[東京 15日 ロイター] 12月日銀短観での輸出産業の業況悪化は、落ち込みの程度や広がりからみて一時的な景気足踏みとみられるが、設備投資の下方修正に懸念が広がっている。

事業の抜本見直しの可能性や、投資空洞化の国内雇用、消費への波及、潜在成長力低下による政府債務への負担などを懸念し、専門家からは、より強力な円高対策や成長戦略の推進を求める声もでている。

<リーマン後より悪化は軽微、踊り場後は再浮揚へ>

12月短観では、外部環境の悪化が重なり、企業マインドは輸出産業を中心に製造業で落ち込む一方で、復興関連需要に支えられて内需が底堅いことが示され、景気腰折れは回避されるとの見方が広がっている。

リーマンショック後と比べても落ち込みの程度は「水準、業種の広がりが相対的にマイルド」(RBS証券チーフエコノミスト・西岡純子氏)とみられている。企業を取り巻く金融環境が安定しているおり、資金繰り判断の水準は「楽である」が「苦しい」を大きく上回っている状態が続いている。

こうした点からみて、「国内景気は輸出・生産を中心に「踊り場」的な状況に移行しつつあるとみているが、景気の腰折れは回避されるだろう」(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト・上野泰也氏)との見方が大勢だ。

<設備投資先送りは重要なポイント>

懸念すべき点は、事業計画が大きく下方修正された点だ。下期の経常利益計画は大企業、中小企業を問わず、製造業、非製造業を問わず下方修正された上、設備投資計画も先送りし始めたことが明らかとなった。このため「従来よりも日本経済の下ぶれリスクにより注意すべき局面に至った」(野村証券経済研究所)との見方が増えてきた。

中でも深刻なのは、設備投資の先送りだ。12月に公表された2つの統計、日銀短観と法人企業景気予測調査のどちらも、全企業の今年度設備投資計画は前年度から伸び率がほぼゼロに下方修正された。

この時期の下方修正はよくみられるものの、これほどの大幅な下ぶれとなったのは「企業が事業を抜本的に見直した可能性がある」(シティグループ証券エコノミストの村嶋帰一氏)と見られている。

設備投資は外需と内需をつなぐ橋渡し的な役割もあるため、「早くも大企業・製造業が曲がり角をみせていることは、国内の労働需要を抑制させ、いずれ個人消費にも下押し圧力を生じさせる」(第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏)ほか、「資本ストックの減少、ひいては潜在成長率の低下に繋がり、政府債務の将来負担が一段と重くなることを示唆する」(JPモルガン証券チーフエコノミスト・菅野雅明氏)と深刻な影響が懸念される。

<景気押し上げ型の円高対策が必要に>

企業は、需要のある場所での生産・開発を進める観点から海外設備投資を加速させているが、海外展開とともに国内投資を増やす企業がほとんどだ。国際協力銀行の調査でも、海外事業を強化・拡大すると回答した企業の9割が国内事業も維持・拡大すると回答している。海外投資が回復するにつれ国内設備投資も底堅さを取り戻すとの見方もある。

しかし一方で、大企業の投資慎重化の動きが早いことからみて、長引く円高による国内空洞化懸念も強まっており、長期的に国内設備投資は低水準で推移する可能性も出てきた。

ロイター12月企業調査では、安定を望むドル円相場について1ドル85円程度、ないしそれより円安との回答が7割近くを占めており、日銀短観で企業が前提とする70円台後半での円相場では空洞化を止めることはできそうにない。

次回の3月日銀短観では12年度事業計画も公表されるが、景況感がさらに悪化するようなら「野田内閣は必要な対応策の順序付けが必要。デフレ脱却やそれによる成長促進策を講じることが重要だ」(農林中金総合研究所・主任研究員・南武志氏)との指摘も浮上している。

さらにこれまでのような円高に歯止めをかけるという程度ではなく「経済政策の発想をより押し上げ型にシフトさせていかざるを得ない」(熊野氏)との意見も出てきた。

(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)





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