半導体工場で設備周りを担当していた時、よく現場のマシンオペレーターや保全係にアンケート調査をしていました。
「現場で設備周りのトラブルで困っていることはありませんか?」
こんな質問です。
設備ごとに担当者の回答を書いてもらいました。
その回答に全て目を通し、実際に対策、改善を行うかどうか検討していました。
せっかく現場の声を聞いたんだから、採用して対策しなくては、そう思うエンジニアは多いと思います。
現場の声を聞いておきながら、何もしなかったら次から回答してくれないだろう、信用問題だと思うこともあるはずです。
ただ、私の経験上、この手のアンケートには要注意です。
その理由は次の2つです。
①質問されたら何か答えないと、日頃何も考えていないと思われるから、無理にでも答える。
②トラブルの頻度、重大性、被害額(コスト試算)などが数値化されておらず、主観で回答していることが多い。
「この設備に何か問題ありませんか?」
と質問されて、
「さぁ・・別にないと思うけど。」
とは、答えにくいものです。
本当は何も困っていなくても、何か言わないと問題意識のないやつだと思われそうで、つい無理やり答えてしまうことがあります。
そこで、
「たまに原因不明で停止することがあってね。復旧するのに時間と手間がかかって結構困ってる。」
こんな回答が返ってきます。
でも、この手の回答が一番困るのです。
●「たまに」とは、具体的にどのくらいの頻度か?
●「原因不明」とあるが、どこまで調べて原因不明なのか?
●「復旧までの時間」は具体的にどのくらいか?
●「手間がかかる」とは、具体的にどんな手間がどのくらいかかるのか?
●「結構困っている」とは、どの程度困っているのか。緊急度、重大度は?
こうしたことが分からないと、対応するかどうかの判断ができません。
少なくとも改善の優先順位はつけられません。
そもそも、質問されるまで何も話が出て来なかったトラブルなら、大した問題ではないのではないか。
そんな疑問も頭に浮かびます。
従って、アンケート結果を見て1件1件、再調査を行います。
むろん、それも仕事の内なので当たり前なのです。
現場の声を聞くことはとても大事なことですが、その声の実体、真相はしっかり究明してから対策を考える必要があります。
全然大したトラブルでもないことを、さも重大トラブルのように言う場合もあります。
かと思えばその逆に、もっと早く教えて欲しかった重大トラブルが隠れている場合もあります。
現場の声は貴重ですが、それはほんの入り口であり、そこから深堀するのが現場の改善担当の仕事です。