食品偽装で廃業に追い込まれた食品会社は少なくないが、廃業に追い込まれた放送局は一社も無い。
ワイドショーの関心事が「スターのスキャンダル」から遠ざかって久しい。この1年を見てもその主役は芸能人から政治家、関取、ボクサーへと変遷した。そして11月は国家公務員、それもキャリアトップが夫婦で主役の座に就いた。前防衛事務次官、守屋武昌容疑者とその妻が収賄容疑で逮捕された。収賄の中身はゴルフ接待費など。かつて「防衛庁を一流にする」と口にしていた男のモラルは三流以下だった。(戸津井康之)
「業界からのゴルフの誘いを全部受けていたら、一年が365日じゃ足らないよ」。守屋夫婦のセリフではない。在京キー局の元プロデューサーが、ある大学生に語った言葉だ。
この大学生は首都圏の私立大学の放送メディア研究会に所属。「放送の現状を教えてもらおうと、取材で訪ねたらいきなりこんな言葉を聞かされました。これでいいのでしょうか」と憤り、新聞社の文化部へ連絡してきたのだ。
「これでいいわけがない」。この元テレビマンがいた放送局のワイドショーは他局より率先し、積極的に守屋夫婦のゴルフ接待問題を取り上げ、批判しているだけに何とも皮肉だ。
市民は辟易している。ロッキード、グラマン事件から、今回の事件の渦中にいる国家公務員や商社マンはいったい何を学習したのだろうか。証人喚問で署名する指先がぶるぶると震えていた当時の証人のおびえた姿と比べ、守屋容疑者は堂々と答弁していた。
そのギャップにモラルの低下を感じずにはいられない。まるで「国家公務員だからといって何でゴルフ接待を受けてはいけないの?」と開き直っているかのようにも見える。ここには、冒頭で紹介した元テレビマンを例にみるように民間企業の日常に蔓延(まんえん)し染みついてしまった緩い道徳観が起因してはいないか?
厳密に言えば民放局は完全な民間企業ではない。許認可事業として国から放送する資格を得た特別な企業体である。在京キー局は5局しかなく、誰もが自由に参入できない特権で守られ、スポンサーらからの出資金を独占してきた。企業がテレビ局に支払う宣伝・制作費は、消費者がこの企業の商品を買う際に支払う代金に含まれている。
極論すると、元プロデューサーのゴルフ代としてスポンサーが支払ったお金は回り回って視聴者が負担しているという事実に、放送局自体が思い至っていない。この局は最近、番組中の不祥事が相次いでいる。不祥事の続発は無縁ではないだろう。
一部の官僚が賄賂をたかり続けていても国家は倒産しない。だから、守屋被告のような汚職官僚は消えない。
ゴルフ接待を自慢する元プロデューサーに失望した大学生はあきらめたようにこう嘆いた。「過去を振り返ってみて、賞味期限切れの材料を使って廃業に追い込まれた食品会社は少なくないが、放送に関する不祥事で、倒産したり、廃業に追い込まれた放送局は一社もないのですね…」。危機感のない組織はモラルも失墜する。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/071220/tnr0712200822004-n2.htm
元プロデューサーが居た民放キー局って、TBSか?
ワイドショーは制作しませんとか言っておきながら、いつのまにか復活。
あんなテレビ局に放送免許与えてはいけないだろ。