第90議会議決後に於ける帝国憲法改正案枢密院審査委員会記録 1946年10月19日

<標準画像 004/18>
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/04/129_1/129_1_004r.html
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 (2)公務員の選挙に関し成年者による普通選挙の保障の
   規定の挿入(第十五條第二項)

 (3)法律案の審議についての両院協議会に関する規定の挿
   入(第五十九條第三項)
   
 (4)「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければなら
    ない」との規定の挿入(第六十六條第二項)

(四)貴族院修正可決後、直ちに衆議院に再び囘付され、
   十月七日の本会議に於て、殆んど全員一致を以ってこれを可
   決、ここに憲法改正案は確定を見た。

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金森国務大臣 議会の修正は議会の行ったことで政府としてはその
   意図は、かくあるべしと諒解されるもの、及び修正の結果の解釈はか
   くあるべしと考えるものについてお話することができるのである。
   衆議院の修正により若干の増補修削除が行われたが衆議院
   の修正は二ツの考へ方から行われた様に思はれる。

 一.改正案は国民の現在の感覚のより行き過ぎている。従って少しでも
    後戻りをさせたいと云う考へ方。それは所謂保守?営の考へである。

 二、現在の国民の意?にまでまだ到達していまい。社会的規定に於て然
   りと云ふ考へ方。それは社会党を忠臣とする陣営の考へである。
   共産党は、天皇制に対し根本的見解を持ち他の規定は論議する
   考えはない、という態度であった。
   これらの原因から修正案が形成されて行った。
   その他、必ずしも衆議院の意思によらないもの謂わば外来のも
   のもあった。これについてはやむにやまれぬ事情と考へ内密的な

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   これらの原因から修正案が形成されて行った。
   その他、必ずしも衆議院の意思によらないもの謂わば外来のものもあった。
   これについてはやむにやまれぬ事情と考へ内密的な方法により
   小委員会を通じて議会の修正として取り扱った。

標準画像 005/18 より補足)

 
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「日本国憲法制定に至るまで」 (衆議院憲法調査会事務局)

4 憲法議会の審議
 6.21  ・衆議院本会議、吉田首相、施政方針演説(憲法改正問題に言及 質疑3日間)
       ・マ元帥、帝国議会における憲法改正案の審議に関する声明を発表
       (議会における討議の3原則 各条文の審議に十分な時間と機会が与えられるべきこと、
       大日本帝国憲法との法的持続性の保障、国民の自由意志の表明に基づく憲法の採択)

 6.25  ・衆議院本会議(第5号)
       帝国憲法改正案の議事を延期せられたいとの動議(志賀義雄君発議)否決、
       帝国憲法改正案は3読会の順序を経て議決したいとの件(議長発議)可決
      ・衆議院帝国憲法改正案第1読会、帝国憲法改正案趣旨弁明(質疑4日間)
      ・衆議院事務局調査課、「英米両国の統治機構」、「米国憲法」、「現下の食糧問題」、
       「各種民間憲法改正草案集」の各パンフレットを議員に配付

 6.26  ・衆議院本会議(第6号)
       ・衆議院帝国憲法改正案第1読会、吉田首相、戦争放棄について
       自衛のための戦争も交戦権も放棄したものであると言明

 6.27  ・衆議院本会議(第7号)
       ・衆議院各派交渉会、議院法規調査委員会設置を協議決定

 6.28  ・衆議院本会議(第8号)
       ・衆議院憲法改正案委員会(第1回)
       ・衆議院、帝国憲法改正案を帝国憲法改正案委員(72名)に付託
       (自由22、進歩15、社会15、協民7、新光ク5、無倶5、民主2、共産1)

 6.29  ・衆議院、帝国憲法改正案委員長に芦田均(自由)を選任
       ・日本共産党、人民憲法草案を発表

 7. 1  ・衆議院憲法改正案委(第2回)、帝国憲法改正案趣旨説明
       (7.9まで総括質疑、7.11から7.22まで逐条審査)

 7. 2  ・衆議院憲法改正案委員会(第3回)
       ・極東委員会、「日本の新憲法についての基本原則」を採択
      (国民主権の徹底、天皇の権能排除、立法府の強化、文民統制、枢密院・貴族院の廃止など)

 7. 3  ・衆議院憲法改正案委員会(第4回)
       ・内閣に臨時法制調査会設置

 7. 4  ・衆議院憲法改正案委員会(第5回)
       ・衆議院、議院法規調査委員を選任(樋貝議長外21名)

 7. 5  ・衆議院憲法改正案委員会(第6回)
 7. 6  ・衆議院憲法改正案委員会(第7回)
 7. 8  ・衆議院憲法改正案委員会(第8回)
 7. 9  ・衆議院憲法改正案委員会(第9回)
 7.10  ・ケーディスGHQ民政局次長、入江俊郎・内閣法制局長官らと会談
       (7.15佐藤達夫・内閣法制局次長らと、7.17及び7.23金森国務大臣らと会談)

 7.11  ・衆議院憲法改正案委(第10回)、逐条審議に入り、前文に対する質疑を終了
 7.12  ・衆議院憲法改正案委(第11回)、第1条~第5条までの質疑を終了
 7.13  ・衆議院憲法改正案委(第12回)、第6条~第8条までの質疑を終了、第9条質疑に入る
 7.15  ・衆議院憲法改正案委(第13回)、第9条~第11条までの質疑を終了
 7.16  ・衆議院憲法改正案委(第14回)、第12条~第21条までの質疑を終了
 7.17  ・衆議院憲法改正案委(第15回)、第22条及び第23条の質疑を終了、第24条質疑に入る
       ・金森国務大臣、GHQとの会談で「国体」に関する6原則を提示

 7.18  ・衆議院憲法改正案委(第16回)、第24条~第29条までの質疑を終了、第30条質疑に入る
 7.19  ・衆議院憲法改正案委(第17回)、第30条~第38条までの質疑を終了
 7.20  ・衆議院憲法改正案委(第18回)、第39条~第73条までの質疑を終了
 7.22  ・衆議院憲法改正案委(第19回)、第74条~第97条までの質疑を終了

 7.23  ・衆議院憲法改正案委(第20回)、逐条審議を終了し、
       修正案等について協議のため小委員(14名、小委員長:芦田均)選任
       ・貴族院事務局調査部、「憲法改正に関する緒論輯録」を議員に配付

 7.25  ・衆議院憲法改正案小委(第1回)、日本自由党、日本社会党、新政会から修正案を説明
 7.26  ・衆議院憲法改正案小委(第2回)、修正案に対する各派の意見を聴取
       ・ケーディスGHQ民政局次長、終連局を通じて憲法改正案の修正要求を連絡

 7.27  ・衆議院憲法改正案小委(第3回)、前文の字句修正について大体の意見の一致を見、
       次いで第1章及び第2章について協議

 7.29  ・衆議院憲法改正案小委(第4回)、第2章の字句修正について大体の意見の一致を見、
       第3章第23条までについて協議
       ・ケーディス民政局次長、入江法制局長官らに憲法改正案の修正要求を説明

 7.30  ・衆議院憲法改正案小委(第5回)、第24条から第27条までについて協議
       (納税の義務に関する条文の挿入について、意見の一致を見る)

 7.31  ・衆議院憲法改正案小委(第6回)、第28条から第100条までについて協議し、
       修正に関する意見交換を終了

 8. 1  ・衆議院憲法改正案小委(第7回)、
       前文、第1条、第27条及び第84条の修正に関しては保留し、
       その他に関して大体意見の一致を見る
       (8月中旬、芦田委員長からケーディス民政局次長に第9条の修正について説明、了承得る)

 8. 2  ・衆議院憲法改正案小委(第8回)、
       第1条、第27条、第75条、第84条、第94条及び前文に関する修正について協議

 8. 5  ・ケーディス民政局次長、終連局に皇室財産部分に関する修正を伝達
       (本件について、民政局と入江法制局長官(8.6)、佐藤法制局次長(8.15)が会談)

 8. 8  ・衆議院憲法改正案小委(第9回)、
       第3条、第4条、第5条、第6条、第7条、第51条及び第77条の修正について協議

 8. 9  ・衆議院議院法規調査委員会、新憲法に基づき国会法に規定すべき事項の検討開始
 8.10  ・衆議院憲法改正案小委(第10回)、附帯決議案文について協議
       ・内閣に教育刷新委員会設置(委員長:安倍能成)

 8.13  ・衆議院憲法改正案小委(第11回)、附帯決議案文について意見の一致を見る
 8.16  ・衆議院憲法改正案小委(第12回)、附帯決議及び第84条について意見の一致を見る
 8.17  ・衆議院憲法改正案小委、樋貝議長ら日本自由党所属の一部議員による
       皇室財産に関する規定の再修正申立てが原因で流会

 8.19  ・衆議院憲法改正案小委、自由党議員の行動を非難する非公式声明を発表
 8.20  ・衆議院憲法改正案小委(第13回)、第63条及び第64条の修正について意見の一致を見る
 8.21  ・衆議院憲法改正案委(第21回)、帝国憲法改正案を附帯決議を付して修正議決
       ・社会党、帝国憲法改正案に対する修正案(原彪之助君外3名発議)を提出
       ・政府、新憲法附属法律案16件の要綱を発表

 8.23  ・衆議院議長樋貝詮三辞任、後任山崎猛任命
 8.24  ・衆議院本会議(第35回)
       ・衆議院帝国憲法改正案第1読会、委員長報告、質疑(尾崎行雄君)
       ・衆議院帝国憲法改正案第2読会、修正案(原彪之助君外3名提出)趣旨弁明・討論の後、
       否決し、次いで、委員長報告について討論の後、
       2/3以上の多数をもって委員長報告のとおり修正議決
       ・衆議院帝国憲法改正案第3読会、2/3以上の多数をもって第2読会の議決のとおり議決
       (賛成421:反対8)、吉田首相、政府の所信を表明

 8.26  ・貴族院帝国憲法改正案第1読会、帝国憲法改正案趣旨弁明(質疑5日間)
 8.30  ・貴族院、帝国憲法改正案特別委員(45名)選定
       (同日、委員長:安倍能成、副委員長:橋本實斐を互選)

 8.31  ・貴族院憲法改正案特委、委員会の運営方法について協議
 9. 2  ・貴族院憲法改正案特委、帝国憲法改正案趣旨説明、質疑(9.26まで)
 9.27  ・貴族院憲法改正案特委、修正方について懇談会
 9.28  ・貴族院憲法改正案特委、修正案等について協議のため小委員
       (15名、小委員長:橋本實斐)選任
       ・貴族院憲法改正案特委小委、修正審議を開始(10.2まで)

10. 3  ・貴族院憲法改正案特委、帝国憲法改正案修正議決
10. 5  ・貴族院帝国憲法改正案第1読会、委員長報告、質疑、討論(10.6まで 引続き第2読会)
10. 6  ・貴族院帝国憲法改正案第3読会、帝国憲法改正案修正議決
10. 7  ・衆議院本会議(第54号) (第54号追録)
       ・衆議院、帝国憲法改正案を2/3以上の多数をもって貴族院の修正に同意

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十月七日の本会議

○議長(山崎猛君〕 五名ヲ除キ、其ノ他ノ諸君ハ全員起立、仍テ三分ノ二以上ノ多数ヲ以テ貴族院ノ修正ニ同意スルニ決シマシタ(拍手)之ヲ以テ帝国憲法改正案ハ確定致シマシタ(拍手)
○議長(山崎猛君) 此ノ際内閣総理大臣ヨリ発言ヲ求メラレテ居リマス――吉田内閣総理大臣
  〔国務大臣吉田茂君登壇〕
○国務大臣(吉田茂君) 只今貴族院ノ修正ニ対シ本院ノ可決ヲ得、帝国憲法改正案ハココニ確定ヲ見ルニ至リマシタ(拍手)此ノ機会ニ政府ヲ代表致シマシテ、一言御挨拶ヲ申シタイト思ヒマス、本案ハ三箇月有余ニ亙リ、衆議院及ビ貴族院ノ熱心慎重ナル審議ヲ経マシテ、適切ナル修正ヲモ加ヘラレ、ココニ新日本建設ノ礎タルベキ憲法改正案ノ確定ヲ見ルニ至リマシタコトハ、国民諸君ト共ニ洵ニ欣ビニ堪ヘナイ所デアリマス(拍手)
 惟フニ新日本建設ノ大目的ヲ達成シ、此ノ憲法ノ理想トスル所ヲ実現致シマスルコトハ、今後国民ヲ挙ゲテノ絶大ナル努力ニ俟タナケレバナラナイノデアリマス、政府ハ真ニ国民諸君ト一体トナリ、此ノ大目的ノ達成ニ邁進致ス覚悟デゴザイマス、ココニ諸君ノ多日ニ亙ル御心労ニ対シ感謝ノ意ヲ表明致シマスルト共ニ、所懐ヲ述ベテ御挨拶ト致シマス(拍手)