あまりお勧めできません。




コツは、6連符をひとかたまりとして、「音をつかんでいく」ようなイメージです。


一つ一つ弾くのではなく、6個でひとかたまり、という認識です。


分散和音で、音が上下する個所では、


親指を打鍵するときに、指を入れ替える際に、


指の下をくぐらせたり、親指の上をまたいだり、などは絶対にしないように!


「そのままの(ホロヴィッツの)手の形で、平行移動!」です。




これは、木枯らしに限らず、黒鍵ですとか、Op.10-4など、


高速なパッセージを要求される曲を弾く時も、全く同じです。


この方法こそが、より安定的な打鍵に繋がっていきますので、


是非、研究してみてくださいね!





では次に、


木枯らしの曲の中身について、触れていきたいと思います。


木枯らしに限らず、ショパンのエチュードにおいて非常に特徴的なのは、


転調の多さだと思います。


どのエチュードを見てみても、高速のパッセージを要求される曲は特に、


5分以内の楽曲の中で、非常に多くの転調が見られます。




前回の記事で、和声の話にも触れているので、少しお話しますね。




主に、ショパンの転調で特徴的なのは、


モーツァルトやベートーヴェンのように、


ある程度、調性が確定してから、転調するわけではありません。


つまり、


ドミナント→トニック(調性確定)で、


初めて、「何調である!」と判断されるわけですが、


モーツァルトやベートーヴェンの場合、この後に繋ぎの和音がいくつか入って、


その後、また新たな調に移っていく、ということが多いのです。




しかし、ショパンの場合は、その調判定を待たずに、


ドミナントやトニックを、別の調の和音に読み変えて、変化していくことが大半です。


ですので、サラサラっと演奏すると、


まるで、色が虹色にグラデーションしていくように、


あれよあれよと言う間に、調がどんどん変わっていってしまいます。


部分的に取り出せば、一体何調なのか分からない個所も、


けっこう、あったりします。




つまり、ドミナント→トニックで、調の確定をしていないので、


結果的に、転調を繰り返したものの、


行きついた先の調が、主調、、、、、


つまり、その曲の主和音だったりすることもあって、、


あれ??結局、中で、色々和音は借用して変化したものの、


和声を拡大して、セクションとして捉えれば、


全く転調していなかったのね!みたなことも、よくあります。




ですので、


けっこうショパンの和声の捉え方、弾き方って難しいのです。


何気なく、出現しては、消えていってしまうからです。




しかしながら、


私は単純に、綺麗だな!っと思ったところは、


綺麗に聴かせて弾けば良いのだと思います。


綺麗な響きだな~っとあなたが思った個所は、


きっと他の人にも、それなりに綺麗に聴こえているはずです。




この木枯らしにおいて、


雲の中から悪魔がやってきそうな、


非常に冷たい風が吹きつけて、全てを呑み込んでいくような、


そういった恐ろしい風の場面もありますが、


中には、ダイヤモンドダストのように、


キラキラと、クリスタルな響きを聴かせられる部分もあるでしょう、


非常に柔らかな風の場面もありますし、


風が止んでしまう、無風の場面もありますよね?




速い曲なことには、変わりないのですが、


速く指が動いて、それで全てOK、、、ということではないのです。


一つ一つ、和音を取り出してみて、


前後の流れから、どういった音色を聴かせるべきなのか、


ということを研究していく必要があります。




また、左手の音色も、ハツラツとした和音の場合もあれば、


深みのある音だったり、レガートで非常に息の長いフレーズもありますよね。


そういったところを、いかに聴かせていくのか。




そういったところを研究していくと、


木枯らしのみならず、他のエチュード、


あるいは、エチュード以外のショパンの曲の解釈も


とても、捉えやすくなっていくはずです。


というのも、


時間があったら、エチュードを全曲聴いてみてください。


CDは誰のCDでもかまいません。




なぜかというと、


ショパンの大曲で、


あっ!この場面、何番のエチュードのあそこの部分に似ている。


など、けっこう有名な大曲との類似点を発見できるのです。


つまり、ショパンを構成する、おもにテクニック的な部分においてですが、


重要なエッセンスが、エチュードには詰まっているんですね。




もちろん、ショパンを構成する重要なエッセンスとしては、


マズルカとワルツ、ポロネーズなので、


ショパン特有の、独特なリズム的なエッセンスは、別途補う必要はありますが、


少なくとも、テクニック的な面においては、


エチュードを弾く意味というのは、非常に大きい!


と、私は思います。


↓次の解説はこちら!


ショパンのエチュードを弾く時の注意点!vol.2


ぜひ、参考に研究してみてください!




お楽しみに!!